僕の君9
お出迎えをしたのは部屋着の大家だった。
大家「あんた達ランクは?」
大家の目には黒い隈がてきており、髪の毛は長い間部屋の隅で野放しにされていた蜘蛛の巣のようだ。
さくら「最低ランクですが、安心して下さい。私は魔法が使えるんですよ。」
さくらはみなとと光を売る商売をしていた時のようにいつも通りの明るさで話した。
大家「何で、何で。あたしはね、もう3日も物置のやつのせいで眠れてないんだ。それなのにきたのは最低ランクの若い娘とそのボーイフレンド。デートじゃないんだ。帰ってくれ。受付けの小娘め。使えないやつらを寄越しやがって…」
声を聞くだけで、精神的にも肉体的にも限界であることが分かる。
みなと「とにかく、大家さんは寝ましょう。最低ランクの我々でも見張ることぐらいできますから」
大家「だから何だってんだ!何にも出来やしないじゃないか!もう限界だ!あんたらが今すぐアレをどうにか出来ないっていうなら、直接私が、使える冒険家を探してきてやる。」
もう、今にも飛び出していってしまいそうな大家に急いでさくらは声をかけた。
さくら「大家さん。見て!これが、私の光魔法。どう?キレイでしょ?これならキレイに処理出来ると思うの。」
異形は生物であるかは不明だが、暗闇から生まれたものである。
当然闇を消せるぐらいの強い光があれば、異形は消えてなくなる。
大家「ふん!そんな光、いくらでも見たことあるよ!」
さくら「確かに私の魔法は普通の物と変わらないかもしれない。だけど、私は心の底から照らしたいと思ってる。だから、お願い。私にチャンスを頂戴。」
さくらは頭が少し悪いからトンチンカンな根拠も無いことを言う。だが、だからこそ嘘はつかない。いや、つけない。
大家の反りたった眉毛は、少し平らになった。
大家「そこまで言うならやってみなさいよ。だれも、やらせないなんて言ってないんだから。」
さくら「ありがとう。」
…
2人は自転車置き場の隣にある物置小屋の前に仁王立ちした。
物置からは異様な気配が流れてきている。
みなとはそれを分かっていた。
さくらは分かっていなかった。だが、そこだけ異常に暗い。
どす黒い。
みなと「なぁ、今回は少し止めとかないか。俺は分かるんだ。今回は異常だ。俺のかんが外れたことなかったろ?」
さくら「何よ?暗くて怖じけづいたの?ただ、暗いだけよ。問題ないわ。それにここに着く間に外したばかりじゃない。あんたのかん。」
並んだ2人の間には冷たい空気が流れている。
みなと「分かった。じゃあ俺が先に行って様子を見てくる」