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魔法の椅子
忘れられた古城があった。
いつの時代なのかも分からぬそこに、一脚の椅子があった。
椅子は魔法が使えるのだが、あまりにも長い時間が経ってしまった為、どんな魔法が使えるのか自身でも忘れてしまった。
ある日、盗賊がやってきて椅子を見て、呪われている物だと言い放った。盗賊は呪われて影に消えてしまった。
またある時、これは金目の物だといった旅人は、部屋から財宝を発見し金持ちになった。
他にも色々な人間がやって来ては勝手な事を言って、勝手にその通りになっていった。
椅子が疲れ果てて飽き飽きしてきた頃、一匹の狐がやってきて椅子にすわって落ち着いた。そのまますっかり落ち着いて寝てしまった。随分と安らかだ。
椅子はやっと自身の魔法を思い出した。願いを叶える魔法だった。かつてあった国もそうして栄え、そして一言滅びを口にして無くなったのだった。
ただ、こうしてただの椅子になって、彼は満足だった。初めて自分らしくあったのだから。




