第4のヒロイン 『朝陽夕菜』
恋太郎は、綾瀬まどかに自然と手を引かれていた。
しかし、状況が理解できず、思わず手を振りほどく。
綾瀬まどか「どうしたの?恋太郎君?いきなりでびっくりするじゃない?」
ーーそこは、校門前。
看板には、「ほしぞら学園高等学校入学式」と書いてある。
恋太郎(ほしぞら学園........しかもひらがな.........どういうことだ.........)
恋太郎「ごめん。ちょっと戸惑っちゃってさ...............あはは...............」
恋太郎はごまかすように笑った。
綾瀬まどか「恋太郎くん、一生懸命勉強してたもんね。この高校入るために・・・」
恋太郎(え!この平仮名の高校に!?しかも一生懸命!!)
内心混乱しながらも、恋太郎は自然と口をついた。
恋太郎「うん。頑張ったよ。君と同じ高校に入りたかったから。」
その言葉に綾瀬まどかパッと目を見開き、ほほを赤く染めた。
綾瀬まどか(そんなこと言ってくれる人初めて...............)
心ののプログラムが一瞬きしむ。
綾瀬まどか「......なんでもない。もうすぐ入学式が始まるわ。いきましょ。恋太郎くん。」
恋太郎「うん。」
ふたりは並んで、体育館へと歩きだした。
校長先生の長い話が終わり、それぞれのクラスにわかれる。
綾瀬まどか「一緒のクラスになったわね。」
恋太郎「これからもよろしくね。」
恋太郎は、素直に手を出す。
綾瀬まどか(...............え?)
驚きながらもその手を取った。
その手のひらから伝わるぬくもりにーー
綾瀬まどかの心はまた揺れる。
綾瀬まどか(私に触れてくるなんて..........初めてこんな感覚............)
顔が熱くなる。胸が高鳴る。
プログラムが乱れる。
綾瀬まどか(恋太郎君...........この子は..........今までの誰とも違う............)
その頃ーー別のクラス。
数学の授業中。
ショートカットの少女、朝陽夕奈は机に突っ伏して寝ていた。
数学の先生「朝陽夕奈さん。答えてください。」
夕奈は隣の友田李に揺さぶられ、ようやく目を覚ます。
朝陽夕菜「うぅ..........眠い...........」
ノートを見せてもらい、何とか答える
それを、そのまま答える夕奈。
数学の先生「よろしい。」
チャイムがなり、授業が終わった。
夕菜は友人と笑いながら廊下を歩き、そしてーー
夕菜「いたっ!!」
ドンッ!!と肩がぶつかる。
相手は恋太郎だった。
恋太郎「大丈夫?」
その一言に夕菜は胸がきゅっとなる。
(.........優しい........)
夕菜「うん。大丈夫。ありがと。」
そう言って別れたもののーー
心のどこかはざわめいていた。
(..........あいつ、ちょっと..........いいかも...........)
放課後。
恋太郎は、帰り支度をしている。
恋太郎(今日も頑張ったなぁ...............)
ふと見かけたのは、
クラスのアイドルーー綾瀬まどかだった。
恋太郎(誘ってみようか...............いや...............でも...............)
胸の鼓動が早くなる。
でも勇気を出して、声をかけた。
恋太郎「綾瀬まどかさん!」
綾瀬まどか「何?恋太郎くん?」
恋太郎「一緒に帰らない?」
その瞬間ーー
綾瀬まどかの脳裏に「断れ」というプログラムが浮かぶ。
だがーー
心が口を動かさなかった。
(断りたくない............)
綾瀬まどか「うん。一緒に帰りましょ。」
顔を赤らめながら、静かに答える。
その姿に、恋太郎も笑顔をはじけさせた。
恋太郎「やった!!」
二人並んで歩きだす。
その後ろでーー
夕菜はそっと拳を握りしめていた。
夕菜(何なのよ・・・せっかく誘おうと思ったのに・・)
夕菜の、心に小さな爆弾が生まれた。
金髪の男「なんだ!!これは!!」
金髪男は、食い入るように画面を見つめ、
驚愕ともに立ち上がった。
愛之助「嘘だろ!!入学して間もないっていうのに、
綾瀬まどかとあんなに自然に下校ができるなんて..........
本来なら、「みんなに見られたら恥ずかしい」って断るはずだ!!」
興奮を抑えきれず、金髪男はスマホを取り出しAIまどかを起動させた。
金髪の男「まどか、現在の恋太郎のパラメータをだしてくれ‼️」
AIまどか「了解しました。」
即座に表示された数値を金髪男は凝視する。
金髪の男「...........このステータスでは...............
本来なら下校イベントは朝陽夕菜に切り替わる...............
綾瀬まどかは絶対に断るはずなのに...............なぜだ...............!!」
金髪の男は事態を把握できず、唇をかむ。
金髪の男「本当に...............君の息子は...............
この『ときめきクロニクル』のルールすら.........変え始めている...........」
愛之助も画面を見ながら言葉を失っていた。
だが金髪男は再び冷静さを取り戻し
静かにモニターを見据える。
金髪の男「朝陽夕菜に爆弾が灯ったな。
さて...............この爆弾をどう処理するつもりか...........
それに、そろそろ部活が始まる時間だ。」
愛之助「ああ。あの娘が、来るな...............。」
プレイヤーの行動を心から純粋に応援してくれる
あの「光」のような少女が。
2人はだまって画面を見つめた。
愛之助の拳が、自然と力強く握りしめられていた。
息子がこの世界を変える。
綾瀬まどかをーー救うかもしれない。
そんな「小さな奇跡」を、ただ祈るようにーー