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4・事態を動かす癒し(メイナ編)

 あの、お父様が梃子摺る相手というのが、わたくしも予想出来ないままおよそ一ヶ月が経過する。……まさか一ヶ月も牢屋暮らしを送る事になるとは予想だにしませんでしたわ。まぁ今まで忙しかったのでのんびりしてますけれど。

 王子妃になるための勉強とやらをずうっとやってましたからね。王子妃になるつもりなどまるで無い、というのに。胸の裡でそんな事を考えていたある日。事態を動かす人物が現れました。

 いえ、彼女自身は関係ないのですけどね。

 ユニカ。

 彼女をこの牢に入れて来た人物を見て、戦慄致しました。まさか、この男がーー。

 口元だけに笑みを刷いてその男が去って行くのを見て、わたくしは全てを悟りました。


(ああ、逃げられないのね)


 溜め息を吐き、ユニカの事情を尋ね、彼女の冤罪を晴らすべく、話を聞いているであろう牢番のフリをする男へ声をかける。推測でしかなかった? ユニカがきちんと話さなかったから? なるほど。確かにユニカはこのような事態に追い込まれてきちんと頭が働かなかった事でしょう。

 けれど。

 この目の前の男がわたくしの冤罪から始まる一連の出来事の黒幕ならば、わたくしがユニカの父に世話になったことを知らぬはずがない。わたくしに危難が及んだのは第一王子の婚約者だったから、ではなく。

 その母親である第三側妃の意のままに動かぬわたくしが気に入らなかったから、なのだから。

 まだ子どもだから……と機嫌を取れば傀儡(にんぎょう)にでもなる、と思っていた第三側妃の思考が、いっそ憐れでしたわ。それが思い通りに行かぬと分かった途端にわたくしの命を狙って来るのだから愚か、としか言い様がなかった。第三側妃を死に追いやった理由は、王妃殿下に手を出したから。

 わたくしに対して行った事のお父様による報復は、第三側妃に充てられた予算を少なくしたことくらいの可愛いものでしたわ。陛下が口を出してきたから、ですが。そうでなければ、お父様がブチ切れて第三側妃に暗殺者を送り込んで居ましたわ。

 アレはおそらく、第三側妃を調子付かせて王妃殿下への失態を誘発させようとしていたのでしょうね。

 陛下はもしかして地方貴族派に何か思う事でもあったのでしょうか。

 だから避妊薬を飲んで王妃殿下と閨を共にして子が出来ない、と周囲に思わせて側妃を送り込ませてきた、のかもしれません。第三側妃が送り込まれて、第三側妃が身籠ったと言い出して直ぐに、第二王子殿下にして王太子殿下や、第一王女殿下を含む四人のお子を王妃殿下との間に設けられましたもの。

 それなのに第四・第五側妃を受け入れたのですから……地方貴族派に何やら思う所があった、としか思えませんわ。

 まぁ陛下の思惑を知りたいわけでは無いので、これ以上のことは踏み込まない方がいいでしょう。

 それよりも目の前の憎らしい男よ。飄々と笑ってみせて。これがこの男の本性ならば、わたくしは……いえ、お父様も含めた皆が、おそらく国王陛下でさえも……この男の掌の上で踊らされていたのでしょうね。

 この男の本性に迫るのは後回し。

 それよりも。

 ユニカが冤罪だということは証明されたのですから、いつまでも牢屋に居ることは無くてよ。だからそう促したというのに。


「メイナ様こそ、冤罪なのに牢屋から出られないのが申し訳なくて……。私に出来ることはあるでしょうか」


 なんて言うものだからわたくし驚いて目を瞬かせてしまいましたわ。フワリと笑んで首を振ったの。なんて優しい心根の持ち主。あの父親にしてこの子あり、という所かしら。癒しだわ。


「良いのよ。気にしないで。でもそうね。わたくしが牢屋から出る機会が訪れたとしたら……その時は会いに来て頂戴」


「分かりました」


 でも気にしないように言って、序でにお願いをしたら、間髪入れずに頷くの。わたくし可笑しくなって淑女としては、はしたないかもしれないけれど、コロコロと笑い声を上げてしまったわ。


「あら、ユニカ。本当にわたくしが冤罪だと思っているの? 冤罪じゃないかもしれなくてよ?」


 そう。

 ユニカってば、わたくしが冤罪だと信じているみたいに迷いもなく頷くのですもの。面白いわ。


「いいえ。たった数時間ですが、私の話を最後まで聞いて下さったメイナ様が罪人だとは思えません。少し過ごしただけですが、メイナ様は冷静で知的なお方です。絶対に冤罪です」


 言い切ったユニカを、わたくしはふふっとまたも声を上げて笑いました。楽しい。本当にこの子はわたくしが無実だと思っていますのね。まぁ無実ですけれど。


「では、わたくしが牢屋を出る機会が巡るまで待っていて頂戴ね。では、お行きなさい」


 わたくしが此処を出るのは直ぐよ。だから必ず会いに来て頂戴ね。わたくし、待ってますわ。

 どうせこの後、この目の前の憎らしい男と対決……にもならずに真相を明かされて、サッサと牢屋から追い出されるもの。こんな憎らしい男だと思わなかったわ。そして、この男の手から逃げる事も出来ない、と理解してしまったことが悔しくてならない。

 ーーこの第一王子と言われているエビルに。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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