不思議な世界
ここはどこー…?
凛は気がついたら知らない地にいた。辺りを見回すと目の前に湖があり花や草木が生い茂ってとても静かな場所だった。凛の後ろにはガラス張りの素敵な小屋がある。小屋の後ろは森林のようだ。
「ここは一体…」
そう呟いた時にスッと風が吹き抜け湖の方から甘い匂いがした。湖を覗いてみると湖の中には綺麗な花々が咲いておりその甘い香りはこの花の蜜の香りだとすぐにわかった。
凛はスッと立ち上がりその蜜の香りをもっと嗅ぎたい衝動に駆られた。
(湖に入りたい…)
そう思い足先を湖につけた瞬間だった
「まだだよ。」
後ろから声がして凛はハッとして振り返った。そこには自分よりも少し3つ4つくらい年上だろう男性が立っていた。白いシャツに白いパンツを履いて肌も透き通るように白く栗色の髪の毛でとても優しそうな男性だった。
男性は微笑みながら近づいてきた。不思議と怖い感じはない。
「凛、君はまだ行くべきではない。まだなんだ。」
男性はそう言って凛の腕を取りガラス張りの小屋の方へと誘導された。
ガラス張りの小屋に近づいてハッとした。中がまるで見えないのだ。男性はスタスタ歩いて行くと扉の前に立ち扉を開けた。誘導されるままに中に入ると中は思ったよりも広く木製のダイニングテーブルと可愛らしい椅子が置いてあり奥にはグランドピアノがある。
男性は腕を離し椅子をひいて
「ここに座って」
と言葉にした。不思議とその男性に言われるがままに凛は椅子に座った。
(素敵で落ち着く場所だな…ここはどこなんだろう…)
辺りをキョロキョロと見回していると男性はその凛の様子をみてクスリと笑った。
それに気付き凛は男性に向き直り口を開いた。
「あの…ここはどこなんですか?」
男性は一瞬目を見開いたがすぐに表情を戻した。凛は言葉を続けた。
「それに私の名前…なんでご存知なんですか?私どこかでお会いしましたっけ…?」
男性はフッと微笑むと
「凛は僕には会ったことはないよ。」
とだけ答えた。
自分がなぜここに居るのかどうやってここまで来たか当然覚えてもいない。不思議に思いながらもなぜか凛にはそれがどうでもいいようなことに思えてすぐに考えるのをやめた。
「あなた…名前は?」
気づくと凛は男性に名前を尋ねていた。
「僕の名前はせなだよ。凛…ピアノを一緒に弾かないかい?君のピアノを僕に聞かせておくれ」
(せな…聞き覚えのある名前だけれど…誰だったか思い出せない…どこかで会ったことある人かな…どこか懐かしい感じがするのだけれど…)
凛がせなの顔をぼーっと見つめていると、せなはまたフッと笑った。せなは立ち上がり手を差し伸べた。
「さあ、君のピアノを聴かせてよ。」