僕の君21
しぐれという偽名を捨て、正体を表しためぐみ。
記憶を取り戻したさつき。
さつきの闇魔法に呑まれたみなと。
その現場に現れたのまだ何も知らないさくらだった。
さくら「ねぇ…しぐれちゃん?」
さくらが、第一に思ったことは。
さくら「みなとが居ない…」
めぐみ「…」
さくら「どうして黙ってるの?」
めぐみ(クソ!このタイミングで!何て間の悪い!殺ってしまおうか。イヤ、相手は異界球を破壊するほどの実力者。敵うわけもない。)
緊張の沈黙が4秒ほど続いた時、さつきが子供のような声で言った
さつき「良かった!急に黒いのが棚の隙間から出てきてみなとが捕らわれて。今呼びに行こうしてたんだよ!早く助けてあげて」
さくら「え!?あ、そうなの!?早く出してあげなきゃ!ちょっとそっち側持って!あれ?…」
さくらが2人から目を離すと、そこには真っ暗な外と、チカチカと点滅する蛍光灯だけがあった。
さくら(とにかく!みなとを助けないと!これは多分異形に近い物だから、光で照らせば消えるはず。)
さくらは手を黒い膜のようなものに当てて光を出した。
………
なるみ「みと…なと…みなと。こんな夜にどうしたの?」
みなと「ナイフは?」
なるみ「なに言ってるの?」
みなとは困惑していた。
さっきまで、しぐれと殺しあっていて。闇に呑まれたと思って目をつむると、あの村に戻ってきた。そしてまた女になっている。
頭がおかしくなりそうだ。
みなとは、なるみの質問などお構い無しに自分の手を見て女の自分について問いただした。
みなと(君は何者なんだ?君は一体…俺?私?イヤ元男の女の自分にはしっくり来ない一人称だ。そうだな…強いて言うなら…)
みなと「僕…かな?」
優しい暗闇が周りを囲んでいる。この暗闇は元いた世界のとは違い、さらわれそうな闇ではなく、温かく包まれるようだ。
かといって、お節介じみていない。いつでも好きな時に拭える、そんな闇だ。
なるみ「何言ってんの?キモちわりぃっ。」
なるみの声がそんな心地いい闇をさいた。
みなと「はは。ていうか、光魔法使えたんだな。」
なるみが全くこの「夜」というものに感動していないことで、
ここでは、この「夜」が日常なのだと理解して思わず笑ってしまった。
なるみ「え、あぁこれはもっと上手くなって、お金稼いで。ばあちゃんに楽して欲しい為にやってるんだ。」
みなと「へぇー。」
なるみ「バカにしてるだろ?どうせお前には無理だって。周りのやつらみたいに。」
みなと「バカにしてないよ。お人好しのあいつみたいに、似てるなって思っただけ。しかし、夜はいいな。優しい暗闇は初めてだ。心地がいい。」
みなとは草が生い茂る大地に寝っ転がった。
みなと「ははっ。全く、面白いなぁ…」
なるみは不思議なタイミングで笑ったみなとの方を見て怖がった。
少しの時間、なるみはみなとを気持ち悪がっていたが、みなとの言葉に引っかかる所があったから警戒しながらも質問をした。
なるみ「なぁ、あんた。今、私に似たやつがいると言ったな。」
みなと「うんー?言ったよ」
みなとは何かに耽っているような物言いだ。
なるみ「そいつはどんな奴なんだ?魔法は使えるのか?使えるのらそいつに会わせてくれ!魔法を教えて欲しいんだ!」




