僕の君6
「もしもーし。もしもーし!」
さくらは少しずつ大きな声にしながら、みなとの耳元に電話をかける。
「もしもーし!!もしもーし!!!」
「っさいなぁ!起きてる!!」
みなとは横を向いて寝転んだままキレた。心底腹の虫の居所が悪いらしい。
「話すことなんてないね!」
みなとは決して許さない。今まで2人の力でコツコツと稼いだ金の半分をくだらないパーティー用品にかえられたからだ。
相談もなく!
「えーいいじゃん!また稼げばっ!小さい事気にしてっとモテないぞ少年っ!」
さくらは肩をポンと叩きソファから立ち上がった。
みなとの怒りは募るばかりだ。
俺は何か悪いことをしただろうか?言っただろうか?こいつの浪費癖はしっていた。だが、ここまでバカだとは思いもよらなかった。
全財産使った挙げ句、半分を。クソっ!クソっ!クソっ!ボンネットに連続踵落としを食らわせたい気分だぜ。
そんなことを思っても仕方がない。車は走り始めている。
ダッシュボードで頭を揺らす人形と運転席を見たみなとは目が合い更にイライラはつのった。
ガタンガタンと揺れる度に、大きな笑顔の首振り人形は大きくうなずく。
みなとは拗ねてソファの上で寝っ転がって窓の外を見つめている。
暗闇の中をひたすらに街灯が一定の感覚で通りすぎていく。
街灯の数は多くはないが、少なくはない。
光が後ろに通りすぎていく。そんな中。一瞬だけ、看板を持った人影が窓の外から見えた。
みなと「さくら、止めて。」
さくら「もう旅を降りるなんて言わないでよね。」
みなと「違う。今人間が見えたんだ。いいから、止めろ。」
みなとは怒っているせいか。いつもより、さくらに対して当たりが強い。
車を道路から外れた草原に止め、みなとは外に出た。
みなと「俺が少し見てくる。お前らは車の中にいろ。」
さくら「言われなくてもそうするよ。」
少し、雑草を歩く音を立てながら看板が見えた辺りまで戻った。
「求!光」
男は看板を万歳の形で両手に持っていた。
「よう!すまねぇなぁ!お兄ちゃん。ランプの魔方陣が潰れちまってなぁ。何か照らす物持ってないか?何にもねぇと家に帰れなくてよ。」
みなと「そうか。それは災難だったな。俺が直せるか見せてくれないか?」
「すまねぇなぁ。ありがとよ。」
中年のフードを被った男は魔方陣を中に宿しているランプをみなとに差し出した。
車のライトが真っ暗な道路を照らしても、そこには明るい色なんてない。黒色だ。
エンジンの音だけがなる。