第5話 ハローワーク行ってこい!
目が覚めたのは場所は…もはや説明する必要もないだろう。そして、目の間にはゲスい笑顔のハーデスがいた。
「あれw魔王様、どうしました?最近死にまくってるはずなのに私と顔を合わせてる数が少ないですねえwコソコソ逃げたって無駄ですよ?この『蘇生者名簿』に全部書いてあるので。無駄ですよwwwwwwwwww」
おい、その名簿記名式じゃなかったのかよ
「記名用と自動記録、どっちもあるのでwwwwwwwwwwwwww」
心を読まれた。否、そんな事はどうでもいい。一刻も早く向こうに戻ってあの幼女に一矢報いなければ!フライパンに撲殺された魔王などという汚名を晴らさずにはおけない!
「まwさwかw幼女にフライパンで撲殺されたなんてwwwww他にも色々書いてありますねえーなになに?『てれびの漏電で感電死』?『いんふるえんざに罹って病死?』情けなすぎるwwwww魔王様、悪いことは言わないんで引退オススメしますwwwwwwwwwww」
「俺だって…」
「ん???なんとおっしゃったんですか?すいません、笑い声が煩くて聞こえませんでした。あ、私のせいかwwwwwwwwwwwww」
「俺だって!頑張ってるのに!なんであの世界に手も足もでない!?おかしいだろ!チートだチート!もう、やってられるか!!!」
魔王の体が怒りからか急速に赤く染まっていく。赤から紅へ、紅から緋へ。魔力の暴走と共にエネルギーがそこら中へ満ちていくのがみてとれる。
そして、
ちゅどーん☆
情けない音とともに魔王は爆発した。俗に言う憤死というやつだ。そばにいるハーデスも仲良く巻き込まれた。この事件は後に魔王軍初の身内リスキル事件として魔族学校の教科書に載ることになる。
再び魔王は目を覚ますと急いで転移魔法で地球に向かった。フライパンの幼女に撲殺されてから何かあったようだが、何も憶えていない。しかし、ハーデスに会う前に逃げろと心の声が聞こえた気がした。
ーーーーーーー地球、魔王城ーーーーーー
魔王が戻ると、幼女が屋根の修理をしていた。
「あ、おにーさんお帰りなさい。エクスカリバーさんももうお仕置きは終わったから許すって言ってます。とりあえず、屋根の修理手伝って下さいな!」
屋根の修理をしろと言われた魔王などどこにいるのだろう。しかし悪いのは自分だ。はらわた煮えくり返っていたような気がしないでもないが、ここで逆ギレするのはあまりに大人気ない。
「わかった、俺に任せとけ」
「ありがとうです、おにーさん!」
「ああ…。それと、その、家こわちゃってごめんな?」
「それはもういいです。でも、直すのにお金かかっちゃったし、ここに住むなら家賃も払ってほしいです!」
「家賃…?ああ、宿代みたいなもんか?」
「?おにーさん、家賃知らないの?」
まずい、常識的なものを知らないと口走ってしまったようだ。どうにか言いくるめようと考える。
ここで助け舟を出したのはいつのまにかここに来ていた勇者だった。
「そのおにーさん、こう見えて外国人だから難しい日本語わかんないっす。許してやってほしいっす。そんで、家賃ってのはこの部屋を貸す代金っす。月10万、頑張って払わないとエクスカリバーさんに切り刻まれるっす…。」
「ヒトミさん、ありがとうです!ヒトミさんの言う通り、一ヶ月10万円と屋根の修理代別で5万円、お願いします!」
参った。この世界のお金については詳しくないが、ヒトミの少女漫画1冊が500円と聞いた。つまり、15万円だと300冊買えることになる。ヒトミ曰く「500円でもJKにとっては大金っす!」らしいので15万円とは途方もつかない金額だ。当然俺は1円も持ってない。
険しい顔で答える。
「俺1円も持ってないんだが…。」
「それは困ります!家賃はちゃんと納めて下さい!…でも、本当にお金ないなら、お仕事見つかるまではメイが貸してあげます!本当にお金ないみたいなんで、無利子無担保にしてあげます!特別です!」
「お、おう…。」
「さあ、そうと決まったら早速就職活動です!ハローワーク行ってきて下さい!」
「待つっす、そのおにーさん不法入国者に近いんでハローワークなんか行ったら仕事見つかる前に刑務所に就職しちゃうっす!」
「大丈夫です!そこはおにーさんが魔力を使った暗示とかでなんとかなるはずです!」
確かに俺はこの世界において住所も名前も電話番号も持ち合わせていない。人間に捕まるわけがない!俺は世界を統一した魔王だぞ!…と、言いたいとこだが、そんな自信はもう消し飛んだ。何も考えずに『はろーわーく』とやらに行ったら最後、一瞬で捕まってしまうだろう。俗に言う臭い飯を食いたくはない。と、なるとやはり魔力を使って現地の人間であると思い込ませ…ん?
魔力?
こいつ、いまそう言わなかったか?
最後までお読みいただき、ありがとうございます。評価、感想等もよろしくお願いします。
結局あんまり話し進まねえ…魔王様死にすぎなんだよ。
???「あれw?呼びましたwww?」