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山奥にて、てふてふと叩くものあり
山ん中で男は狐を見かけた。若いのと老いたのだ。
「肉が美味くて、毛皮が綺麗なのは若いのだが、老い先短いのを殺した方がええ」
勝手ながらそう判断して、音を立てて顔を出せばまるでかばうように、老いた狐が前に出た。
「すまぬ。これも生きる為じゃて」
ある月の綺麗な晩に、男の小屋を叩くものがあった。出てみれば一人の若い娘。こんな山奥に、と思いつつも男は快く泊めてやった。
娘は数日たっても出ていく気配が無い。道に迷ったという。男は今までと変わらず無駄には殺さず、そして殺した獣は墓を作ってやっていた。
ある夜に目が覚めると、娘がおらぬ。月明かりの中、小屋の裏手の墓で手を合わせていた。月光を浴びたその姿に尻尾と耳。
「もしやあん時の狐が仇討ちにきただか」
「いいえ、父を探しておりました。ですがやっと見つかった」
娘は静かに弔いに感謝を述べて、一声鳴くと山へと還った。




