1人の少女の困りごと
夜空を見上げて空気をすう。
朝のあおぞらを見上げてため息をつく。
夜は好き。暗くてよく見えないから。
朝は嫌い。1日の始まりだし、色んなものが見えてしまう。
見たくないものも見えてしまう。
真っ暗なこの世界では誰しもが見たいと思うものだけ見て生きている。
私は夢で見た眩しくてあたたかい光が忘れられなくてそればかり探してる。
みなと「やぁ、あおい。お前空ばっかり見てるな。」
みなと。私のパートナー。彼氏でもなければ友達でもない。ただの人付き合いというものだ。
さくら「あんたはいつも、帽子被ってるわね。物好きね。」
みなと「かっこいいだろ。欲しがってもあげねぇよ。」
さくら「はいはい。欲しい欲しい。」
ふたりは歩きながらいつものように他愛もない会話をする。
仕事の前の準備体操だ。これがなければ、始まらない。
絶対に必要な会話ではないが、無くてはならないそんなものだ。
さくら「さぁ、今日も頑張るよ。」
みなと「頑張らないよ。ただ、やるだけだ。」
2人の仕事は魔法で生み出した光を街で売ること。
みなとの人当たりの良さで仕事を探して、あおいが魔法で光を作る。
さくら「あ、あそこ街灯が切れてる。私、ちょっと簡易魔法で応急処置してくるから、そこで待ってなさい。」
みなと「お人良し!」
さくら「うるさいなぁ。」
さくらは街灯にはしっていった。
みなとは車から街灯に両手を向けて魔法に集中するさくらの後ろ姿をぼんやりと見ていた。
さつき「ごめんください。ごめんください。あの!すみません!」
ぼんやりとしていたみなとを覚ました声は空耳ではなく。窓の下から聞こえていた。
みなと「どうしたの?お嬢ちゃん。」
さくら「よし!これでしばらく持つね。ワンちゃん。」
「ワン!」
さくら「よーしよし。あははくすぐったいよ。」
「ハッハッハッハッハ!」
さくら「じゃあね!ワンちゃん。元気でね!」
「ワン!」
さくらが車に戻るとみなとの前で小さい女の子が大きな声で泣いていた。
さくら「あんた!何やってんの!最低!」
みなと「待て待て待て!誤解だ!」
さくら「問答無用!どりゃー!」
みなと「な、なじゃー!」
さくら「ご、誤解だって。」
みなと「いーや、お前は俺をただのチャラ男だと思ってる」
さくら「ち、違うんだって。みなとはとっても素敵な人だよ。ねぇ、さつきちゃん。」
さつき「おねぇちゃんのドロップキックすごかった…」
さくら「あはは、ありかどう。さつきちゃん。」
2人はただ、泣き続ける女の子にとにかく温かいココアを車の事務所でご馳走することにした。