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巳虎福(みこふく)様に祝福をっ!!  作者: 黒羽 夜咫
最終章 巳虎福様に祝福を!
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最終章 巳虎福様に祝福を!ー2①


 燦の仕事が終わった僕達は早速町へと繰り出していた。


 僕一人で行くはずが、出た玄関先でいつもの三人組がお出迎えをして待っていた。


 別に悪いわけじゃないから別に良いけど、何だかハーレムを形成しているみたいでなんか居心地が妙に悪い。


 よく漫画などで女の子たち数人と男一人で買い物とかあるけど、端から見たらモテ男気取りの嫌な奴にしか見えないことだろう。


 神主として世間の悪評が立つのはあまりよろしくないんだけどな。参拝客が来なくなるだろうし。


 んでもって、一番の問題は目当ての銀行は商店街を抜けた先にあることだった。



「おう、琥珀ちゃん! 今日も良い魚入ってるよ! ちょっくら見て行かねぇかい!」


「何言ってんだ! 今日はうちんとこの肉を買いに来たんだよな!? 琥珀ちゃん」


「琥珀ちゃあん、待ってたよ! ほれ、このキャベツ。新鮮でしゃきしゃきしてるぜぇ! 今日のおかずの一品はこれで決まりだねぇ」


「おお、琥珀ちゃん今日も可愛いねぇ。どうだい? 一杯、ミックスジュースでも飲んでいくかい?」


 商店街に入った瞬間、あちこちから縦横無尽に琥珀を呼ぶ声が飛び交い始めた。


 普段、ここで買い物をしているのだろう。姿を見かけたと同時にまるで獲物に食らいつくピラニアのごとく勢いで周囲を取り囲み始める。


 この町は無駄に仲間意識が強い。


 本来ならよそ者に対しては全く寄せ付けない。この近くにコンビニやスーパーが出来ないのもその為だ。


 だけど、琥珀の人当たりの良さのおかげか、すぐに馴染んでしまって今では人気者になっているようだ。



「なんですか、あの人気。喧嘩売ってるんですかね」


「マジ顔やめろ。顔が怖すぎるぞ、燦」


 怒りがマックス過ぎて小刻みに震えてるし、目は光が灯ってないし。


 いくら神様でも目の前にいるのを無視されるのは癪に障るのかね。



「いやはや、わかってますよ。ビ、クールってことですよね。安心してください。私は大人ですからこれくらいでは怒りません」


「今までの反応が果たして本当に大人のものと言えるかどうかは定かじゃないけど思いとどまってくれて良かったよ」


「しかしですね、禊さんがこの町を滅ぼそうとした理由が少しわかりますよ。これだけの堂々としたスルーは流石に腹が立ちま……」


「ちょっと待ちなさい! そんな風評被害止めて!? アタシ、そんなことしようとした覚え無いけど!?」


 全く身に覚えがないであろう燦の発言に禊ちゃんが食いついた。


 まあ、うちんとこの神社にお参りしようとする人って限られてたし、ましてや燦の姿を見たことのある人なんてそんなにいないからな。


 それに燦は妙に近づいて来るなと言わんばかりのオーラを纏う悪い癖があるし、あまり愛想が良いとも言えないからこればっかりは仕方がないのかもしれない。



「あれ? 禊さん、自分の存在を賭けて全てを滅ぼす一陣の風になる的なこと言ってませんでしたっけ?」


「そ、それはゲームをしてた時に言ったやつでしょ!?」


「ん? そうなの?」


「……はっ!? い、言ってないわよ! 全然言ってない! むしろゲームって何? 全然見たことも無い言葉ですねぇ」


「『唸れ、神速! 轟け、雷鳴! 我がうちに秘めし神龍のチカラ見せてあげる!』でしたっけ? いやあ、実に復唱するのですら恥ずかしい言葉……」


「あああああああああっ! な、なんで覚えてんのよ! ばかー! こ、こま切れ肉にするわよ!?」


「ふっふーん、やれるものならして見て下さいよ。肉弾戦では私の方が強いですからね」


「い、言ったわねぇ。早速家に帰ってこの決着を……」


「おーちーつーけ。そんなに恥ずかしがることじゃないよ、禊ちゃん。カッコいいじゃないか。尊敬するよホント」


「業守……」


 半泣きになりそうになりながら僕を見つめる禊ちゃん。


 カッコいいのは確かだけど、恥ずかしいのは確実だけど。



「それに燦もなそんなにひがむなよ。見ろよ。お前を信望してくれてるやつもあそこにいるじゃないか」


「えっ、ホントですか!?」


 目を輝かせながら燦は僕の指さした方向に視線を向ける。


 その瞬間、燦の顔が枯れた。



「はあ、はあ、脇巫女様ハアハア」


「あ、あの色白で細長い指のあちこちにコントローラーダコを作っていらっしゃるあの方はこの町のゲームセンターに現れては高得点を出しまくっている、通称ゲーセン乱神のSUN様に違いない。此処で会えたことを神の感謝! 圧倒的感謝!」


「神よおおおおお、拙者は。拙者はどうして此処にゲーム機を持ってきておらぬのだあああ。神のごとく手さばきをここで拝見する唯一の時をおおおおおお。くっそぉ、後悔してもしきれんでござるよおおおお」


「せ、せめてそ、その尊顔を。その御手に触れたい。いや、お御足で踏んでほしい」


 小太りな男たちの集団がそれぞれ身もだえていた。


 なんか頬を紅潮させて肩で息をしてる人やら下着姿で四つん這いになってる人やら。


 燦の信者ってあんな人たちばっかりのような……。



「アタシの信者のことロリコンって言ってたけど、アンタの信者もなかなかじゃないのよ、燦。流石、禊神社を継いだだけはあ……」


「自ら自分を乏しながら私に大ダメージを喰らわすだなんて、なんていう腹切りアタックですか!? 自爆を嫌われるんですよ、ああっ!?」


「やーめーろ。良いじゃないか。あいつら神社に呼んで賽銭入れてもらおうぜ」


「嫌ですよ!? あんな連中が私のテリトリーに入ったらそれこそ何百時間と浄化作業に入らないといけなくなるじゃあないですか。それに踏んでくれとか脇巫女とかなんか色々とヤバげじゃないですか?!」


「ファンサービスも大切よ。燦。たまには奇跡を見せるのも神の仕ご……」


「うなぎは黙っとれ」


「うな……!?」


「土曜丑はうちんとこでしてや!」


 禊ちゃんが撃沈した。


 クリティカルヒットしたのか燃え尽きた明日なジョー的な状態になっている。


 ぶちぎれた燦は本当に恐ろしいな。あまり関わらないでおこう。あと、地味に魚屋さん、反応しないで下さい。


 とりあえず、琥珀を救出しないと。



「琥珀―! 大丈夫かー!」


「わざもりぃ、助けてぇ」


 呼びかけた同時に視線が僕に集中した。


 あれ、これまずい?



「お、お前さんは榊さんとこのボンじゃねぇか!?」


「琥珀ちゃんと知り合いだってぇのか、にくめねぇやつだねぇ」


「でも、ちょっと待てよ。琥珀ちゃんを呼んだってことはもしかして付き合ってんのけ!」


「そんなに早まるんじゃないわよ。もしかして警察を呼ばないといけない案件だったらどうすんだい!?」


 ざわめきが爆発的に増殖している。


 いつのまにか僕にロリコン疑惑が浮上してきているぞ。


 よろしくないなー。神社に参拝に来ているPTAの親御さんとかを敵に回すのはいかんせんよろしくない。


 それにだ。僕はロリが好きなんやない。巫女服が似合う女の子が好きなんや。


 それを訂正しなければ。



「ちょ……」


「ちょっと待って下さい! ウチとわざもりはそんな関係じゃありません!」


 僕が否定するよりも早く琥珀が訂正してくれた。


 僕の意志を汲み取ってくれたのか。ありがたい限りだ。



「ウ、ウチとわざもりは、こ、婚約者的なやつで、そんな付き合ってるとかそんなんやなくて……」


「ちょ、ちょっと待って下さいよ琥珀さん何をおっしゃっているのか、全然わからないんですけどのことですよ!?」


 顔を真っ赤にして今にも爆発しそうになりながらそんな告白されたらみんな信じちゃうだろうが!



「ほれ、やっぱり血は争えんなあ」


「あのボンもやっぱし幼女趣味やったとは。いやはやおぞましい」


「て、訂正させて下さい! 婚約者と言っても(仮)的なものでしてね!? (仮)だと女の子との関係はセーフじゃないですかね!」


「な、なにを言ってるんだ。(仮)でもカワイイは正義じゃないか! つまりギルティだ、戦闘力3のゴミめ!」


「そうだそうだ! ガールフレンドの後ろについている(仮)は本気と同じなんだよ! つまんねぇ言い訳してんじゃねえぞ、タコおっ!」


「なんだかんだで女の子を侍らす、リア充め! 爆ぜろ!」


「わきぃぃぃわきぃぃぃ」


 うっせぇ燦の信者どもだ。話を余計にややこしくしやがって。


 一人に関してはまともに言葉喋ってねぇじゃねぇかよ。モンスターかよ、畜生。


 でもどうする。どうやってこの場を抜けきれば……。



「皆の者。落ち着くが良い」


 騒然とした空気を禊ちゃんの声が打ち破った。


 凛とした清廉な空気を纏ってみんなの間に割り込んでいく。


 禊ちゃん、あの精神攻撃から復活したのか!? 流石、神様。メンタルが違う。



「確かに奴も相当の変態だ。だが、諸君にいわれのない罵倒を受けるほどでは無いのだ。琥珀との婚約も次の正式な相手が決まるまでの準備期間の間だけというもので、正式な婚約ではない。よってだ。諸君に文句を言われる筋合いは……」


「ロリだあああああああああ!」


「またしてもロリか! またしてもロリなのか!」


「これはアウトぉぉぉぉぉ! アウトぉぉぉぉぉ!」


 様々な奇声が飛び交うなか、禊ちゃんはそっと僕の方を向いた。


 そして何も言わずに近づいてきて、


「ロリって言われたあああああ! 最年長なのにぃぃ最年長なのにぃぃぃ」


 ……ドンマイです、人生の先輩。



「とにかく、僕はロリコンではありませんから! みなさんどうも御贔屓に。では、用があるので僕はこれで」


 琥珀の手を引いて、燦と禊ちゃんに手でこっちに来いと合図をする。


 道中、色々と言葉が聞こえてきたけど今は無視。


 まるで政治家にでもなった気分で僕達はその場を後にした。



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