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昔の拙作。

婚約破棄よりプリンが食べたい

作者: たんぽぽ

「ルーニア・ラン・ファーレット。俺は貴様との婚約を破棄する。そして、エリー・マウサ・キリーシャを新たな婚約者とする。」


「……ひあ?」


あわわ。変な声出ちゃいました。ビックリして、つい……なのです。



「ふっ。驚いているようだな、ルーニア。貴様がエリー嬢へ行った数々の仕打ち、俺が知らないとでも思ったか?」


ピシッ!っと決められたポーズがヤバいです。あ、なんか滅茶苦茶カッコいいです。ヒーロー!って感じです!久しぶりに萌えキュンしそうです。


「ルーニア様、貴女は悪役ですって何度も言いましたよね?萌えるなら二次元相手にしてください。」


小声で注意してくるタシィの言葉で、少し萌え熱が冷めました。

そうです。今は何か、『あくやくれいじょう こんやくはき』とやらのイベント中みたいです。静かに見ていなければ、周りの迷惑になってしまいます……。



「何、今更取り繕うとも無駄だ。……そうだな。一つずつ貴様の悪事を暴いていこう。

 この前、事故に見せかけてエリー嬢を階段から突き落としたのは貴様だろう?証言したのは他でもない、エリー嬢自身だ。何か弁明はあるか?」


……………………ハッ!私は傍観者ではありませんでした!

えぇと何ですか?階段ですか?


うーん?と、私は記憶を探ります。



「忘れたとでも言う気か?そんな事は許されない。」


うーん?


「……あ、思い出しました!この前、エリーさんが何やら階段で珍妙な躍りをしていた時のことですね。あの時は本当にごめんなさい。大丈夫でしたか?」


あれは本当にビックリでしたぁ。カニさんみたいな格好のまま、左右にピョンピョンしていたのです。きっと本人は真面目だったのでしょうけど、私は、見ていて吹き出してしまいました。それにビックリしてしまったのでしょう。エリーさんはステン、コロンとなってしまいました。5段ほどの小さな階段だったので怪我も無く無事でしたが……。


「あ、いえ……その……。」


――の横でもじもじするエリーさん、可愛いです。周りのゴテゴテさん達と違って、シンプルなバニラアイスクリームみたいでほんわかします。

ってあれ?エリーさんの隣にいる男性の名前、何でしたっけ。忘れてしまいました。横文字の名前ってややこしいです。



「馬鹿を言うな。事実、エリー嬢以外の人間も、貴様がエリー嬢を突き落とした瞬間を見ているのだぞ!」


へぇ。そうなのですか。


「その方達は最近、眼科には行かれたのでしょうか?」


「は?」


口ポカーンしていても、格好良いナンチャラさんは格好良いままなのですね。


「あ、違うかな。精神科かな?」


最初は目の病気かもしれないと思いましたが、心の病気で幻覚を見てしまっている可能性もありますよね。それなら精神科かなー?と。


「どちらにしろ、彼らには見えてはいけないものが見えているのではないですか?何かの病気でなければ良いのですが……。心配ですね。」


……あれ?今、何聞かれていたっけ?

確か、あの人の周りには幻覚を見ている方が大勢いて困っているとかなんとか?



「ご、ごまかすな!貴様はエリー嬢を二階の階段から突き落としたのだろう?」


へ?


「いつの話でしょう?」


「とぼけるな!貴様は、貴様は!」



何を怒っているのでしょう?よく分かりません。人間って難しいです。



「そ、それにだな。貴様、エリー嬢の私物を床にばらまき、粉々になるまで踏みつけたらしいな。」


んん。何か必死です?


「うーん?……あ、エリーさんの落とした消しゴムを誤って踏んでしまった時の事ですね。あの時は本当にごめんなさい。完全に私の不注意です。新しい消しゴムはお気に召しませんでしたか?」


「あ、いえ、大丈夫です……。」


エリーさんが消しゴムを落としてしまった所に、私が通りかかってそれを踏んでしまったのです。その所為で可愛い消しゴムパンダさんの首が裂けてしまいました。

同じ消しゴムは見付からなかったので、代わりに同じメーカー同じ種類のウサギさんの消しゴムにしたのですが……。本当にパンダじゃなくて大丈夫なのでしょうか。



「ほ、他にもあるぞ!貴様エリー嬢に、キンキンに冷えた冷たい水を頭からぶっ掛けたそうじゃないか。」


「あわわわ。あの時は本当にごめんなさい。水やりのホースに足を絡ませてしまって……。」


お花が好きで、学校の花壇に水やりをしてみたのですが、いつの間にか両足がホースでグルグルになっていたのです。

あの時は本当、タシィに呆れられました。

『どうやったらこんな結び方になるんですか!』って。


「あ、いえ。ルーニア様の方がグッショリ濡れていましたし……。私はほんの少しかかっただけなので。」


「ふん!嫌がらせをしようとして自爆か。自業自得だな。」


あ、ドヤ顔も格好良いですね。イケメンサイコーです。



「さて、これは決定的だぞ?貴様、エリー嬢の根の葉もない悪評を吹聴し回っていたというではないか。その時の音声を録音したものがここにある。これで貴様は言い逃れ出来まい。」



ナンチャラさんが指示し、音声が流れ始めました。何でしょうか。ドキドキです。



『……そういえば、エリーさんって可愛らしい方だと思うのです。ソヨソヨ~っとしていてバニラアイスクリームみたいです。あ、アイスクリーム食べたくなってきました。

んー!バニラも良いですが、ストロベリーも捨てがたいですよね!あ、バニラアイスクリームに熱々パンケーキを合わせるのも良いかもしれません。んんー!想像したら食べたくなってきましたぁ。……』



「うー。うー。やめて。聞かないでください。うー。」


私は耳を押さえて踞ります。恥ずかしいですぅー。


「バニラアイスクリームとは、『素朴』と言いたいのですか?それならば今の録音は、『地味で目立たない泥塗れの田舎娘が、何王子の隣にしれっと立ってんだ?ごるぁ』という訳し方で良いですか?」


「良くないですぅー!どうやったらそんな訳し方になるんですかぁー!」


タシィの意地悪です。むー!なのです。



「ふっ。貴様はようやく、自身の悪事を認めた様だな。ワッハッハ!!」


名も知らぬイケメンが笑っています。……んー?あれ?


「ねぇ、タシィ。王子って誰?」


さっき、エリーさんに『何しれっと王子の隣に立ってんだ?』って言っていた様な?



「なっ……。」


「顔はマシなのですが、コミュニケーション能力がルーニア様と同等に最悪レベルの、目の前いるあの馬鹿が第二王子の……あぁ、名前は忘れました。『ド腐れオツム』とか、なんかそんな名前じゃなかったですか?」



「じゃあ、ドッグさんですね!」


あれ?これだと犬ですか? まぁ良いですよね。ペットみたいで可愛いです。



「あれ?それでドッグさんが私に何の用でしたっけ。」


んー。忘れてしまいました。


「俺の名前はドッグなどではない!ド――」


コンコン。



「お取り込み中失礼します。」


そう言って入って来たのはモコ様。相変わらずのイケメンです。


「ルーニア嬢。約束の時間を過ぎているにも関わらず、貴女様が現れないのでお迎えにあがりました。」


わー!本当です。過ぎちゃってます。


「因みに、今日はプリンをご用意しています。」


「わ!プリン♪」


やったぁ~!です!プリンです。今日のおやつはプリンですぅ〜♪


「あ、エリーさんも一緒に食べますか?プリン。」


「え、でも……。」


「数が足りなければタシィの分を食べれば良いのです。一緒に食べましょう!プリン♪」


「ルーニア様。私のプリンは私のものです。泥塗れ田舎娘になんかあげません。」


「あの……。えっと……。」


「多めに用意しましたので、ご心配なさらないでください。数は十分あります。」


「わーい!いっぱい食べれる!」


プリンいっぱいです♪



「では、ルーニア嬢。こちらへどうぞ。」



「ちょっと待てい!!」


んん?……プリンの邪魔するのは だ・ぁ・れ ?



「ド腐れオツム、居たのか。何の用だ? 因みに、てめぇのプリンは無い。」


モコ様の鋭い視線が格好良いです。オーラがビシビシ来てます!惚れ直しますぅ。


「お、お前、ルーニアとどういう仲だ?」


ドッグさんはモコ様に怯えているようです?モコ様、すっごく優しいのに。



「貴様に言うくらいなら野良犬の糞を食った方がマシだが、知らずにこうやって他人の女と長時間過ごしやがるのだから仕方ない。 ……俺の未来の嫁だ。」


あ、格好良いです。頬が緩んじゃうのです。エヘヘ♪


「は?嫁?……しかし、ルーニアは俺の婚約者で?」


ドッグさんの動きが止まりました。ほぇ?ってしてます。

……それより、婚約者って何の事でしょう?



「それは私から説明しましょう。」


タシィが前に出ました。


「元々ルーニア様はド腐れオツムの婚約者になる予定でした。しかし未来を見通す占い師によれば、ド腐れオツムはその名の通りオツムが腐っているので、将来ルーニア様に婚約破棄を宣言するのです。」


あ、今まさにその状況ですね。


「その事を知ったルーニア様の父様は、可愛い可愛い娘が悲しまないように、ド腐れオツムの代わりとして体毛モコモコ性欲野獣を婚約者にしたのです。」


へぇ。占い師さんすごいですね。裏で手を回した父様よりも。


「ですから、ルーニア様は貴方が婚約者であることを知りませんでしたし、貴方が今、ルーニア様との婚約を破棄した時点で、ルーニア様の婚約者は体毛モコモコ性欲野獣へと変わりました。」


「そう。だから今後は婚約者権限として、お前が彼女の名を呼ぶ事を禁ず。俺のものに触れるな、ド腐れオツム。」



「そんな事より、プリン食べたい……。」


毒を吐くことに夢中な二人に、私の願いは届きません。



「なっ。……ルーニア。俺との婚約中に別の男と遊んでいたのか!俺を騙していたのだな?」


「婚約の事を知らないルーニア様に、貴方を騙す理由がありません。」


「ルーニア嬢の名を気安く呼ぶなと言っている。穢れるだろう。」



言っていることは全く分かりませんが、お二人とも私を庇ってくれているみたいです。愛がいっぱいです。嬉しいです。



「それに、貴方様こそエリーとかいう田舎娘を婚約者になされたのでしょう?ルーニア様は潔く身を引くのです。ここは素直に喜ぶべきだと思いますよ?」


「ひぇ?!……あ、あの、……その。」


「それもそうだな。……エリー嬢。一生、俺に付いてきてくれないか?絶対に幸せにすると約束しよう。」


エリーさんの前に跪き、エリーさんの手を取ると、その甲に優しく口付けをするドッグさん。

うぅー!格好良いです!萌えます!



「ご、ごめんなさい!」


……ふぇ?


キスされた手を振りほどき、部屋の外へ出ていってしまうエリーさん。



「失恋ですね。ざまぁ。」


「ルーニア嬢を蔑ろにしたツケだ。ざまぁ。」



「……あわわ。待ってください、エリーさん!一緒にプリン食べましょうよー!」


私も、かなり遅れて部屋を飛び出します


エリーさんは……あ、居ました。

廊下に設置されている水道で、ゴシゴシと手を洗っていました。頑固な絵の具でも付いてしまったのでしょうか?


「エリーさん、見つけましたぁ。……プーリーンー。」


私はペタンと、その場に座り込んでしまいます。

なんか今日は疲れましたぁ。


「え?わわ?……あの、その!?」


「プーリーンー。」


へななー。

意識がだんだん……。



「わー!ルーニア様が電池切れです!体毛モコモコ性欲野獣、早く餌を!」


「電池?……とりあえず、早くいつもの場所に。ルーニア嬢、失礼します。」



ふわーって体が浮きますぅ。私はこのまま天国にぃー。




あ、プリンは滅茶苦茶美味しかったですぅ。

美味しい甘さです。濃厚です。トロトロです。いつ死んでも悔いはありませんー!





《終》




----------


○ルーニア・ファン・ラーレット

 不思議ちゃん?マイペース?

 乙ゲー世界の『あくやくれいじょー』?

 前世の記憶あり。(前世もマイペース)

 この乙ゲーは名前も知らないし、プレイしたこともない。

 格好いい人萌え。(ただし画面越しに愛でるだけ。)

 甘いもの好き。

 王子の婚約者である事を自身は知らない。

 王子の顔、名前すら知らない。

 甘いものをくれるモコ様大好き。


○エリー・マウサ・キリーシャ

 乙ゲー世界の『ひろいん』?

 平民出身?

 臆病系。高階級の人と一緒にいるけで畏れ多い。

 王子の一方的なねっとりした視線が恐怖症。

 ルーニア曰く、『バニラソフトクリーム』。飾り気はなくて素朴。

 >ル「眩しくないですー!(褒め言葉)」


○タシィ

 ルーニアの従者。

 前世の記憶あり。

 ここが乙ゲー世界であることを知っている。

 ルーニア以外には毒舌。


○モコ(ここらへんから、名前考えるの面倒くry)

 ルーニアの隠し婚約者。

 一応、乙ゲー世界の攻略キャラ。

 タシィからは『体毛モコモコ性欲野獣』と。

 宰相だかの長男だっけ?

 ルーニア大好き。

 ルーニアを餌付け。

 ルーニアを傷つける奴には毒を吐く。

 ルーニア大好き。(大事な事なので2回ry)


○名も無き王子(名前考えるのry)

 第二王子。

 乙ゲー世界の攻略キャラ。

 本名、『ド……』なんちゃら。

 周りからは『ド腐れオツム』

 ルーニアからは『ドッグ』

 エリーに惚れ、自分の世界で妄想し尽くした結果、(妄想世界では相思相愛)現実世界で『結婚しよう!』と。頭オカシイ。


○占い師

 タシィ。


○プリン

 濃厚。

 ほどよい甘さ。

 トロトロ。

 値段高い。

 ルーニアは3つ食べたらしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 実はアホ王子、「なんであの男はオレをフルネーム連呼するんだろう?」と思ってます。 ドグサーレ=オーツム 陛下は カシーコイ=オーツム 第一王子は サーエテール=オーツム …だめ?
[一言] 不敬罪の問題はどうなりますか?曲がりにも王政国家で王族に対する暴言は王国の根幹的な問題、いくら無能だろうが王族は王族、タシィは問答無用だしルーニアもモコ某氏もついでにエリーも不敬罪、王国とい…
[一言] 貴族が貴様って使うと尊敬語の方の意味に見えてしまう。最上段の立場であるアホ王子ならば普通にお前で十分な気がする。 貴様って罵り言葉になったのって多分大日本帝国軍的な小説とか映画が原因だと推察…
2017/07/20 05:38 退会済み
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