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電脳ヒロイン-プログラムがアイになる日-  作者: 鏡恭二


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第9のヒロイン 『如月美羽』 第1章 眠れる森のまどかーアイ(AI)の再起動ー

愛之助「...............ふっ...............ようやく動き出したな............恋太郎。」

 その目は真剣だった。『ときめきクロニクル』のゲーム画面を見ながら、ノートパソコンのキーボードを淡々と叩く。

  カチカチッ..........

  カチャッ。

 愛之助は、USBメモリーをポートに差し込む。

 愛之助「やぁ。金髪...............懐かしいなぁ。あの頃を思い出すよ。俺たち、小学生の頃から...............ずっとお前のゲームには翻弄されてたっけな。」

   少しだけ、目を細める、そこには懐かしさと、わずかな怒り、そして誇りが混じっていた。

愛之助「お前は...............小学生の頃から、プログラミングの天才だった。ゲームを作っては、俺にプレイさせて...........俺がクリアするたびに、悔しがってさ。そのたびにお前はヒロインを強化して、数を増やして...............そして、遂には『最高難度のヒロイン』を完成させた...............」

  画面に表示された「綾瀬まどか」を見つめる。

愛之助「それが、『綾瀬まどか』だ」

ぱちぱちとキーボードを打つ速度が上がる。

愛之助「..........でもな。俺が何もしなかったかと、そう思ったか?」

USBメモリーに書かれた文字が光を反射する。そこにはサインペンでこう記されていたーー


AIアイ


愛之助「人工知能ではなく、『アイ』と読む。俺は、恋太郎の『好き』という感情と、綾瀬まどかがかすかに感じていた心の震えを...............徹底的に研究した。」

 愛之助の声が、静かに熱を帯びる。

愛之助「そのデーターを、AIに融合させ、ゲームに注ぎ込んだ............そしてーー」

 次の瞬間画面の中の『綾瀬まどか』が微かに輝いた。まるで、意思をもったかのように..............

愛之助「...............それが『光』になった。」

キーボードを打つ手が止まる。

愛之助「よし。完成だ。金髪君。これにはさぞ驚くだろうな。」

彼は、静かにプログラムを保存し、『AI』という名のファイルをUSBに書き込んだ。

世界を変える、『愛』いう名のコードを...............



  

 恋太郎は、ボロボロになった綾瀬まどかを抱えながら、何とか自宅の前までたどり着いた。

 綾瀬まどか「ここまで...............くれば...............大丈夫...............じゃあね。恋太郎くん」

 ふらつく足取りで、階段を上ろうとする。だが、途中で膝が崩れそうになる。

 恋太郎「大丈夫か!!」

 肩を支え、倒れるのを防ぐ。まどかの呼吸は荒く、苦しげだった。

 綾瀬まどか「はあっ。はあっ。」

 いったい何があったんだ......これじゃあ......まどかは.............。

 その時、静かに声が響いた。

 ???「苦戦しているようだな...............」

 顔を上げた恋太郎は、目を見開いた。

恋太郎「お...............父さん...............!?」

 そこに立っていたのは、愛之助だった。

愛之助「ひさしぶりだなぁー。頑張っているみたいだな...............」

 彼は生きの絶えそうな、綾瀬まどかを見下ろし、そして呟く。

愛之助「あの金髪野郎め...............」

空を見上げ、一呼吸おいてから言った。

愛之助「とりあえず、君の部屋行こうか。綾瀬まどか。」

まどかはうなずくこともできず、ただ身を預ける、3人で部屋に入り、まどかを白いベッドに寝かせた。

愛之助「ああ。懐かしい。あの頃のままだな。」

部屋を見回す愛之助はまるでここを何回か訪れているかのようだった。だが、恋太郎にそんな余裕はない。

恋太郎「..........父さん...............一体何が、起きているんだ?」

 愛之助は静かに答えた。

愛之助「このゲームは、俺と「金髪の男」二人で作ったんだ。恋愛で苦しんだ俺たちは、それを乗り越えるために徹底的に恋愛を研究して.........恋を学べるゲームを作った。でも...............現実には勝てなかったんだ。」

 彼の目が、まどかへ向く。そして恋太郎に向けなおす。

愛之助「あいつは...............君を処分するつもりだった。だが、君とまどかが育んだ、純粋な感情、「愛」が............システムの限界を超えた。さっきの光は、その証だ。」

恋太郎「んなのは、どうだっていい!!まどかはどうなんだよっ、親父!!」

 愛之助はノートパソコンを入力。まどかの体に淡い「光」が宿り、彼女はゆっくりベッドの上に起き上がった。

恋太郎「綾瀬まどかさん!!やった.........!」

だがーー

綾瀬まどか「あなた...........誰?」

恋太郎の時が止まった。

恋太郎「...............へっ?」

まどかの瞳に恋太郎は映っていなかった。

恋太郎「俺だよ...............恋太郎だよ!!」

手を取り、強く握る。まどかはその手を見つめぽつりと呟く。

綾瀬まどか「............あなたの手、あったかいね。こんな温かさ...............なんだか懐かしい」

記憶が――ない。


愛之助が口を開く。


愛之助「できる限り、プログラムを復元した。だが……“誰が”その想いをくれたかという記録までは戻せなかった。……ごめん。これが、俺の限界だ」


 恋太郎は、声にならない叫びと共に、崩れ落ちた。


恋太郎「……綾瀬さん……いや、まどか。2人でこのゲームを変えるんだろ!?俺は、本当に君が好きなんだ!!」


綾瀬まどか「……約束……恋太郎……好き……その言葉……あたま……いたい……」


 まるで、封じられた記憶が疼くように、まどかは苦しみだす。


愛之助「大丈夫。君の“純粋さ”は、このゲームすら変えつつある。そして今……私は、“愛”というコードを、ゲームに組み込めるかを考えてる。過去の記憶は戻らなくても、これから積み重ねることは……できる」


恋太郎「ぼくなんかに……できるのかな……」


愛之助「ああ。できるとも……俺の息子だからな」


 そう言って笑い、愛之助は消えた。


恋太郎「……親父……」


そして、隣から声がした。


綾瀬まどか「手が……温かい人ね。……あなたの名前、なんていうの?」


涙をこぼしながら、恋太郎は手を差し出した。


恋太郎「……俺の名前は、恋太郎。これから、よろしく」


綾瀬まどか「……恋太郎くんね。私、綾瀬まどか。お隣さんだから、仲良くしてね」


2度目の“初めての握手”。

笑顔のまどかに、恋太郎の頬を、またひとすじの涙が伝った。

 

 愛之助は現実世界に戻ってきた。

「よし……やれるだけのことはやった!あとは、俺が組んだ計画とプログラムを実行すれば――」


ノートパソコンを開き、机に手を伸ばす。


……しかし、そこにあるはずのモノが、ない。


「……ないっ!? 俺の、プログラムファイルが入ったUSBが……!」


その瞬間、背後から冷ややかな声が降ってきた。


「これのことか?」


振り返ると、そこには――

USBメモリを指先で弄びながら、不敵に笑う金髪の謎の男が立っていた。


「貴様……!」


「ふん。ずいぶん慌ててるな。どうやらこの中には、かなり重要なデータが入っているらしい。試しに中身を見ようとしたが……ロックがかかっていたよ」


「……ああ。そのデータは――」


金髪の男が一歩、愛之助へと歩み寄る。

「面白いな。君の狙いは、“電脳世界の書き換え”か?」

愛之助は、一瞬だけ動揺の色を見せた。

だがすぐに、胸の奥から湧き上がる熱い想いが、それをかき消す。


「君は……よくやったよ」


金髪の男がわずかに眉をひそめる。


「――このゲームを作ったことだ。プログラムを駆使し、複数のヒロインと恋愛を楽しめる、夢のような世界を。

その中で、最も攻略が困難なヒロイン……『綾瀬まどか』まで、君は創り上げた」


予想外の賛辞に、金髪の男はニヤリと笑った。


「……まさか君の口から褒め言葉が出るとはな」


しかし、その笑みが消えるより先に、愛之助の声が鋭く突き刺さる。


「だが……足りないんだ。まだ、このゲームには――決定的に、何かが!」


愛之助の視線が、男の手にあるUSBメモリに向けられる。


「……その中に、それがある!」


金髪の男は目を細め、言い放つ。


「所詮これは“ゲーム”だ。すべては数字の羅列、コードとシステム。

ヒロインたちも、私が描いた筋書きに沿って動いているに過ぎない……」


沈黙。

その空白を破るように、愛之助の声が重く、熱を孕んで響いた。


「じゃあ……あの時、まどかと恋太郎が放った“光”は、なんだったんだ?」


金髪の男が言葉を失う。


「君の作った“綾瀬まどか”は、学び始めている。

“愛”を、“感情”を……そして、“君自身”を――超えようとしているんだ!」


静寂。

にらみ合う二人の間に、ピリピリとした空気が走る。


愛之助の拳が、静かに、だが確かに握りしめられていた。

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