僕の君24
ねぇ、あなた。
ここに割れてしまったお皿があるとするでしょ。
直すにはどうすればいいと思う?
凛とした声で全てを見透かしたように彼女は言った。
そんなの簡単だ。強力なボンドでくっつければいい。
確かにそうすれば、使えるようにはなるけど、ひびは入ったままよね。完璧に元通りにするにはどうすればいいと思う?
さぁ、わからないな。謎々かい?
謎々じゃないわよ。バカね。簡単な話よ。割れる前の時間に戻って、防げばいいのよ。
それが出来たら苦労しないよ。
そうね苦労しないわ。ボンドを器用に使う必要もない。
何を言ってるのか分からないよ。
まぁ、無理もないわ。
でもあなたなら理解できるはずよ。私が唯一愛した男だもの。
目が覚めた。
また君の夢を見てしまったよ。夢ならば覚めて欲しくなかった。
今日も憂鬱な1日が始まる。
君が残していった難題もずっと解けずにいるよ。
ミニマリストの君が唯一残していった物だから
忘れることなんてできず、ずっと頭の中をさ迷っている。
私、きっと短命だわ。
そう言った君はいつものように透き通った笑顔で僕を真っ直ぐ見ていた。
僕はあの時、いつもの唐突なジョークだろうと思い、当たり障りのない返事で受け流した。
うふふ。あなたらしい。そんな貴方が大好きよ。
僕はいつも彼女の言葉を聞くだけで、自分でよく考えて意見を言うことなんてなかった。
だからこのとき僕が何て言って彼女が笑ったのかさえ思い出せない。彼女が僕に向けた最後の笑顔だったというのに。
彼女を失ってからぼくは落ち込んだ。
この先どうやって生きていけばいいのか分からないよ。
そう思って机に置いた彼女の写真を見た。
そこには向日葵の畑で幸せそうに微笑む彼女がいた。
だから僕は本屋を止めて会社を作った。
君見たいに幸せそうに笑う人を増やしたくて。
そして会社の名前は君の幸せを願ってつけた。
ひまわり工房
大層な物は作れないけど、向日葵をモチーフにハンカチやエプロンなどを作って売っている。
さくら「わぁ!可愛い!この帽子ひまわりの刺繍がある。」
みなと「お金ほとんど無いぞ。」
ロイ「どうも、こんにちわ。店長のロイと申します。帽子が気に入られましたか?」
見た瞬間に分かった。明るい。光魔法ではない。雰囲気というか、存在が。僕には分かる。この子は将来、この暗い世界を照らす光になる。
さくら「はい!」
ロイ「そうだなぁ。」
店長は少し悩んでこう言った。
ロイ「そこの兄ちゃんの帽子と交換でどうかな?」
みなと「は?」




