僕の君16 私のあなた2
荷車の修理を終え、孫娘と二人暮らしだというお婆さんの家におじゃまする。
みなと「おじゃまします。」
床は畳で、屋根は凄く高い。
広くはないが、解放感がある。
孫娘「ただいまぁー!えっ誰!」
お婆さん「名前はな。あれ?なんじゃったかの?」
みなと「みなとです。」
お婆さん「あぁ、そうそう、みなとじゃ。」
孫娘「いやいや、そうじゃないでしょ。何者よあんた。」
みなと「お、落ち着いて、僕は不審者じゃないよ。」
孫娘「怪しい!ばあちゃん。こいつ怪しい!」
孫娘は杖のような棒をみなとに向けた。
お婆さん「こら、やめんか!お客さんに対して!ごめんね、みなとさんや。今日はゆっくりとしてくといいよ。」
孫娘「ばあちゃん!でも!」
お婆さん「なるみ!ばあちゃんに恥をかかせる気かい?」
なるみ「はーい…」
少し元気が無くなったのか、肩を落としている。
沢山の魚を網に入れてトボトボと台所に行って、お婆さんと料理を始めた。
みなとは気まずそうにお客さん専用の座布団に座っていた。
台所の方を横目でちらっと見ていると、なるみが魚を包丁で捌いていた。
魚が水にのって泳いでいるかのように滑らかな美しい包丁使いだ。
もじもじと座布団の上で正座をしているとお婆さんとなるみが来た。
なるみが大きな鍋を吊るすと、お婆さんが捌いた魚をボトボトと入れた。
火に薪をくべて魚が煮込みあがるのを待つ。
三人は鍋を囲んで座った。
鍋のグツグツという音が食卓と三人を包んでいる。
最初に口を開いたのは、お婆さんだった。
お婆さん「みなとさんや。」
みなと「はい!」
みなとは少し緊張してしまって声が裏返ってしまった。
お婆さん「何があったか知らないけど、あんたが良かったらいつまでもここに居ていいんだよ。」
どうやら、年の功には敵わないらしい。
みなと「ありがとうございます。でも、行かなきゃいけないんです。」(あれ?何で?どこに?)
みなとは言っていて自分でも不思議に思ったが、違和感はなかった。
みなと(理屈じゃ分かんないけど、直感ではわかってる。私は行かなくてはいけない。)
なるみ「あっそう!」
みなとは、なるみが少し嬉しそうにしたことが少し悲しかった。
ゆで上がった魚はコリコリとしていていい食感だ。
味も野菜や色々な種類の魚の味が染みていて美味しい。
なるみ「うーん!うまい!やっぱりお婆ちゃんの作る魚鍋はめっちゃ美味しいね。」
お婆さん「そうかい。慌てず食べるんだよ。」
なるみ「うん!」
なるみはガツガツと急いで食べている。
みなとも負けずと頬張っている。
…
夕飯をご馳走になり、お風呂まで入れてもらったみなとは、お客さん用の布団の中で一人考えごとをしていた。
みなと(ここはどこなんだ?なぜ、目的地が分かるんだ。)
寝返りをうち、ふと、外の方を見るとぼやぁと光がついたり消えたりしている。
何だと思い、外に出ると、なるみが手に力を入れて一生懸命光魔法の練習をしていた。




