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熱烈な転送機導

本気で異世界バトルファンタジー書いてみたくなり、設定つけて書いてみました。

読んで感想いただけると幸いです。

夏の猛暑日だった。

俺、桐原進(キリハラススム)は目前に迫った8月模擬試験から逃げるように、居間でテレビを見耽っていた。

内容は昼の情報バラエティー。

最近発掘された謎の巨大な石像についての特集で、胡散臭い知識人達が夏だと言うのにアツく議論を交わしている。

俺はそれを、死んだような目で見ていた。


(・・・・あー、人生ってこんなにつまらないものだったのか)


家族は誰一人といない家でただ一人、テレビを見る。

受験生の夏休みといったら、受験に向けての大切な期間だ。

だが、俺は夏休みを勉強に充てることに意味を見出だせず、今もこうしてだらだらと自堕落な生活を送っている。


(昔はこんなんじゃ無かったのにな・・・・)


中学校までは何事も筒がなくこなし、親からも教師からも、友人たちからの信頼も厚く、満ち足りた生活を送っていた。

だが、高校生にもなると社会の様々なものが見えてくる。政治、経済、世の中の暗黙のルール。

政治が見えてくれば政治家の無能さがありありと見え、経済が理解できるようになれば将来の生活に不安を抱くようになる。

暗黙のルールが理解できるようになれば、例え高校でできた友人達が皆薬物に手を染めていたとしても、それを黙って見過ごせるようになる。


(見てみろよ、この世界はこんなにも生きにくい)


天井を仰ぎ、目を閉じ想像する。

ゲームのファンタジー世界。小説の魔法の国。海外書籍のスチームパンク。

そこには夢があり、希望があり、俺の思い描く未来があった。

もし、そんな未来が今からでも手に入るとしたら。もし、今からでも過去に戻ってやり直せるとしたら。


(――――――――俺は、もう一度やり直したい)


不意に、テレビから発せられた声が耳に届いた。

話題は未だに石像の話であって、議論は泥沼と化している。

「何だよ・・・・。いったいなにがそんなに珍しいんだよ?」

最近視力が落ちてきた眼を開いて、画面を見る。

『―――――ですから、これは石像ではないんです、人の形をした鉄の塊なんですよ!』

『全く馬鹿馬鹿しい。その像が発見されたのは地層年代が紀元前以降の元海底ですよね? 鉄を変形させる技術があるはずがない!』

スーツを着た禿頭の研究者が自身の発見を誇らしげに語るのに対して、白髪の学者がただの偶然だと否定する。

先程からそれが続くばかりで、一向に進展は見られない。

暇潰しにテレビのTwitter機能を起動させると、今見ている番組についての様々な人間の意見が表示される。


『ハゲなにいってんだwwwww』

『世w紀wのw大w発w見wでwすwぞ(キリッ』

『つーかつまらん。さっさと吉本やれ』

『なにこの像。ロボット見てぇw』


――――――ロボット?

その一言に引きずられるように、画面の向こうの写真をよく見る。

地面に埋もれて回りの石と同化しているらしく、輪郭はハッキリと掴めないが・・・・・なるほど。よく見れば単なる人形というよりは、装甲のある人形。ロボットという表現が正しいかもしれない。

「だとしたらそれこそ、そのハゲのカンチガイってやつだろ」

テレビの電源を落とし、ソファーに寝転ぶ。

冷房の良く効いたリビングにいると、ウトウトしてくる。

妹に見られると間違いなく注意されるだろうが、そんなことは関係ない。

(・・・ロボットに乗る夢でも、見られるといいなぁ・・・・)

最後に見たのは一般家庭には少々行きすぎた豪奢な照明器具。


―――――それが、俺がこの時間で見た最後の光景となった。



始めに感じたのは、猛烈な熱。

体の一部分にだけ熱湯が掛けられたというレベルではなく、全身まるごと釜茹でにされているみたいだった。

ソファーで寝ていたはずなのに、もがいた腕が空を切る。

・・・・いや、感触的には水を切る、という感じだ。

だとしたらここは本当に熱湯の中なのか・・・?

次の瞬間、その水の感触に流れができた。

バスタブから栓を抜けば排水口にお湯が流れていく様に、俺はたったひとつの出口に向かって流されていく。

まるで体が収縮するような気持ち悪い感覚が過ぎると・・・・。

「~~~~~~~ッハァッ!!」

ようやく、息が出来た。

そのまましばらく、呼吸を静めるのに専念し、落ち着いたところで眼を開ける。

「・・・・・・・・尻?」

目の前に、尻があった。

すべすべしてて肌色の、ちょっと肉付きが俺好みの、綺麗なヒップだ。

正座しているらしく脚の踵に、柔らかいことを主張するようにふんわりと形を変えた肌色が乗っている。

これ程の尻、うちのクラスにゃ絶対いないぞ。

・・・・・ていうか、え? 尻?

お約束的な予感を感じた俺は、顔をチョイとずらすと、綺麗な背中にそって段々と上に向かって視線が動いていく。

そして、目があった。

女子だ。女子。

それもあの尻に見あった美人な娘だ。

赤茶色の長髪を顔の両側から垂らしたその女は、俺とバッチリ目が合うと、それこそ石のように固まった。

「・・・よ、よう」

「・・・・・・え? ええ、どうも・・・・」

さて、これからどうするか。

覗きは犯罪・・・というかこの場所は俺の家ではないから不法侵入罪も追加で食らうぞ。

尻に見惚れて気付かなかったが、ここは風呂らしく、木製の湯船に並々と湯が張ってある。さっきの熱の原因はあの湯船か? なんで熱湯ダイブさせられたんですか俺は。

――と、そんな場合じゃない。まずはどう言い訳するか考えねば――――


「―――――あの、大丈夫ですか?」


「・・・・・え?」

「いえ、ごめんなさい。流石に『鋼の種(スティル・シード)』の不調で人が流れてきたのは初めてでして・・・。どこか怪我したりしてませんか?」

「へ? あ? え? だ、大丈夫。ちょっと火傷っぽいかな?」

予想外の展開に面食らう。

てっきり変態だー!とか、警察よんでー!とかって叫ばれると思ってたが、意外にも心配してくるとは・・・。

「それは大変! ちょっと待っててくださいね。直ぐに冷却用の『鋼の種(スティル・シード)』持ってきます!」

「ちょ、え? おいアンタ・・・!」

「おかーさん! 今度は人が流れてきたよー!」

木製のドアを開け、パタパタと駆けていく女の子。

その場には未だに寝転んでいる俺だけが残された。



五分後、俺は意図せずして混浴(?)してしまった女の子に導かれ、家主と対面していた。

「いやー、悪いことしたねぇ・・・・。まさか人が流れてくるとは思わなかったよ」

「お母さん、やっぱりあそこのメーカーはダメだよ。隣町の種売りに行こうよ」

「そうだねぇ・・・。いくら昔はやり手の魔法使いだったって言っても、いまじゃあのじいさんもただの機導使いだからね。別の店に行ってみようかね」

「やったあ! それじゃあ新しい髪飾り買ってよ! 麦の収穫もっと頑張るから!」

・・・・・・・えーと、なんだこれ。

完全においてけぼりを食らった俺は、椅子に座ったままほのぼのとした母娘の団らんを眺めていた。

一応、変な鉄のかたまりで火傷は冷やして貰ったけどさ、驚くことにもうほとんど痛みがないんだよな。

結構ヒリヒリしてたから痛みが続くと予想してたから良かったぜ。あの黒い塊、なにか薬でも塗ってたのかな。

「ああ、悪いね。ついつい話し込んじまった。それで、改めて謝らせてもらうよ。本当にごめんよ・・」

快活とした雰囲気の母親が頭を下げる。

「火傷まで負わせてしまって・・・。本当にごめんなさいっ!」

続いて女の子まで頭を下げると、何故かこっちが悪いことしたような気分になってしまったので、頭をあげるように促す。

「その件についてはもういいですよ。それより、ここって何処ですか? うちの住所目黒区なんですけど・・・・」

たぶんあれだろう。家にかえって見ると、俺が居眠りしているところに出くわした親父が、家の窓から俺を放り投げたというオチだろう。従ってここはうちの近所だと言える。

そうと分かればさっさと家に帰って、親父と拳で語り合いでもせにゃならんので答えを聞く前に椅子から腰をあげる。


「―――――メグロク? どこだいそりゃ? ここはホウダ村だよ?」


「――――なんだって?」

ホウダムラ? ホウダ村か。うちの近所にそんな場所が有ったかと頭を捻るが、残念ながら思い付きはしない。

ていうか目黒区のイントネーション。明らかに漢字が連想できてない感じだったぞ。

「ホウダ村って・・・。何処かの過疎地域ですか? ったく、親父め。車まで使って息子捨てに来るかフツー」

「おいおいアンタ。確かにホウダ村は比較的小さい村だけど、特別過疎って訳じゃないよ。これでも麦の収穫量は『アイアンシー』第三位だよ!」

「そうだよ! 確かに人は少ないけど、活気はあるんだからね!」

俺の物言いにカチンと来たのか、目の前の二人が自分達の村自慢を始める。


―――――なんだ? どこかおかしい。


まず第一に。俺が眠ってから起きるまで、大体二時間ってところだ。

二時間の家に目黒区も知らないような人間がいる地域まで来れるだろうか。

そして二つ目。言語・・・というか文字が全く見たことない文字だ。

家族間の連絡に使うためか、コルクボードが壁にはあり、治療してもらってる間それを眺めていたんだが、一文字も理解できない。エジプトのヒエログリフ、古代の象形文字。どれにもあてはまらない特異な文字だ。

だったら何故言葉が通じるんだ。文字は違っていても、言語表現は同じなのか・・・?


「なぁ、ちょっといいですか?」

「ん? どうしたの?」

俺はどんどん膨らんでいく不安を押さえつけ、勇気を出して問い掛けた。

「・・・・地球って、分かる?」


「「・・・・・いや、分からないね~」」


「決定的かよ畜生め!」


高校三年生の夏休み。

俺は、俺の時代ではない、何処かへと飛び立った。


固有名詞の解説は、本文でできないぶんをここで補おうと思います。


読んでくださってありがとうございました!

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