僕の君30
さくらはゆうじを連れてマンションの部屋に戻り段ボールに埋もれたまま意識を失っているみなとを見つけた。
さくらはみなとを段ボールから引きずり出した。
さくら「みなと!みなと!こら!起きろ!」
耳元で怒鳴り付けてもピクリともしない。
さくら「あれ?なんでだろう?ねぇ、ゆうじ何で起きないのかな?」
ゆうじ「こういう時はビンタじゃな」
さくら「え…でも…それは。かわいそう!…っていうか。痛いじゃん」
さくらは最強の魔法使いが言うことを完全には否定出来ないでいた。さくらはおどおどしながら、ゆうじの目を見たり逸らしたりしていた。
だが、ふといつものドロップキックをお見舞いしている事を思いだし、急に肝が座ったかのように、何の躊躇いもなくみなとの頬をビンタした。
それでも、みなとは目を覚まさない。
ゆうじ「起きんな…どれ。わしがやってやろう。」
ゆうじは手を上げ頬に狙いを澄まし手を振りかざした。
その時、みなとの手が意識よりも早く、条件反射の如くゆうじの腕を掴み、その暴力行為を停止させた。
みなと「おっさん。さくらという名前の女の子を知らないか?」
ゆうじ「君の隣に居るよ」
みなとがゆうじの右に目を向けさくらを見つけた。そのまま目を離さず沈黙の時間が過ぎたが、その時に流れた時間は穏やかで、暖かかった。
みなとが口を開けて何かを話そうとしたが、それより先にさくらが話しだした。
さくら「いつまで寝てるのよ!」
少し怒ったような口調だったが、その母音の奥には感謝と安堵の気持ちが含まれていることをみなとは汲み取った。
みなと「何だか頬が痛いんだが…」
みなとは自分の頬を擦りながら手を振りかざしたおっさんよりも先にさくらの方を見た。
さくら「何で私を見るのよ?状況から見てゆうじでしょ?」
みなと「確かにこの状況ではおっさんを疑うのが、誰がどう見ても正しい判断だ。だが自分でも不思議なんだが、なぜかお前しかいないと思うんだ。さくら。この気持ちはいったい何て言うんだろうな?」
さくら「みなと。それは疑心よ。」
みなと「いや。確信だ。」
2人は暫く見つめあった後さくらが口を開いた
さくら「ごめんなさい…」
みなと「やっぱりな…」
みなとが満足するまでさくらが平謝りした後、散らかった部屋を2人は片付けていた。
みなとは手を動かしながら話しだした。
みなと「それで、このゆうじさんがさくらを助けてくれた恩人ということか。」
さくら「そう!あの受付けにいたおじさん!」
みなと「えっ!?あ、ホントだ!」
さくら「あれ?言ってなかったっけ?」




