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6・エピローグ

 冤罪が晴れた事を王家から正式発表されると共に、ナナハと第五側妃の病気療養が発表されました。数年後には病死する事でしょう。わたくしは牢屋から出されてナナハの独断であることを受け入れました。それと同時に、第一王子であるエビルが婚約者を守り切れなかったという自責の念から、成人と共に王籍を離籍し、臣下へ。わたくしは異母妹であるナナハの失態に責任を感じたエビルに感銘して、公爵位を貰い受けたエビルと結婚する。……というのが筋書き。

 王妃殿下がお産みになられた第二王子殿下が王太子ということも発表されました。


「あなたの思惑通り、ですわね」


 牢屋から出されて暫く静養している事になっているわたくしの元へエビルがやって来ました。溜め息を吐きながら持て成します。


「言ったはずだよ。私と陛下の思惑さ」


 目の前の男はニヤリと笑い紅茶を飲む。

 この男の本当の父親は現在の辺境伯。その辺境伯は先代の国王陛下の息子。ーーこの事実を知ってしまったわたくしは、余計に逃げ出すことが不可能になってしまった。王家の秘密だから。

 国王陛下もこの男が言うまで知らなかった、とか。

 抑々、王家の血は代々男女問わず愛する相手、一人に固執する。国王陛下が王妃殿下に固執するように。王子も王女も関係なく臣下となっても変わらない。そういう性質らしい。

 そして先王は先王妃を伴侶として大切にしていたが、異性として愛してはいなかった。長い間先王の最愛は現れなかったのだが、到頭現れた。いや、現れてしまった、というべきでしょうか。先王に愛された女性の素性は明かされませんでしたが、先王に愛される事は喜んでおらず。それに気付いた先王妃が彼女を先王から解き放った。

 その解き放った先が先代の辺境伯。彼女は先王の子を身籠ったまま辺境伯に嫁いだのです。先王は先王妃に最愛を奪われた事を悲しみ、病に倒れそのまま他界した、というのが先王の死因のようです。先王妃は先代辺境伯に全てを打ち明けて、やがて現在の国王陛下の御代が安定した頃に安心したのか、他界されました。

 先代辺境伯は、先王の子を身籠っていた妻が産んだ子を我が子とし、後々妻が産んだ本当の我が子と分け隔てなく育て、後継者にも指名。それが当代の辺境伯のこと。辺境伯は、自分が王家の血を引くことを先代辺境伯から聞いたけれど、別に何も思っていなかったそう。

 でも、自分の母と自分の命を救ってくれた先王妃に挨拶したい、と密かに会いーー恋に落ちた。

 当代の辺境伯は先王妃に恋をしてしまった、と。先王妃はその愛を拒否したそうですが、当代の辺境伯は先王妃を(しがらみ)から解き放とうと王家に混乱を招こうとしたのです。

 それが地方貴族派が活発化していた原因で国王陛下が王妃殿下との間に子を作らなかった遠因です。

 それで当代の辺境伯は第三側妃・第四側妃・第五側妃を陛下に送り込んだ。第三側妃は辺境伯の子を身籠って陛下の子だと偽り、第一王子であるエビルを産んだのです。第四と第五はそれぞれに好きな男の子を身籠る予定で、第四側妃は子を身籠れなかったのでしょう。第五は好きな男の子を身籠って陛下の元に。

 ですが、その頃に先王妃は他界されました。

 つまり当代の辺境伯が愛した女性はこの世を去ったので、彼はどうでもよくなって大人しくなったのだそう。でも彼を愛していた第三側妃は、彼の恋心など知らずに王家を混乱させる事だけに費やして。結果、王妃殿下を陥れようとして返り討ちに遭ったわけです。第四側妃も共に。

 第五側妃はもう少し頭を働かせて今回のわたくしの冤罪を引き起こした、と。辺境伯がもう王家のことなど気にもしていない事すら気付かずに。

 エビルは、わたくしと婚約するよりも前に母である第三側妃から辺境伯のために王家を混乱に陥らせる事を言い聞かせ育てられたそうで。辺境伯が本当の父親である事もその頃から知っていた、と。

 それからわたくしと婚約する事も、その企みの一部だったと第三側妃から聞かされたエビル。でも、わたくしに一目惚れをした、と。迷惑ですわね。

 で。

 エビルの身に流れる王家の血が、わたくしを確実に自分のものにするために、国王陛下と内密に取引をしたそう。

 つまり、辺境伯の企みの全てや第三・第四・第五側妃の企み諸々を話す代わりに、わたくしと婚約して後々臣籍降下して結婚させること、と。本当に迷惑ですわ。

 でも、国王陛下は、辺境伯が何故そんな企みを考えたのか理由が分からなければ受け入れない、と拒否。

 エビルは密かに辺境伯に面会し、その真意と心境を聞いて陛下に奏上。

 陛下も流石に自分の母である先王妃に惚れ込んだとは思わなかったようで、衝撃を受けたそうですが、母が他界した以上、辺境伯にもう企む気持ちなど無いことを、国王陛下には理解出来てしまった……ということで。(ご自分も王妃殿下が最愛だから理解出来てしまったらしい)

 辺境伯の企みに対する叱責と、辺境伯が辺境から出ることを生涯禁じることで罰とすることになって。エビルは国王陛下からわたくしとの婚約を許された、と。

 本当に迷惑ですわ。

 そして、エビルは自分の母を含めた側妃の失脚も手伝っていたけれど、第五側妃だけは今回の件まで失脚させられなかったのだそう。でもわたくしに冤罪を着せ、それを助ければ、もしかしたらわたくしがエビルを受け入れてくれるかもしれない、と画策したとか。

 何度でも言いますわ。迷惑です。

 尚、第一側妃様と第二側妃様は、王妃殿下の友人で王妃殿下に忠誠を誓われてます。陛下もそれを理解しているから、お二方の排除は考えておらず、お二方は死ぬまで側妃の座にいる事でしょう。

 まぁお二方とも身分違いの恋をしていましたから結婚を諦めていた所へ、恋人共々側妃として召し上げられた事から国王陛下にも忠誠を誓われたようですが。

 お二方は恋人と結婚は出来ず、恋人の子も産めませんが側妃が暮らす離宮にてずうっと夫婦のように暮らしているのは、王家の公然の秘密です。お二方の恋人もそれを受け入れていらっしゃるから、それも幸せの形なのでしょう。

 これで国王陛下は側妃を退け、王妃殿下の産んだ息子を王太子に出来て、唯一最愛の王妃殿下を心ゆくまで愛でられるわけです。

 そのとばっちりでわたくしは愛してもない男と結婚し、子を産まねばならないようですけど。本当に有り得ませんわ。迷惑。


「でもさ、メイナは私と結婚して良かったと後々思うよ」


 わたくしが迷惑、迷惑、本当に嫌、と言っていることすらエビルは楽しいみたいですが、わたくしはちっとも楽しくないのですが。

 そんなことを思いながらエビルと結婚して良かったなんて思うわけがない、と睨みます。


「どうしてですの」


「私の父上、辺境伯は先王妃に一目惚れしたんだよ? 先王妃って何処の家出身?」


「何を愚かなことを。先王妃はわたくしの大叔母様。お父様の叔母様。亡きお祖父様の妹ですわよ」


 エビルが先王妃が生まれた家を尋ねるので、バカにしているのかしら、と即答する。


「うん。で、メイナ、君はその先王妃に瓜二つだと国王陛下や君の父親と母親が言っていた」


「そう、ですわね?」


 幼い頃のわたくしは大叔母様にあまり似てなかったのですが、今のわたくしは瓜二つだと言われるくらい似てるようです。幼い頃に会っていた大叔母様の記憶が朧気なので分かりませんけど。


「だからさ。辺境伯である父上が君を見たら、先王妃たと思って求婚しないとも限らないじゃないか」


「ーーっ」


 エビルの発言に、ようやく意味を悟りました。わたくしは自分しか愛せないですが、それでも父や陛下と同年代の男性の元へ嫁ぐ気は有りません。政略結婚ならば受け入れますが、大叔母様だと思われて結婚なんて、受け入れられるわけがない。

 しかも、辺境伯は妻子がいらっしゃるのに、です。わたくしを妻にしたい、なんて望まれたらその妻子と離縁しなくてはならないわけで。

 他人を不幸にして辺境伯へ嫁ぐ? 無理です。


「……わかりましたわ。あなたと結婚するのがマシだと思います……」


 嫌々ですけど。本当に嫌ですけど、わたくしは受け入れました。

 それから数年後。

 わたくしはエビルと嫌々結婚。

 でも、ユニカがわたくしに恩義を感じていた、と、エビルが賜った公爵家のメイドとしてやって来て採用した事だけは、エビルを評価しても良いとは思ってます。




(了)

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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