プロローグ
「さっさと中に入れっ」
掴まれていた二の腕を雑に振り払われつつ放り投げられた先は……分かっていたけど檻の中、だった。……檻の中、だよね? アレ? ここどこ? 私、牢屋に入れられると思っていたんだけど……なんか随分と清潔じゃない?
私の聞いた話では、牢屋の中って足元が半分土の面だから、その部分は水捌けが悪いからちょっと歩くだけでぐちゃぐちゃになっちゃう……って話じゃなかった? 寝る所は石が敷かれていてその上に藁が敷かれていて、そこで寝るとかナントカ。というか、せめて全面に石を敷き詰めておけよ、と酔っ払って喧嘩沙汰起こして一晩牢屋に泊まった幼馴染の男・フェズが言ってなかったっけ……?
「あらあら、大丈夫かしら?」
放り投げられてズシャッと音をさせ……てない私の身体はフカフカな毛足の長い絨毯の上に寝かせられ……いや、寝かせられたというより放り投げられた先が絨毯の上だったわけだけど。フカフカで毛足が長い絨毯が牢屋にあることの意味が分からなくて、此処は牢屋じゃなくて違う部屋なのだろうか……と身体を起こす気力もなくボンヤリと絨毯を眺めていた私の上から可愛らしい声が降ってきた。柔らかい声音。木管楽器の一つ、フルートのような優しさが耳に残る。そちらに視線をやった。
赤みを帯びた金色の波打つ髪は腰まであって。毛足の長い絨毯の上をまるで女王の如く歩いて此方までやって来たその顔は少々吊り目がちな翡翠の瞳。鼻はあまり高くなくて唇はぽってりというよりふっくらした面長な顔立ちの、多分私と同じくらいの年齢の少女ーー。
「あなた、みたいな人が、なんで、こんなところ、に……」
こんなに可愛らしい少女が牢屋(だと思われる)に居るのが理解出来なくて、散々痛めつけられた手足の痛みを忘れて発した言葉。
痛くて叫んでた声で掠れてしまっていて、少女に届いたのかどうか分からないまま、様々な事が起きて状況がいっぱいいっぱいになった私の意識はぷつりと切れた。
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