あの、私だけ感情コマンドでしか話せないんですけど。
皆様、私の名前は「百雪布冬」と申します。所謂、転生者という存在です。得意なことは『感情コマンドでしか話せないことです』。いや、冗談や嘘偽りでは無くですね。本当に自分の(感情コマンドを使っていないと)意思では喋る事が出来ないんですよ。喋っている途中では「一時停止」の様な空間を作り出し、コマンド選択を強いてくるんです。
ほら、赤ちゃんの頃からの友である「的場夕香」も停止っています。独り言を考えている間に話の内容を忘れてしまいました。そんな困ったときは閲覧から「友」のコマンドを選択しておくと大抵の出来事は回避することが出来ます。
「やっぱり、そうだよねー!ほら、布冬も見てよ!」
うん。白いシャツを身に付けたゴリラと一緒に買い物をしている若奥様の動画を見せられている。しかし、若奥様から異様な気配を感じるのは、何故だろうか?よく見るとヘンテコな波動を放っているような気がする。──きっと気の所為だろう。そうに決まっている。そうでなければ若奥様の背中に化け物なんか見えたりしない。いや、でも、転生してる訳だから。そういう生物が居ても可笑しくは無いのか?
「百雪、図書委員の仕事に行くぞ」
今、私に話し掛けてきた男の子は「右原正也」。金色に染めた髪と不良みたいな服装が特徴的な目付きの鋭い同級生だ。閲覧から「友」のコマンドを選択しながら近寄ると嬉しそうな表情を一瞬だけ見せてくれるワンコ系ヤンキーだったりする。
◆◆◆◆
私は今日という厄日を忘れることは無いだろう。
【右原正也に告白する】と答える。
【校長先生に告白する】と叫ぶ。
さあ、どっちにする?
こんな感情コマンドが出てきた。コマンドですらない、これは【選択】ではないか。そんな事を思いつつ、一時停止した世界の中で二択の【選択】に迷う。いや、校長先生への告白は選ばないよ?あんなお爺ちゃんを選んだら大変な事になるよ、学校とかPTAとか役員さんとか。右原君は、友達としては好きなんだけど。異性とは見れないんだよねぇ。寧ろ、私みたいな変人(?)の告白を承諾するとは思えない。困るんだよねぇ、私の思い通りになら無いものは。
「その、なんだ。実を言うと。俺、お前のこと好きなんだよ。俺と死ぬまで付き合ってくれねぇか?」
おい。ちょっと待ってくれ。いきなり、選択権限を奪われた上にヤンデレみたいな言葉を聞いたような気がするんだけど。嘘だね?ドッキリとかだよね?
【私も右原君が好きです】と恥ずかしそうに答える。
【ごめんなさいする】と悲しそうに答える。
さあ、どっちにする?
もう、止めてください。私のライフゲージが消滅しちゃうから、ゲーム・オーバーになっちゃうから。
はじめての短編小説を書いてみました。続きはしません。




