僕の君14
さくら「まぁ、こう言ってるから、許してやって。」
さくらは頭を下げたみなとの頭を撫でながら、そう言った。
受付けの女の子「い、いえ。いえ。私も泣き虫で、すみませんでした。」
両方の手のひらを広げて前で素早く横に振った。
さくら「ところで。あなた、名前は何て言うの?」
またもや、前のめりになっている。
奥の壁まで追い詰められた女の子はワタワタと困っている。
顔を赤くして右に視線をそらしながらこう言った。
受付けの女の子「しぐれです。」
さくら「しぐれちゃん!可愛い名前ね!」
しぐれ「ありがとうございます…」
真っ赤な顔を見られないように、うつむきながらそう言った。
…
さつきは再び、掲示板に置いてあるロボットとにらめっこをしていた。
さつき「可愛くない!いや、味なのか…」
さつきは三人が話し込んでいることなど上の空で顎に手を当てて考えていた。
さくら、みなと、しぐれの三人は落ち着いた頃、再びお爺さんの話しをし始めた。
しぐれ「私、あの日は凄く体調が悪かったんです。そこにあのお爺さんが来て、少し店番をしといてあげるから、奥で休んでなさいと言ってくれたんです。今となって誤った判断だったと思いますが、あの時はそれどころじゃなく、正常な判断が出来ていませんでした。すみません。」
しぐれは二人に90度のお辞儀をした。
さくら「いや、いや。しょうがないよ!私だってそうしちゃうよ!ねぇ、みなと。」
さくらは慌ててしぐれが悪くないことを伝えた。
みなと「そ、そうだ!全部あのじじいが悪いんだ!しぐれさんは悪くない!」
しぐれ「すみません。ありがとうございます。」
みなと「何か出来すぎてないか?」
さくら「何っ。えぇそうね。」
さくらはみなとに「何が?」と聞こうと思ったがバカにされると思いギリギリのところで踏みとどまった。
しぐれ「そうですね。私が体調を悪くして、たまたま変わって入ったお爺さんがお二人に例の依頼を受けさせ、その後姿を消した。あまりに出来すぎてますね。」
みなと「あぁ、何が目的で俺達をはめたのかは知らないが、この落とし前はきっちりつけてもらう。」
さくら「そうね。もしかしたら、あんた死んでたかもしれないんだから。」
みなと「その通りだ。」
さくら「体半分異形に食べられてたんだから。」
みなと「確かに左半分だけ変な感触があったけど。そうだったのか。」
その時、異形に飲み込まれていた左目に見知らぬ映像が流れてきた。
空が青く、とてつもない1つの大きな光が世界を照らしている。




