1月9日(金)
絵を描いた。水っぽくて、少し色が違う青を、綺麗に一直線に重ねていく。ていねいに。すんだ青空を描いて行く。
「アキ、見て。綺麗に描けたの。自信作。」
「まぁ、さすがアオズミ。私には、とても描けないわ」
にこりと笑って風で下がった髪を耳にかける。すると、白くて綺麗な肌がよりいっそう綺麗にうつる。
空羽明嬉。私と同じ中学1年生で、白い肌に、切れ長の目。口はプルンとしていて、ほんのりと赤い。一言で言えば、綺麗だろう。
たぶん。いや、絶対に。街中をこんな美少女が歩いていたら思わず目で追ってしまう。というか、一目惚れしてしまうかもしれない。
「アオズミ、もっと描いてくれないかしら?」
「うん、もちろん。今度は動物でも描いてみようかな」
貝川青図水。男のような名前だが、りっぱな女である。
だが、小さい頃から男友達が多くて、女子の友達といえば、アキぐらいだ。
耳下くらいの長さで、ちょっとクセがある髪。うす紅色の口。そして、不思議な事が1つ。
アオズミの瞳の色は、生まれつき、青と赤なのだ。左目は二重で、すんだ空の色をしている。右目は、二重で、真っ赤なりんごの色をしている。
と、ある事を思い出した。
「そうだ!」
ごそごそごそごそ。かちゃかちゃ、トントン。カバンの中からは、色々な音が出てくる。
やっと見つけた黒いスニーカーのノートを取り出して、気持ちが上がってくるのがわかる。
「ねぇ、アキ、一緒に交換ノートやらない?」
アキの顔が、パアッと明るくなるのがわかった。白い肌だから分かりやすい。
「うん!」
「じゃあ、私から書いてくるよ」
オレンジと青のごちゃ混ぜ色のパーカーを着て、アキに手を振った。
彼女を楽しませてあげたい。
彼女をもっと笑わせたい。
一日をたくさんの幸せであふれさせてあげたい。
全部、私のわがままだ。
彼女は、あと、356日しか生きられない。
外に出ることも出来ない。ただ、人が来るのを待つしかない。
「人はいつか、死んでしまうの。私はそれが早いだけよ」
アキは、以前、そう言っていた。その声を聞いたあと、変な絵しか描けなくなった。
例えば、バナナを描いたつもりが、なすびになってしまうとか、風船が、レモンになるとか、とにかく大変だった。だから、もう、あんな事言わせないように頑張ろうと思ったんだ。
その夜、今日あった事を書いた。
1月9日(金)
今日、アキに見せた通り青空を描いた。
少し時間がかかったけど、達成感がすごかった。
今度は、どんな絵を描こうかな♪
☀︎アキの絵
☀︎夕日の絵
☀︎鯉の絵
リクエストよろしく!
そのあと、スペースが空いたから、ピースをしている女の子を描いた。
かわいく色を塗ったりして。
寝不足になりそうで心配になる。
そんな夜。