火竜の森の洞窟
山を二つ越えたあたりでしょうか、二人が歩いている山道は草木が鬱蒼と生い茂っているうえに、火竜の森に近づいているせいか暑くてたまりません。
「暑いな……ふう……本当に暑い……いやぁマジ暑い」
「うぅ〜っ、さっきから暑い、暑いってうるさいわね! あなただけが暑いんじゃなくて私だって暑いんだからね! さっさと歩く!」
弱音を吐くシンをティナが叱咤して先を急がせます。しかし、しばらく歩くと。
「あー……お腹空いた……ティナ……何か食べる物持ってない?」
「ったく、ほんとにうるさいわね! 二人がいる場所に着いたら鞄にある食べ物あげるから急ぎなさい!」
シンはティナの言葉に納得して再び歩き始めるのですが、程なくしてまたティナに声をかける。
「……ティナ……」
「何よ今度は……」
「俺……道を間違えたかもしれない……」
「ハアァァァ…………!」
さすがのティナも今回は進めている足を止めて後ろを歩いているシンに振り返る。
「私たち今、山を二つ越えて来たわよね!」
「うん。でも、俺が来る時に通った道にはこんな尖った岩の突き出た洞窟なんて無かったんだよなぁ」
二人が立ち止まった先に鋭角な岩が上と下に突き出ている洞窟があります。
「無かったって、今からまた、二つ山を戻ってからまた山を二つ越えて行くなんてそんな元気、私無いわよ!」
「わかってる。とりあえず、あの洞窟でひと休みして考えよう」
そう言うとシンは洞窟に入りドッカと腰を下ろします。ティナも渋々隣に座りました。