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3 花咲き令嬢と美男

朝から色々なものが削られた私はいつもより低いテンションで学園へと向かった。


なんか、色々と問題が増えた気がするなぁ。

溜息をつきそうになるのを我慢して私は一人、席につく。


前回も言った通り、私は周りからは冷たい人間だと思われやすいらしく、遠巻きに見られることが多いので、友達と言える人は一人もいない。

でも、私のように下手に権力を持つ人間はきっと一人でいた方が良いと思う。だから積極的に友達を作ろうとも思わない。

と言うか、クラスの中での私の立ち位置って多分、おっかない僻み女とかだろうから作りたくても作れないんだろうけど。悲しいこと言わせんなよ。


ただ現在、一番辛いのは誰かに相談が出来ないことだ。昔はお祖母様がよき相談相手であり、一番の理解者だったから尚更、現状が辛い。


まあ、仕方ない。自業自得だし。

諦めの言葉を心の中で呟くと、今日はリリアに何をしようか考えることに専念した。






「今日も今日とて殿方にチヤホヤされて護られる気分はどう?お姫様」

プルプルと震える目の前の少女に周りに聞こえるように声を張り上げて威圧する。

はい、皆さんご存知。この方こそがリリア・カサラン男爵令嬢です。

ただ今、リリア虐めよう計画の真っ最中。


尚、近くには数名のハーレム要員、もといイケメン達がいる模様。周りには野次馬も沢山いるし、私にとっては好条件だ。


「わっ、私がローズ様に何かしましたか!!」

おっと、珍しい。いつもなら涙目になりながら男性達の後ろに隠れてるだけなのに今日は何故か反論してきた。

でも、これは不味いかもしれないな。私に反論するだけの度胸がついてしまったら、この先の虐めよう計画が上手くいかなくなるかもしれない。


「別に。何かしたというよりは」

そこで私は言葉を区切って、満面の笑みを浮かべた。

「存在が不愉快なだけ。何もしなくてもイラつくのよ、貴女」

「ひ、ひっ·····」


ごめんね、リリア。貴女にはもう少し辛い思いをしてもらわないといけないの。

普段、学園では滅多に表情筋を動かすことの無い私が微笑んだのがそんなに怖かったのか、リリアはすぐにまた男性の背中に隠れる。

そんな彼女の様子を見た男性諸君は私を親の仇かなにかと言うくらい睨みつけてきた。

「あらあらあら。皆様、そんな反抗的な目を私に向けても良いと思ってるのかしら?あまりに私を怒らせないほうがいいわよ。私、潰しちゃうかもしれないから。一族ごと」

家の権力だけどね〜。


この前でてきた小説で悪役が言っていたセリフを少しオマージュして使ってみる。


こうかは ばつぐんだ!


流石に家族を巻き込みたくはないのだろう。男性陣は歯ぎしりしそうな表情で私を睨みつけている。

「ふふ、哀れな方達ですのね。可哀想に。精々、下の者同士そこで群がってればいいわ」

·····今日はこれくらいでいいかな。早く家に帰って色々整理したいし。


「あんまり一緒にいると私にも馬鹿が移ってしまうから今日はこれくらいにしておいて差し上げますわ」

軽く挨拶をすると、私は早々にその場から立ち去った。


周りに誰もいなくなったことを確認すると私はほっと息をついた。

はぁぁ、悪口言うのって割と語彙力必要なのよね。

最近はハイペースで言うからたまに同じフレーズ使い回しちゃってるし、悪口のレパートリー増やさないと。

あとは、家に帰ってあの花の観察と、今後の計画と·····。

帰ってやらなければいけないことを考えていると、ドンッと何かに真正面からぶつかった。

ぐぇ、鼻が潰れた。

「失礼、大丈夫でしたか?」

頭上から人の声がしたので私は潰れた鼻を押さえながら上を向いた。


そこに立っていたのは、えらく顔立ちの整った男性だった。

オレンジとブラウンの中間のような色をした髪は後ろに軽く流されていて、星空を思わせる瞳とよく合っている。

弟や婚約者でそれなりに美形を見慣れている私でも思わず見とれてしまう不思議な雰囲気の人だ。

この学園はイケメンが集まるっていうジンクスでもあるのか。

平凡顔な私は思わず真顔でそんなことを考えてしまった。


とはいえ、この人はどうやら学園の生徒ではなさそうだ。

恐らく歳は二十代前半。均整のとれた身体はひょろひょろとしたもやしっ子ばかりのこの学園では珍しく、騎士団の制服を着てることからしても、この人は国に属する騎士団で間違いないだろう。

なんで、騎士がこんな所に·····?


気にはなるものの、先に騎士の問いかけに答えなければと私は「ええ、大丈夫です」と返す。

「少し考え事をしていて前方不注意でした」

「気にしないでください、私の方こそ失礼いたしましたわ。それではごきげんよう」

ぺこりと小さく頭を下げてイケメンの前から去る。


結局なんで騎士がこの学園にいたのかは分からずじまいだったけれど、あの人かっこよかったなぁ。

歩き出してからしみじみと思う。


もしかして、私が知らないだけだ有名人だったりするのかしら。



なんて、先程の騎士様に考えを巡らせていると、なにやら頭の上だ違和感を感じた。

ん?なんか、くすぐったい·····。


ポンッ!!


「·····へ?」

頭上で謎の音がした。

咄嗟に頭の上に手をやると、モサッという触ったことのある感触がして私は頬を引き攣らせる。


い、嫌な予感·····。


モサモサ、と頭の上を触り続けて確信した。


私また頭の上に花が咲いてる·····!


私は周りを素早く見渡して周囲に人がいないことを確認した。

よし!さっきの騎士もいなくなってる。誰もいないな!

取り敢えず、ほっと安堵の息をついた。


こんな状況、誰かに見られたら学園での私のあだ名が僻み女から花咲きババアになってしまう!!


ギュッ、と頭の上で咲いている花を握ると私は力を入れてそれを真上に引っ張った。


ブチッ。


鈍い音がして頭から花が抜けた。

相変わらず、頭に痛みはない。


今度の花は黄色で割と小ぶりな花だ。

うん。可愛いよ、この花自体はすごく可愛い。

でもさ、咲く場所おかしくない?咲いてくる場所間違えてない?

多分確実に間違えてるよね。



私はしばらく死んだ目でその花を観察していた。


なんでだ、なにがどうなったらさっきまで美少女を虐めてた氷姫(笑)の頭の上に花が咲くんだ。私は頭の上に種を蒔いた覚えも水を与えた覚えもないぞ。何だこの異常体質。


今すぐ誰かに泣きつきたくなる気持ちを必死に抑えて、私は顔を上げる。

とりあえず今日は疲れた。早く部屋に戻って安心したい。もう、やだ。おうちかえるぅ·····。


大きなため息をつくと、私はなんとか重い足を引き摺って学園を出た。














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