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巳虎福(みこふく)様に祝福をっ!!  作者: 黒羽 夜咫
第三章 忘れ物は龍ですか?
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第三章 無くしたものは何ですか? はい、龍っ娘ですー2②


 禊ちゃんの提案に乗った僕たちは禊神社に引き返してきた。


 知らない間に無駄に電飾の付けられたクイズ番組のセットみたいなのが用意されていて、燦と禊ちゃんが座っている。


 なんの勝負をするかは知らないが、誰だよ、このセット置いたの。


 僕たちがいない間に参拝客が来てたらドン引きだわ。こんなの見たらさ。



「勝負の内容は簡単。日没までに此処に来る参拝客にこの神社の神の名前を聞いて、どちらが多くの人に名前を知られているかを競うの」


「ん? それに何の意味が?」


「ふっふーん。神といえば知名度なの。より多く知られている神こそ優れた神だと言えるほどにね」


「そいつぁ、ちょっとおかしい気もしますけどね」


「うっさい。アンタに拒否権はないのよ。それともなに? ビビってんの?」


 見え透いた挑発をする禊ちゃんに燦は口元に人差し指を添えて、


「どうでもいいですけど、細かいルールは特に設定せずですか?」


「そうね。参拝客に質問する役はそこの人間と鬼娘に任せようかしら?」


「えっ、僕たち?」


「そうよ。聞こえなかったかしら?」


 鼻で笑ったかのようなドヤ顔を見せる禊ちゃんに僕の琥珀はお互いの顔を見合わせる。


 あの子は僕達が燦の味方をするとは考えてないのかね。



「僕は良いけど」


「ウチも。別に断る理由も無いんよ」


「OK! あと神は参拝客にいかなる方法でも名前を教えるのは禁止よ。まあ、神としてのプライドがあるからそんなゲスなことしないでしょうけどね」


「そうですねぇ。そんなことするわけが……」


「したら後ろからはっ倒すからな。後ろから見張られてるってこと忘れんなよ」


 僕の忠告に一瞬、背筋をピンと伸ばした燦は慌てふためきながら後ろを向いて、


「ちょっ! 何ですか?! こ、この私がそんなことをするとお思いですか?」


「すると思う」


「ウチも否定は出来ん。ゲームでもエゲツないし」


「アンタ、信用ゼロじゃない。ホント神なの?」


「ムキーッ! わかりました、わかりましたよ! こうなったら実力でねじ伏せてやりますよ。くはははっ! この私の戦闘力、見せてやりますよ」


 この場合、戦闘力は関係ないんだけどな。



「さあ、来なさい。参拝客。このアタシに勝利の栄光を刻むのよ!」


「まあ、そんな都合よく参拝客が……」


「来たぁっ!」


 琥珀の声に僕たち一同は一斉にその指先に顔を向けた。



「うひょひょひょー! 今日も燦ちゃんに胸ぐらを掴み上げてもらうぞぉ。蛇蝎を見るような目で見てもらうぞぉ! ふぉっふぉー!」


 肥満体な体を動かしながら現れたのは神酒さんだった。


 テンション高いな。神酒さん。よっぽど良いことがあ……。


「……」


 目怖っ!? 燦のヤツ、完全に人を殺す時の目をしてはるんですけど!?


 ヤツの目は言っている。何故、あの野郎を殺しておかなかったのだろうと!?



「ほら、燦サマー。落ち着くんよ。大きく息を吸ってぇ、そうそうええ感じ。ひっひっふーよ」


 琥珀が燦を宥めている間に聞きたい情報だけは聞いておかないと。


 燦の呼吸音が完全に暴走モードになる前のロボットみたいなものになってるし。


 常連さんをミンチにされてたまるか。



「こんにちは。神酒さん。今日もテンション高いっすね」


「おやおやこんにちは。業守君。あれ? 燦ちゃんはどうしたんだね?」


 神酒さんは無いようでかすかにある首を傾げながら僕に尋ねてきた。


 どうやらあの特設ステージとそこにいるヤツらは人間には見えないらしい。


 ラッキーだ。美少女三人が目に入った瞬間、全力で殺されに行きかねない。



「燦は今、別件で出掛けてますけど?」


「くっ、会社の休み時間を抜け出して燦ちゃんに会い来たというのに。何ということだ」


「はっはっは。程々にしておかないとまた奥さんにドヤされますよ?」


「燦ちゃんに会えるのなら死んでも本望というものだよ。命を賭ける価値があるね」


「キャバ嬢に貢ぐおっさんみたいなことを言わないで下さいよ。此処はあくまで神社なんですから」


 僕が名を呼ぶと神酒さんはキョトンとした顔を見せて『なんだね?』と答えた。



「この神社に祀られている神様の名前って知っていますか?」


「はて。そう言えば考えたことも無かったね。昔からあったから当たり前のように来ていたよ」


 高らかになぜか自慢げに笑う神酒さん。


 神主としては何とも複雑な気分だけどな。



「そうですか。なら良いんです」


「ほう? この流れだと神様の名前や由来を教えてくれるのでは無いのかね?」


「いえ、今それをすると首がもぎ取られる可能性がでてくるので……勘弁して下さい」


 後ろから凶悪な眼光が僕の後頭部に突き刺さってるんでね。



「お、おう。なんだか、よくわからんがとりあえず詮索はしないほうが良さそうだ」


「そうしてくれると助かります」


「それじゃあ、ワシは仕事に戻ろうかの。業守君もせいぜい励みたまえよ。もし疲れたらこのワシが美女とウハウハ出来るクラブにでも連れて行ってあげようではないか」


「ははは。その時はよろしくお願いします」


 僕は背を向けて軽く手を上げて、その場を去る神酒さんに頭を下げた。


 一応、神職だから出来たらそういう系統は避けたいんだけどな。……毛色は違うけど巫女服カフェなら喜んでお供させて頂くけどなっ!!



「てことで、知らねぇってさ」

 

「あのハゲ、信仰対象である神様の名前も知らないで此処に来てたんですか。巫女服女子目当てで職についた神主くらいゲスですね」


「何気にうちの一族ディスってんじゃねぇよ。巫女服の好きな男子に悪いヤツはいねぇんだよ。むしろ至高の一族だろうが」


「ふっふーん。どうやらアンタ、大した神じゃないようね。アタシが此処の神だった頃は何百、何千という人間達が私アタシ目当てに集まって来たもの」


 ドヤ顔で挑発する禊ちゃんを燦は軽く鼻で笑いながら、


「それって信仰というよりは単にロリコンには丁度良いロリがたまたま神社にいたってだけじゃないですかねぇ。まあ、ある意味狂信的ですけど」


「ロ、ロリですって!? 誰がロリよ、誰が!」


「えっ、まさか……自分はペドであると申されるんですか? そ、そんな自虐ネタを言われても反応に困りますが……」


「わかったわ。アンタ、表出なさい。焦れったい勝負なんか止めて力勝負にしてあげるわ」


「おやおや、ただでさえミニマムな癖に自ら細切れになりたがるとはとんだドエムですねぇ。あと、此処は表ですよ? ボキャ貧マイナー神は裏に引っ込んでいてはいかがですか?」


「言ったわねぇ……」


「あー、ししょー! ちいさいこをイジメたらいけないんだぜ!」


 二人の喧嘩に割り込む小さな影。


 ランドセルを背負ったその姿はうちの神社の常連その2だ。



「おお、刈太さん。こんにちは。学校は終わったのですか?」


 禊ちゃんそっちのけでその場でしゃがみ込む燦にカンタは親指を立てて、


「もちのろんよ!」


「宿題はやりましたか?」


「……お、おふ。そこか。そこをつくか」


「十秒でやってきな」


「ひぃぃぃ! ししょーキツイぜ! いえ、かえってからやるからさぁ」


「そういうのはやらない子だけですよ。やらなければ殺られる。ゲームでも同じですよね?」


「くぅそおおおおっ!」


 帰ろうとするカリタの肩を僕はそっと触れた。



「な、なんだよ。ミコフクスキー。おめぇはいえでみこふくでもオカズにしてひきこもっとけよ」


「お前、自分が何を言ってるのか意味わかってんのか?」


「うるせぇ。おれははやくしゅくだいをしねぇといけないんだー!」


「その前に質問に答えていけや、カンタ。そしたら此処で宿題やらせてやっから」


「い、いらねぇよ。そんなの!」


「良いのかなー? 此処でならジュースとお菓子完備付きで宿題が出来るし終わった後、すぐにゲームが出来るけど、家でしてたら貴重なゲームの時間を家からの移動時間に潰されんだぞ。それだったら此処でしていったほうが得だと僕は思うんだけどなぁ?」


 我ながらエゲツないゲス顔を見せると、カンタは渋々ながら小さく頷き、


「しつもんってなんだよ。はやくいえよ」


「此処の神社の神様の名前って何か知ってる?」


「まぬけ」


 ……お、おう。



「誰が間抜けじゃごるぁぁぁぁ!!」


 禊神社の新旧ダブルゴッドの同時に胸ぐら掴みをお見舞いされ、カリタはがっくりうなだれたまま意識が落ちた。


 禊ちゃんは手が届かなかったようだけど、神通力的なもので宙に浮かしていたようだ。


 ……ふぅ。計画どおり。夜のお楽しみ用のお菓子とジュースは死守してやったわ。



「なあ、琥珀。神様って馬鹿にされるとすぐにキレるなんだな」


「格上の存在なんてなんてそんなもんなんよ?」


「だな。いやはや、カンタざまぁ」


「人間も似たようなもんやね」


 少し呆れたような目で僕を見る琥珀をよそに、大股で歩きながら二体の神が帰って来た。



「カッ、あんな神を尊敬しない子供が此処の神社のレベルも落ちたわね。どこの神のせいかしら」


「ハハン、初代を名乗ってるエセ龍の頃から大して変わってないと思いますよ。恐らくですが」


「つまらないジョーダンは止しなさいよ。乳臭いのが丸出しよ」


「減らず口を叩いている暇があったら身長を伸ばしたほうが有意義だと思いますけど。老害」


「はぁい、終了だ。お前ら。今はお前らのこの壊滅的な知名度の無さを嘆くんだな」


 来る人来る人誰も知らねぇじゃねぇか。


 あれか。僕がもっと色んな人に此処の神社について語るべきなのか?



「人間のレベルが低過ぎるのよ。もっと高貴な人なら私のことも知っているはずなのに」


「それには同感です。もっと徳の高い人を連れてくるべきですよ」


「そうそう、ぼかぁ徳が高いからこの場には相応しい人間だと思うけどね」


 突然、現れた声に二人は振り向いた。


 目に映えて鬱陶しい程の金髪と怪しげなサングラスまで掛けた僕の知り合い、カズトがそこにいた。



「帰れ」


「おやおや、親友であり参拝客である僕が来たというのに開口一番『帰れ』とは随分ひどい言いようじゃないか。ぼかぁ泣いちゃうよ。うえーんうえーん」


「お前が来る時ってのはロクなことが無いからな。関わらないで済むのならホントそれに越したことが無い人間だからな。お前」


「泣いてるのを無視とはドエスだねぇキミは。女の子にモテそうに無いよ。一生」


「一生は言い過ぎだろ!? ワンチャンあるかよしれないだろ!」


「あのぉこの人は?」


「こんにちは。ぼかぁ、無頼 一人。探偵兼情報屋、そして榊 業守君の唯一の親友さ。燦布羅挫大御神」


「本名で呼ぶんじゃねぇですよ!?」


 燦の絶叫が響き渡る。


 目を見開いて漫画なら集中線が大量に描かれているだろう勢いだ。


 走ってる俺たち的な歌が有名な人を連想させるからフルネームで言われるの嫌なんだよな、燦。


 ……ん。ちょっと待てよ。



「おい、それを知ってるってことは……」


「キミが此処の神様だってこともぼかぁ知っているよ。情報屋だからね」


「こ、こいつぁ、ポイントになるんですか?」


「な、なるんじゃないか。参拝客って言ってるし」


「ちょっと待ちなさいよ! アンタ、アタシは?」


 詰め寄る禊ちゃんにカズトは一瞥し、“口元を静かに歪ませた”。



「いやぁ、キミは知らないね。幼女ってことしか」


「なっ!?」


 空気が凍りついた。



「さて、ぼかぁお賽銭でもして帰ろうかな。こう見えても暇じゃないんでね」


 カズトはそう言うとふらふらと賽銭箱に近付き、五円玉を投げ入れて踵を返した。


 唖然とする僕達なんて御構い無しだ。


 ……五円かよ。ちゃっちいやつだぜ。


 僕の横を通り過ぎる時、カズトは僕の耳元で囁くように言った。



「……これで問題解決だろ。感謝してくれても良いんだぜ?」


「はぁっ!? ちょ、おま……」


 振り向いた頃にはカズトの姿は無かった。


 降って湧いたように現れたな。あいつ。



「ど、どうするん? わざもり」


「仕方ないだろ。ルールはルールだからな」


 僕は燦のところにポイントを静かに加えた。


 まだ、時間はあるし一人でも……。


 そう思うにも無情にも太陽は沈んでいった。


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