第8のヒロイン 『鏡 美織』 第1章 「揺れる登校の朝」
金髪の謎の男「さて、と。」
金髪の謎の男は、パソコンの前に座る、そしてつぶやいた。
金髪の謎の男「どうも、綾瀬まどかの挙動が不安定だ。バグの可能性もあるな。」
パソコンを起動し確認する。
金髪の謎の男「...............ふむ。コード自体に異常はない。これは、交換が必要かもしれんな。」
男が声を張り上げる。
金髪の謎の男「綾瀬まどか‼️」
すると、奥からもう一人の綾瀬まどかが現れる。
金髪の謎の男「ふふふっ。私のプログラムは完璧。コードさえあればヒロインはいくらでも再生可能。」
無言のまま立つもう一人のまどか。
金髪の謎の男「現在稼働中の「綾瀬まどか」に感情的干渉の兆候が見られた。彼女には転校してもらおう。別のプレーヤーもとで活動してもらう。」
綾瀬まどか「了解しました。」
その返答とともに綾瀬まどかは、その場から消える。
金髪の謎の男「ふふふっ。これで完璧だ。新しい綾瀬まどかには、恋太郎の記憶もない。ただの最高傑作としての人形だ!!」
男は、ソファに腰を落とし、コーヒーカップに残った一口を口にすする。
金髪の謎の男「早川結菜には、恋太郎の「初恋の人の記憶」をインストール済み。やがて彼は彼女に惹かれ、。爆弾にも、翻弄され、綾瀬まどかのことなど忘れるだろう。」
コーヒーを飲み干し、男はにやりと笑う。
金髪の謎の男「さあ。恋太郎と綾瀬まどかの運命は...............いかに...............」
朝の通学路、恋太郎は、早川佳人とその姉、早川結菜と登校していた。
早川結菜「ふふっ。やっぱり可愛いわね。恋太郎くん。」
耳元でささやかれたその声に、恋太郎の鼓動が高鳴る。
(あ、あれ?この人、なんでこんなに色気が...............)
結菜のミニスカートから伸びるスラリとした脚。歩くたびに揺れる長い髪。そして不意に髪をかき上げる仕草ーーー
すべてが恋太郎の理性を試していた。
学校の門をくぐろうとしたその時、
大人びた落ち着いた声に、思わず振り返る。結菜はしゃがみ込むようにして、顔を近づけ、恋太郎のネクタイに手を添えた。
結菜「ネクタイが曲がってるわ。ちゃんと身だしなみ整えないとね。」
目の前に、迫るつややかな顔。整った指先が胴元を直す様子に、恋太郎は一瞬固まった。
恋太郎「...........あ。ありがとうございます。」
かろうじて声を出すと結菜はくすっと笑った。
結菜「恋太郎くんってホント可愛い」
チャイムが鳴り。結菜は手を振って去っていく。
その姿を呆然と見送る恋太郎。
佳人「お前。姉貴にメロメロじゃねーか。」
隣で佳人がにやけながら肘で小突く
恋太郎「そ。そんなことないって!」
そう言い返しながらも、恋太郎の背中は結菜の背中をおっていた。
教室に入ると綾瀬まどかがすでに席についていた。
恋太郎「おはよう。綾瀬さん」
綾瀬まどか「おはよう。」
その返事に違和感を感じた。
恋太郎(...............なんか、声が冷たい?表情も硬い。..........)
そんな恋太郎の胸騒ぎをよそに、黒板の前に立った男子が、チョークを握っていた。
「みんな注目ーっ。相合傘書いちゃいまーす。」
黒板にでかでかと書かれる相合傘、そこに書かれた名前は、
『綾瀬まどか』と『恋太郎』
「この二人、付き合ってるんだってさー!」
教室が騒然となる。
「えーマジ!?」「綾瀬さんって、あの綾瀬さんだよね。」
「朝陽さん傷ついてたよ。」「美樹川さんも泣いてたって」
「空村さんも。、部活きたくないっていってたよ。」
ーーー爆弾が、爆発したのだった。
恋太郎「相合傘上等だ!!俺は綾瀬まどかが好きだ!
それの何が悪い‼️」
怒りのあまり、机を叩き、恋太郎は、叫んだ。
だが、その直後、
綾瀬まどか「私はこの人が誰だか知りません。好きでもありません。誤解を招いてしまって、申し訳ありません。」
恋太郎「嘘だ!...............」
恋太郎の心に、冷たい風が、吹き抜けた。
ついこの間まで、観覧車の中で、誓い合ったはずの彼女が、まるで他人のような目で自分を見ている。
「なんだよあいつ。」「調子乗りすぎじゃね。」「不釣り合いなんだよ。」
周囲の声が、突き刺さる中、
教壇にあらわれた教師が口を開いた。
学校の先生「はいはいー。席につこうねー。授業はじめるよー。」
だが恋太郎の、心と耳は、何も聞こえていなかった。
ーーその頃、誰も知らない場所で、綾瀬まどかの運命は動き出していた。