プロローグ
「ルッキオ公爵家・メイナ。わたくし、あなたの悪事を知っておりましてよ! 此方が証拠でございますわ! 罰が決まるまで牢に入っていなさい」
わたくしが友人付き合いをしている我がルッキオ公爵家の派閥の者達と情報交換をしていると、背後から書類一枚を突き出して高らかに宣言する第五側妃の娘である一応身分は王女のナナハが現れました。
事前にこのナナハが企んでいることは情報として掴んでおりましたが、真に国王陛下主催の夜会にてやらかすとは……と呆れ果てておりますわ。ですが、そんな気持ちは横に置いておき、王族方がご休憩されていらっしゃるスペースへチラリと視線を向けます。
国王陛下と王妃殿下は鷹揚な雰囲気。
第一側妃様並びに第二側妃様もまた同様。
第三側妃並びに第四側妃は既に表向きは病死……実際には王妃殿下の命を狙って毒杯を賜った事による死去で居ないから除外。
そしてこのナナハの母である第五側妃は勝ち誇ったような表情を浮かべていた。
更にお父様ことルッキオ公爵とお母様のルッキオ公爵夫人に養子縁組で迎えられた義弟のルッキオ公爵子息をチラリと見れば、三人が同時に頷きましたのでわたくしも視線で頷き返しました。ルッキオ家では既にこの一件について国王陛下直々に極秘の指令を頂きまして、わたくし達は話し合いを重ねて対処方法を考えておりました。
「畏まりました。ナナハ王女殿下の良きように」
一応、頭ではナナハと呼んでいても、言葉にする時はナナハ王女殿下と呼びますが……ナナハは王族教育はどうしたのかしら、と不安になるほど、鼻息を荒く勝ち誇った表情を浮かべています。……あらこう見ると流石に第五側妃と母娘でそっくりですね。
取り敢えず、ナナハ付きの護衛騎士に視線を向ければ護衛騎士は心得た様にわたくしの腕をグイッと掴んで夜会の会場から連れ出しました。ナナハの視線が無くなった途端、護衛騎士は手を離しわたくしに頭を下げます。
「茶番とはいえ、ルッキオ公爵令嬢様にこのような無体を敷いたこと、真に申し訳なく、どのような咎も受け入れる所存にて」
「構いませんことよ。あなたにはあなたの役割があった。あれでソッと掴まれていたのならナナハ王女殿下にあなたが叱責されていた事でしょう。あなたの主人からの命なのですから気にする必要は有りません」
護衛騎士が尚も頭を上げないのでわたくしは一つ溜め息を吐きました。やや頭の固い騎士のようです。
「大丈夫ですわ。あなたが真に国王陛下に忠誠を誓っていることは分かっております。そうでなければ、今、あなたがわたくしに謝るわけがないのですから。陛下に命じられているのでしょう?」
「それは」
否定しなかった時点で肯定しているようなものです。騎士も漸く頭を上げました。
「では、道行のご同道を願います」
「ええ、よろしくてよ。ナナハ王女殿下の気が済むまでは牢屋におりますわ」
どうせあのナナハは牢屋に入ったわたくしを嘲笑ったら、それで終わりにして放置して来るでしょうし、ね。それよりもあの証拠とも言えない書類一枚でわたくしを捕らえて牢屋に放り込む、なんて本当に愚かでしかないわ。
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