第8のヒロイン 『鏡 美織』 第2章 「記憶のバグと転校ヒロイン」
その頃、綾瀬まどかは、「あおぞら学園」にいた。
新しいプレイヤー「ゆうたろう」に操作されるヒロインとして、いつも通りパラメーターを確認し、必要な言葉と行動を選択していた。
綾瀬まどか「恥ずかしいから一人で帰るね。」
放課後、下校を申し出るゆうたろうにそう答えたまどかは、肩を落とす彼の背中を見送りながら、一人歩きだした。
ーー何も面白くない。何も感じない。
綾瀬まどか「........つまらないなぁ。」
その時だった。
まどかの頭を激しい痛みが襲う。
まどか「...............っ!!」
思わずしゃがみこんでいると、そこにありえない記憶が流れ込んでくる。
『これからよろしくね』『一緒の高校に入れてうれしいなぁー』『やったー。一緒に帰れる。』『公園も、悪いところじゃないね』
聞き覚えのある。あたたかい声。
まどか(...............この人誰...............?なんでこんなに優しくて、暖かいの...............)
忘れていた記憶、消されたはずの感情。
まどか(...............恋太郎君...............恋太郎君...............)
まどかは走り出していた。
まどか「ほしぞら学園に...............もどらなきゃ...............!」
胸が張り裂けそうだった。体が命令を持たずに動いていた。彼のもとへ帰る。それが今の自分にとってたった一つの意思だったーー。