スティグマ 烙印のウンコぶっしゃー
日比野健司は人生で一度だけウンコを漏らしたことがった。
小学校の帰り道、もう少しで家にたどり着くというところでぎゅうぎゅうにガードした肛門から細長いウンコがひゅるひゅると出てきたのだ。肛門というのはやはり穴だ。どんなに強く締めても防ぎ切ることはできなかった。
健司はその日から、ウンコもらし、という烙印を押された罪人になったのだった。ウンコをもらしたことは誰にもばれてはいない。自分だけの秘密だ。しかし、自分を欺くことはできない。自分がウンコをもらしたという事実、記憶は消せない。罪の意識は社会的なものだ。パンツにウンコを漏らすことで、健司は自分をつねに見張っている看守の存在を理解した。
ある日、健司は学校の帰り道、猛烈な便意に襲われた。肛門をぎゅうぎゅうに締める。鋼鉄をもねじ切ってしまえるほどの強力な万力締めで対抗した。しかし、凶悪な魔物はゆっくりと直腸をこじ開けてくる。健司は、虚しく抗った。そんな時、ふと、ウンコを外に放ってしまえばいいのではないかという強い欲求に体が支配された。看守は罪人である自分を常に見張っているが、簡単に好きにはさせない。
健司は小走りになった。田んぼのあぜ道に駆け込む。田んぼの土手に四つん這いになって尻を田んぼに向けた。短パンをパンツごと下ろして、魔物を空高く開放する。
アガアアッ!、健司は叫ぶ。その瞬間、ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッツ。ものすごい音とともに魔物が一瞬空高く舞い、田んぼの中へと消え去った。
健司は眩暈がした。恍惚という感情を初めて知ったのだ。家の外でウンコをするということ。禁止に対する侵犯が烙印を消し、自分を解放してくれているような感覚だった。不思議だった。パンツにウンコをすることで自分が背負ったスティグマが徐々に解きほぐされていく。健司はおもわず射精した。