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3 花咲き娘と騒ぎ



食堂に帰り、アリーサちゃんには危機管理能力がないとアルトさんに笑顔で叱られてから一週間が経った。


「·····でも私はそんなことになると思ってなかったんですよ?なのにそんなに怒らなくたっていいと思いません?」


現在、私は週に二度ある城への訪問中だ。

ついでにミユハさんにアルトさんの愚痴を聞いてもらっている。


「そうですね。でもお話を聞いてるとアリーサ様は愛されているんだな、と思いますよ」


優しい微笑みを向けられ、私はうぐっと言葉を詰まらせる。

·····いや、うん。それは、本当にありがたいと思ってるけどでも、だって、あの時のアルトさん超怖かったんだもん。


まだ不満そうにしている私にミユハさんは柔らかな微笑みを崩さずに「例えば」と言葉を続ける。


「逆の立場だったらいかがですか?アルト様がアリーサ様に黙って他の女性と二人きりで会っていたら。しかも見つけた時には抱き締められているんですよ?」


「·····それ、は嫌です、ね」



あの人は私と違って大層おモテになるからそういう事もあるのかもしれない。

けど想像しただけで凄くムカついてきた。


「そういうことです。だからアルト様をあまり責めないであげてくださいね」


「·····はい」



ミユハさんからありがたきご指導をいただいた私はムズムズする気持ちに悶えそうになりながらも頷いた。





◇◆◇



城から食堂に帰ってくると、何やらいつもと様子が違う。

違和感を覚えながらも「ただいま帰りました〜」と中に入ると、何故か店の中心に人だかりができていた。

·····なんだ?


何かあったのかと首を傾げていると、私に気づいたミャーシャさんが人だかりから抜けて近づいてきた。


「どうしたんですか、この人だかり」


「あのね、アリーサに会いたいって人が来てんのよ。今、その人に話を聞いてたとこ」


「私に会いたい人?」


「そう!しかもとんでもない色男だよ!あんな子とどこで知り合ったんだい?アリーサも罪な女だねぇ」


楽しそうに私の肩を叩くミャーシャさんだけれど、私からしてば未だに相手が誰なのかわかっていないため、不安だ。


私の知り合いにとんでもない色男なんていたっけ?


首を傾げていると、人だかりの中から声がした。


「あね、アリーサ、さん?」


·····あれ、聞き覚えのある声。


まさか、と一人の青年が頭に思い浮かぶと同時に人だかりが割れ、その中から銀髪の青年がでてきた。

私はその人物を見て、固まると共に納得するのだった。


·····うん。確かに義弟は、ユーリイは色男ですね。











ゆっくりと話をしようにも周りの人がいたんじゃゆっくり話が出来ないと言うことでミャーシャさんに許可をもらった私はユーリイを部屋に招き入れた。


取り敢えずミャーシャさんには後で説明するって言っちゃったけど·····。



あー、後で説明するからってどこからどう説明すれば良いんだか。


「波乱の予感だね」なんて言って私を見ていたミャーシャさんを思い出して頭を抱えたくなる。だってあの人、絶対に楽しんでるもん。



そんな私を先程からユーリイはじっと観察するように見ている。

正直まだまともに会話していないのでユーリイが何を思ってここにいるのかは分からない。


「·····えっと、ユーリイ」


「ご無事だったんですね」


「·····へ?」


取り敢えずなにから聞けばいいのか、と話を切り出す私にユーリイが呆然と言った感じで呟いた。


「いつでも、来て良いと言ってくださったから先日この食堂に一人で訪れたんです。でも姉上はいなくて·····。

しかも常連の方々が姉上が行方不明になっていると言っていて。それで、突然またあの時のように何も言わずに居なくなってしまったから、何かあったのかと。僕がまたなにかしてしまったのではないかと」


その瞳からポロリと一筋涙がおちた。


「え。ユ、ユーリイ?」



黙り込み、拳を握るユーリイをしばらく何も言えずに見ていた私だったけど、慌てて椅子から立ち上がりユーリイに歩みよる。



私も色々手一杯で連絡を取る時間すら無かったとはいえ、こんなに心配を掛けさせてしまったのは本当に申し訳ない。


「ユーリイ」


なんと声をかければ良いのか。

迷いながらも、私はユーリイと目線を合わせる。


「·····心配させてごめんね、でもありがとう」


恐る恐るユーリイの頭を撫でれば、彼は気持ちよさそうに目を細めた。


「まあ、でも行方不明だった件は既にあのミャーシャさんというご婦人からしっかりと叱られたようですし、姉上が無事ならそれで良いです」


うっ。


ユーリイの言葉に私の中の嫌な記憶が蘇る。

もう二度とミャーシャさんからお説教されないよう気をつけようと心から誓ったのをよく覚えている。

·····あれはマジで怖かった。


「·····それじゃあ、今度は食堂にご飯を食べるために来ますね」


席から立ち、帰る支度を始めるユーリイに私は「え」と声をこぼす。


「もう帰るの?」


「はい。もう少し居たかったのですが姉上が食堂に戻ってきたというのを噂で聞いて無理やり空き時間を作って来たので残念なことにこの後予定があるんです」


·····そ、そんなハードスケジュールな中わざわざ食堂に来てくれたのか。それはなんというか、申し訳ない。




「それじゃあ、また来ますね」


荷物を手に持ち、顔を綻ばせるユーリイに私も釣られて微笑む。


が、何故か突然「あ」と声を上げたユーリイは動きを止める。


「姉上、大切なことを忘れていました」


大切なこと?

少し言いづらそうに頬をかくユーリイに首を傾げる。


「·····なに?」


「近いうち、学園へ来ていただけませんか?」



「··········はい?」






お祖母様から教えてもらった言葉に『一難去ってまた一難』というものがあるけど、今の私の状況はまさにその言葉にピッタリなんじゃないかな、なんて現実逃避しながら私は思う。


シンプルに滅茶苦茶行きたくない、と。











まさかの食中毒にかかってしまいました·····。

地獄みたいな辛さを味わいました。皆様もお身体ご自愛下さい。


お読みいただきありがとうございました!



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