僕の君13
さくらはどうやら女の子の泣く声を意識が無くても聞きのがさなかったようだ。
みなと「お、お前。大丈夫か?…」
さくらは眉をひそめて、目からは一切の光が出ていない。
みなとを見つめるその瞳は真っ黒だ。
さくら「あんた…また蹴られたいの?」
さくらの声色はいつもより半オクターブぐらい低い。
みなと「な、何がだよ。」
みなとはさくらが目を覚ました事で頭が一杯になっていた。
すぐ後ろで泣いている女の子ことなんて、まさに眼中にない。
みなと「良かった…良かった。俺はお前がもしかしたら目を覚まさないかもしれないと思ってたから…まぁ、いびきかいてたから、そんなこと無いだろうと思ってたけどな。」
心配がほどけるのと、目を覚ました嬉しさが混ざった。
みなとは涙を下まぶたに貯めて、笑った。
ところが、一方でさくらはみなとが女の子を泣かせたことが許せない。
今度は、ジャンプキックを食らわせようとみなとに向かって走り出した。
ところが、どっこい。
それと同時にみなとがさくらに向かって走り出した。
さくらは蹴るタイミングを逃した。
あっけに取られて、ただみなとに近づいた。
「良かった!ホントに良かった!」
強く抱き締められたさくらは、動揺した。
さくら「お、おう。まぁな。」
手が震えている。
さくら「泣いてるの?」
みなと「あはは…嬉しくて泣くやつがいるかよ。」
さくら「よしよし。」
さくらは頭を撫でたかったが、届かないのでかわりに背中をさすってやった。
みなと「泣いてねぇって…お人好しめ。」
さくら「うるさい!」
さつきが二人抱き合っている隣に立ってジッとその光景を見ていた。
さつき「よしよし」
さつきは二人を横から抱き締めて、両方の背中を両手を使ってさすった。
受付けの女の子「うっ…うっ…」
さくらの耳に再び女の子の声が飛び込んだ。
さくらはみなとをはね除けて、受付けの女の子を指差した。
さくら「あんた、まずは女の子に誤りなさいよ!」
みなとは急に正直になって真正面から謝った。
みなと「ごめんなさい!泣かせる気はなかったんだ。」
受付けの女の子
「いえ、今のは何だか二人を見てたら、もらい泣きですかね?しちゃって。」
女の子は黒い手袋で包んだ人差し指で目尻の涙を拭って笑って見せた。
みなとはさくらに振り向いて、許しをこうような笑みをうかべた。
さくら「いや、今のはっていってるじゃん。さっきのやつを謝りなさいよ。」腕を組んでそう言った。
みなとは再び女の子の前に立ち謝った。
みなと「申し訳ありませんでした。」
さくら「よし…」




