僕の君22
みなと「あぁ!使えるよ!あいつの光は温かくて心地がいいんだ。」
なるみの額に汗が伝った。
なるみ「私をその人の弟子にしてくれないか?皿洗いとか洗濯とか雑用する。だから、いいだろう?」
みなと「あいつはきっといいって言う。だけど、会えるか分からない。…」
なるみ「どうしてだ!お前の知り合いなんじゃないのか!」
なるみは大きな声で問い詰めた。
みなと「分からないんだ。ここがどこか。」
なるみ「ここは、ひまり村だよ!」
みなと「そうじゃなくて!」
なるみ「じゃあ!なんだよ!」
みなと「この世界のことだよ。…」
なるみ「意味わかんねぇよ…なに言ってんだ?」
みなと「僕がいた世界はこの暗闇の前の明るい世界なんて時間帯無かったんだよ!」
なるみ「朝って言えばいいだろう!」
みなと「だから、それが無かったから何て言えばいいのか分からないんだよ!」
なるみ「朝がない…?ずっと真っ暗ってことか?」
みなと「そう。」
なるみ「はは、何言ってんだよ。そんなの世界中探したってあるわけ…」
みなと「だから、そう言ってるんだ。僕は多分違う世界から来たんだ。」
なるみ「は?…ちょっと待て。頭が痛くなってきた。もう今日は寝る。」
みなと「あ、あぁ。急に悪かった。おやすみ。」
なるみ「…おやすみ」
なるみは頭を抱えて、家へ歩いた。みなとはその猫背を後ろから申し訳そうに見ながらその後に続いた。
そのまま別々の布団に入ると、二人は何も喋らずに眠りについた
真っ黒な暗闇が周りを包み込んでいる。この世界の暗闇は静かで、包容力がある。居場所を失くした者、居場所が無い者、現実から逃げ出したい逃避者、家族と共に幸せに暮らす者。幸、不幸。日常、非日常。全て平等に暗く染め上げる。何の理由もなく。
夜が明けた。
目が覚めたら、目の前にはさくらがいた。
みなと(また、戻ってきた)
みなと「さくら…」
泣いていた。大粒の涙が、頬に1、2滴落ちていた。
さくら「良かった。…起きて…」
さくらはだいぶ魔力を使ったのか、疲れた顔つきだ。
さくら「えっとね…みなとがね、異形に捕らわれてたから私の魔法で助けてあげたんだよ。」
さくらは頭に酸素が行き届いていないのか、いつもよりバカになっている。
みなとは疲れきったさくらを抱き締めた。
みなと「また、助けられたな。ありがとう。」
みなとはさくらを抱き締めたまま、辺りを見渡した。
みなと(さつきとしぐれは居ない。見られている気配もない。安全か。)
さくら「ねぇ、みなと。さつきちゃんと、しぐれちゃんがどこかに行ってしまったの。」
みなと「あぁ。探そう。」
さくらにかけられた声は優しかったが、戸の外に広がる暗闇に向けられた目付きは暗く冷たく鋭かった。
みなと(後悔させてやる)




