第7のヒロイン 『早川結菜』
恋太郎「昨日は、早川佳人とかいうやつのせいで、急に遊園地に、行くことになったけど楽しかったなぁ。」
観覧車で二人きりになったあの時間を思い出す。だがその胸には複雑な思いも残っていた。
「ケシキガキレイネ・・・」「ネエ・・キスシマショウ」
まどかの言葉を思い出す度、恋太郎の胸はざわめいた。
恋太郎「あの時の綾瀬さん。何かが、おかしかった。まるで心がない人形みたいだった。」
だがその後に交わした。あの誓いは忘れられない。
「2人でこのゲームを変えよう!!」
恋太郎は静かに拳を握った。
恋太郎「入学式の頃の綾瀬さんは、まだ誰かに操られているようだった。ぎこちなかった・・まるで、誰かに突き動かされてるような。でも公園で一緒にいたときから何かが変わった..........」
そして、改めて自分の気持ちを確認する。
恋太郎「僕は、綾瀬まどかが好きだ。ゲームに入る前から変わらない。この気持ちは、本物だ!!僕はゲームを攻略するためじゃない!!綾瀬まどか...............君への想いで、本当に恋愛を学びたいんだ!」
その時、机の上のスマホが話し出した。
AIまどか「今週の予定と、土日の予定を入力してください。」
恋太郎「そうか。今日は月曜日か...............」
恋太郎「サッカー部と土曜日はまた綾瀬まどかとデート。」またもまどか一択。だが、AIまどかが警告を発する。
AIまどか「朝陽さんと、美樹川さんに爆弾が灯っていますよ。よろしいですか?」
恋太郎「何度も言ってるだろ。爆弾なんか関係ない。僕は綾瀬まどかが好き、それだけさ。」
AIまどか「部活での疲労数値が上がってます。」
恋太郎「綾瀬さんの笑顔が見れれば、疲労なんて吹き飛ぶさ。とにかく、よろしく。」
AIまどか「了解しました。」
AIまどかは、淡々とスケジュールを更新した。
恋太郎「よし、明日から部活がんばるかー。」
そういいながら恋太郎は、ふとまどかの部屋を見つめた。
恋太郎「綾瀬..........さん...............」
カーテン越しに差し込む柔らかな光、まどかの部屋はアイボリーホワイトの壁紙に、水色のパステルソファ。小さな白いベッドには可愛いクマとウサギの人形が乗っている。
まどかはベッドに横たわり。傍らのクマの人形を手に取った、脳裏に浮かぶのは金髪の謎の男の声...............
金髪の謎の男「この世界は恋愛というの名のプログラムに過ぎない。君は私の設計通りに動いてくれればいい。」
綾瀬まどか(...............今までは、そうだった、相手のパラメーターを見て、好感度が上がることだけに集中してた。...............でも、誰も私の条件に届かなかった。だからほかのヒロインに取られるのを見ているしかなかった。)
まどかはベッドに座り。ぬいぐるみを優しく撫でた。
綾瀬まどか(気になってた人もいた・・・でも届かないパラメーターがいつも邪魔をした。)
そのたびにあらわれた、あの男のあの冷たい笑顔。
綾瀬まどか(でも、恋太郎くんは違う...............なんか...............あたたかくて...............心地よくて...............)
恋太郎「戻ってこいっ!!綾瀬まどかー!!」
あの観覧車での、あの叫びが、まどかの心に灯をともした。
綾瀬まどか(これが...............アイなの...............この温かい気持ち...............もっと知っていきたい...............)
まどかは、窓際に寄りかかった
綾瀬まどか(明日から学校だね。恋太郎くん・・・)
その思いは、遂にプログラムすら凌駕しようとしていた。
翌朝、制服に着替えたまどかは、
隣の家を見つめて立っていた
まどか(恋太郎君と一緒に登校したいな...............)
玄関前へ移動し、チャイムに手を伸ばすしかしーー
綾瀬まどか(........昨日の今日だし、恋太郎君も驚くだろうなぁ...............)
指先が止まり、そのまま手を下ろす。
綾瀬まどか(今日は、1人で行こう。)
そう決めて歩き出す。
だがその時ーー
「ピンポーン。」
後ろから聞こえたチャイムの音に、まどかは振り返った。
そこには早川佳人と見知らぬ女性がいた。
まどか(...............あの人は...............)
まどかは電柱の影に身を隠す。
早川佳人「おい。恋太郎。一緒に、登校しようぜ‼️」
恋太郎が、玄関から現れ、狐につままれた表情をしている。
綾瀬まどか(...............あの娘、早川佳人くんの...............妹よね...............でも..............)
本来なら妹なはず、しかし、早川佳人はとんでもないことを口にした。
早川佳人「今日は、うちのお姉さんが恋太郎と一緒に登校したいっていってさ。連れてきたんだ。」
早川結菜「はじめまして。恋太郎くん。姉の早川結菜です。弟がいつもお世話になっています。」
ロングヘアー、柔らかな色気、包容力のある声、恋太郎は思わず息をのんだ。
恋太郎(...............日向...............ちゃん...............)
どこか面影のある彼女に記憶が重なる。
早川佳人「どうかしたか?恋太郎?」
恋太郎「えっ...............あ、ああ、なんでもない。僕は恋太郎
よろしくお願いします。」
早川佳人「姉貴は、僕らの1個上で今高校2年生だ。」
(1年違いなのに...............この落ち着き...............この色気)
早川結菜「これからよろしくね。恋太郎君。さぁ。学校行きましょ。」
恋太郎に顔を近づけ、ウィンクし、恋太郎の手を引く結菜。
早川「待ってよー。姉貴ー。」
佳人の声が後ろから響く中、結菜に導かれ、恋太郎はその魅力に引き込まれていったーー
綾瀬まどか(おかしい.............本来なら、あのヒロインは、早川佳人の「妹」として登場するはずなのになぜ「姉」として現れたの?)
電柱にもたれかかり、思考を巡らす綾瀬まどかの前に、突然現れた男がいた。
「よぉ。綾瀬まどか。」
綾瀬まどか「あなたは・・・。」
その金色の髪.............異彩を放つその男雰囲気ーーー
金髪の謎の男「驚いたようだな。」
このAIまどか、そして、ゲームの開発者ーーその正体を知るもの。
綾瀬まどか「早川結菜さんは、本来「妹」の設定だった。..........あなた、何をしたの?」
金髪の謎の男「君はこのゲームの「最難関ヒロイン」なのだよ。それなのに、序盤でときめいて、陥落寸前...............開発者として、黙って見ていられるわけないだろ。」
言葉を失うまどか。
金髪の謎の男「君の武器は優しさだ。そして、愛之助の部屋で彼の保育園時代の写真を見させてもらった。恋太郎は1人の女性をいつもおいかけていた
君も聞いただろーー公園で語った初恋の話を」
綾瀬まどか(...............日向...............ちゃん...............)
金髪の謎の男「そうだ。彼は、包容力のある女性に弱い。だから、設定を変えた。プログラムを変えさせてもらった。
「優しさ」に勝る「包容力」を持つヒロインをぶつけてやったのさ。」
綾瀬まどかの胸が怒りで煮えくり返る。
綾瀬まどか「あなたは、いつもそうやってわたしたちを弄んで...........恋愛を感情をおもちゃにして...............」
金髪の謎の男「君はただのプログラムだ。僕の作った。僕の掌の上で踊る存在にすぎない。」
綾瀬まどか「...........私は、もう違う。恋太郎君に対する思いは、プログラムなんかじゃない。」
まどかは、強いまなざしで、男を睨みつけた。
綾瀬まどか「私は、あなたの作品じゃない。恋太郎君と一緒に、あなたを超える存在になってみせる!!」
男は静かに返す。
金髪の謎の男「せいぜいがんばりたまえ。次に登場するのは、あのファンクラブまで存在する「学園のの絶対的美少女ーーだ...............君も覚悟しておくんだな。」
そう言い残し、金髪の謎の男は、その場を去っていった。
(あの娘が……恋太郎に……?)
胸の奥に焦燥感を抱えながら、綾瀬まどかは学校へ向かって駆け出した——。
金髪の謎の男「...............ほかの一手もうっておこう。」金髪の謎の男は、にやりと笑った。