僕の君5
みなと(あの2人。帰ってくるの遅くないか。)
みなとは鞄にサバイバルナイフを入れようとした。
その時裏路地の暗闇の方から物音が鳴った。
みなとは何だろうと思いその音のする方へと足を向けた。
そこには暗闇から生まれる生物。異形がいた。
その名の通り、生物でありながら、種としての一定の形を持たない。個によって姿形が異なる。
みなとが会ったのは、軽トラック程の大きさの生物を模したロボット。4本足で動いている異形であった。
みなと(異形の気配。何でこんなところに異形がいる?まぁ、何でもいい。冒険前の準備運動だ。)
異形は何の雄叫びも上げないまま、みなとに襲いかかった。
そこは暗闇だ、光がなければ何も見えない。
なのにこの男はいとも簡単に、攻撃をかわす。
かわす。かわす。かわす。
痺れを切らした異形は鋼鉄のしっぽで体を支え、四本の足を同時に振り下ろした。
みなと(ああ、懐かしい。今でも体は自然と動くものなんだな。)
刃を照らす光もなく、切り裂く音もなく。
異形は不思議そうに首を傾げると、機械の体がバラバラになった
異形は倒されると跡形もなくなる。
サバイバルナイフを隠して持ったみなとが暗闇から出てきた。
そこには、買い物袋を両手にずっしりと持ったさくらとさつきがいた。
さくら「大きな音がなったけど。何かあったの?」
さつきとさくらは目を皿にして聞いた。
みなと「大量に捨てられてたガス缶が破裂して小さな爆発を何回もしてただけだ。火は消したから問題ない。」
さくら「え!?ちょっ!大丈夫?怪我はない?」
みなと「大丈夫。音のわりには小さい爆発だよ。」
さくら「そう…」
さくらはあまりに突然のことであっけに取られ、言葉を失っていた。
さつきはみなとが出てきた闇の方をジッと見つめた
さつき「なんか怖い…」
子どもだからなのか、さつきは闇から不気味な気配を感じとり、何もしゃべらなかった。
不気味で異様な雰囲気によって周りが静まり返った。
その中で、みなとだけが平然と歩きだし、鞄にサバイバルナイフを静かに隠しながらしまった。
鞄のファスナーを閉めたみなとはふたりを振り向くと同時に話し始めた。
みなと「そんなにいっぱい何を買ったんだ?」
さくらはハッと我に戻った。
さくら「そりゃあ!冒険に必要な物だよ!」
さくらはキラキラした目で袋をガサゴソと漁りは始めた。
みなと「おい!ちょっと待った…そのピコピコハンマーは何だ?…」
さくら「うん?まぁ、これはムードチェンジに必要な道具だよねぇ。」