火竜の薬
「いい事思いついたわ! シン、これを辺り全面に撒いてくれない」
シンは渡された黒色で球状の粒を手に不思議そうな顔して聞きます。
「これって何?」
「ふふふふ〜、超〜強力な下剤の丸薬」
「そんなの撒いてどうするんだ?」
「簡単な話よ。上から出れないなら下から出る。ちょっとビジュアル的には良くないけど背に腹は変えられないわ」
シンも理解したようで二人はせっせと下剤の丸薬を火竜のお腹の中に撒きます。
普段薬を飲み慣れていない人が薬を飲むと人一倍効果が出るようです。
当然、火竜が薬を飲む機会なんてある筈も無く、初めて飲んだこの下剤の丸薬は想像を超える効き目だったようで……。
ゴロゴロゴロゴロ!!!!
ゴロゴロゴロゴロ!!!!
お尻からゴロゴロ、スポーン!
「やったー! 出られた!」
「はいはい、良かったわね。それじゃあ、カイの所に急ぐわよ」
「…………ティナ……」
手放しで喜んでいたシンが一転曇った表情になります。
「今度は何?」
「鞄、火竜のお腹の中に忘れてきた……」
「ハアァァァ…………? あの鞄が無いとカイの所に行っても意味が無いじゃない! シン、あなたもう一度火竜に飲み込まれて鞄を持って尻から出てきなさい」
「ティナ、それは無理だ。俺が飲み込まれたって鞄の中のどの薬が下剤か分からない。もしも、下痢止めの丸薬を飲ませたら俺は一生出て来れなくなってしまう」
「ったく、わかったわよ。しょうがないなぁ、私が行ってくるわよ」
そう言いながら渋々ティナは火竜の前に回ります。火竜はティナが撒いた下剤の丸薬の所為で酷い下痢状態で頬はこけ、肩で息をして、とても立ち上がれる様子じゃありません。
「ごめんね。火竜さん、あなたに飲み込まれた私たちが外に出るにはこの方法しかなかったのよ。安心してちゃんと下痢止めの薬持って来てるから……でも、その前に一つお願いを聞いて貰えないかしら?」
「なんじゃ?」
火竜は顔を横にして地べたにつけたままティナの話を聞いています。
「私をもう一度飲み込んでくれない? あなたのお腹の中に薬の入った鞄を忘れちゃって」
「飲み込んでもいいんじゃが、その下痢止めの薬は丸薬か?」
「ええ、そうだけど」
「それは駄目じゃ!
火竜の薬は顆粒に限る!」