第3話 雨漏り魔王城
駄天使はギャーギャーうるさかったが、それでも何だかんだでついてくることになった。
忠誠心の方はやや不安があるものの、実力は申し分ない。ほとんど未開の地に等しい異世界『地球』へ向かうのにやはり心強い存在となるだろう。…バカでなければさらにありがたいのだが。
-----地球 勇者宅の隣の部屋-----
前回は来て早々『いんふるえんざ』にかかってしまったので今回はそのようなことがないようにしっかりと手洗いうがいをして部屋に上がる。
ルシフェルの奴にもそうするように勧めるが『なぜ手洗いうがいが必要なのか』を考え込んでしまった。『いんふるえんざ』にかからないためだろ、人の話ぐらい聞け。
「さて…これからどうするかな」
「どうって、お前目的もなくここに来たのかよ。バカじゃねえの?」
こいつにバカ呼ばわりされるのは物凄く腹立たしいが言い争っても何も始まらない。俺は少し大人になる事ににする。
そういえばこの世界に来た目的も話していなかった。
「いや、目的はあるんだよ?この世界のお宝を頂戴するっていう。でもまずは準備をしないと。」
「はあ?正面から堂々といけよ。魔王なんだから人間相手に準備もクソもあるかよ!」
「俺も前に来た時はそうしたさ。一瞬で『さぶましんがん』とかいうやつにボロ雑巾にされたけどな」
「弱っw魔王『様』弱っwwwwwwwwww」
どっかのクソ司祭を思い出したがここで言い争っても仕方ない。俺はもっと大人になることにする。
「とにかく!お前はこの世界の人間の武器の情報を集めろ!幸いにもこの部屋には人間たちの動向をまとめた『てれび』がそこにある。お前はそれをみて解析を進めてくれ。」
「はあ?なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ。俺は自分の探究心のみに基づいて行動する!」
ここで言い争っても仕方ないのだ。俺はさらに大人になることにする。
「ま、まあそうかもしれないけど、未知の世界の道具だぞ。なんか成果出せば褒美も出してやる。ここは頼まれてくれないか?な?」
「しかたねーな…」
よかった。大人になった甲斐があった。武器の解析は駄天使に任せて俺はこれからのことを考えることにする。
--------数時間後--------
今後の計画は決まった。まずはここを拠点に勢力を拡大することにする。その後でこちらもこの世界の武器で正面から対抗するか、少数精鋭で潜り込んで直接頂くプランを考えた。どちらにせよまだまだ情報が足りないけど。
駄天使の方はどうだろうか。考察自体は全く期待していないが武器自体を見ればその仕組みはわかるはずだ。なんとか武器を見つけていてほしいものである。
「どうだ、何か分かったか?」
「おう、魔王よちょうどいいところに来たな!聞いて驚け!『今夜は雨が降るぞ!』」
「…………………………………………………は?」
「あまりの驚きのあまり声を漏らすこともままならないようだな!この俺が集めた情報は役にたつだろう!向こうの世界ではまずわからないことだからな!やっぱり俺が付いて来てよガフッ!?」
「コロス」
「ああ!?どうしたんだお前!嫉妬のあまりトチ狂ったか!?言っとくけど、先に手を出したのはお前だからな!どうなっても知らないぞ!…いや、まてよ。何故魔王は怒ってるんだ?」
変な考え事を始めたクソポンコツ駄目天使をボコボコにする。もう付き合いきれん。大人になったとかどうでもいい。許さん。
ヘルフレイム++、ダイヤモンドダスト++、サンダーブレード++、ダイダロス++、ダークマター++…思いつく限りの最上級魔法を部屋を壊さないようにぶっ放す。
ひとしきり打ち終わった後には駄天使だった『何か』が残るのみだった。あいつもハーデスにしこたまバカにされるといい。いい気味だ。
その時、ポツ、と俺の頰を雫が濡らす。雨が降り始めたらしい。上を見上げると天井に大きな穴が空いていた。気を遣っていたはずだが、制御しきれていなかったようだ。
『夕方から夜にかけてところによって非常に激しい雨が降るでしょう。お出かけの際は傘をお忘れなく』
『てれび』がついている。消し忘れたらしい。消そうと思って手を伸ばした時だった。
ザアアアアアッ!と雨足が強くなる。そして俺の指が『てれび』に触れる。
「あばばばばばばばばばばばばばばばっ!」
濡れた家電は漏電により凶器と化す。そして魔王はそのことを知らなかった。
異世界を統一した魔王はだが、文明の利器の危険事項の前に為すすべなどない。彼は三度目の死を遂げたのであった。
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