僕の君17
カラン
…
…
コップの氷が溶けて音がなった。
氷に映る顔はいつもの男前の顔だ。
グラスを掴んだ手からこぼれ落ちる滴を瞬きせずに見ていた。
みなと(な、何だ…今の映像は…)
さくら「あんた…大丈夫?」
みなと「何が?」
さくら「私が2回呼んでも、瞬きすらしないでいたことよ。」
みなと「あ、あぁ。すまない。ちょっと疲れてるのかもな。」
さくら「まぁ、いいや。それでどうする?私達これから。」
円形の切り株で出来たテーブルを囲って、4人は話している。
受付けから近い所で何かあったら直ぐに対応できそうだ。
みなと「なぁさくら。あの異形を倒した光は、お前の方から伸びてきたんだが、何か知らないか?」
みなとはさくらの目をしっかりと見て聞いた。だが、真剣な話しだと悟られないように声色は変えなかった。
さくら「うん?私あんたが、倒してたと思ってたけど違うの?」
さくらは首を傾げて、不思議そうな顔で質問した。
みなと(あれは一体何だったんだ?あの異質な異形を倒す何て。)
しぐれ「え!?倒されたのですか?中位の異形を。」
しぐれはみなとをキラキラとした目で尊敬の意思を伝えた。
みなと「い、いや俺じゃないよ。」
動揺したように慌ててみなとは否定した。
しぐれ「では、どなたが?…」
しぐれもまた首を傾げてみなとを不思議そうに見る。
その傾げた勢いで耳から艶やかな髪が細い首にかかった。
小さく、細い手で髪を耳にかけ直した。
しぐれ「では、お礼もしたいですし、その方を探すというのはどうでしょうか?」
誰に向かって言うのではなく、三人で作ったアットホームな雰囲気に、凛とした声で提案した。
「そうね。そうしましょ。お礼言わないと。(ついでに魔法教えてもらおっ。)」ニヤリ
みなとはいつもの右口角だけ上げた何かを企んでいる顔を見逃さない。
「お前何か悪巧みしてるな?」
「してない!魔法教えてもらおうと思っただけ!」
「まぁ、いいや。俺も賛成。他にも異形のこととか、大家のこととか、知ってるかもしれないからな。」
しぐれ「では、行ってらっしゃいませ。」
しぐれは何の躊躇もなく、そう言い、深々とお辞儀をした。
さくらとみなとは普段息が合うことなんてなかったが、この時だけは息があった。
さくら、みなと「えっ…」
でも普通に考えてしまえば全くもって、当たり前なことである。
彼女は受付けなのだ、当たり前のように話しに混ざっていたが、受付けなのだ。
みなと「そ、そうだよな。そりゃそうだ。」
だが、さくらは納得できない。
「受付け何てさ、あのロボットに任せてさ。私達の仲間になって、一緒に冒険しましょ!」
勢いよく切り株の椅子から立ってしぐれの細くて白い手を握った。




