クリスマスの贈り物2014
吾輩はヒモである。
名前は諸子良。
本当の名前もあるのだが、俺は彼女の前では「ショコラ」で通していた。
それがプロってもんだと思う。
朝にベッドから彼女を見送ると、床の掃除をする……とは言えロボットのスイッチをいれるだけだが。
後はお気に入りのコレクションを眺めて彼女の帰りを待つ。
彼女は必ず「ショコラぁ! ただいまぁ!」と口づけをせがみ、時々風呂にも入る。
一緒に食事をとって、ここからが俺の本当の仕事、彼女と添い寝をして、愚痴を聞いたりマッサージをしたりしてあげると、彼女は「きもちいいよー」と、はしたない声を出して喜ぶ。
まぁそしてぐっすり眠れば、朝にはディープキスでお姫様を目覚めさせる。それも王子様のお仕事だ。
そういう生活をもう3ヶ月も続けていた。
そう言えばもうクリスマスじゃないか。
いつも頑張っている彼女にプレゼントを買ってあげたいが、あいにくとニートでヒモの俺には、現金もカードもない。
仕方がない、俺の大事なコレクションの中の、一番いいやつをプレゼントしよう。
彼女だってこれを俺と取り合いをして遊ぶほど大好きなのだ、きっと喜んでくれるだろう。
しばらくまち名残惜しい俺のコレクションとの別れを俺は楽しんだ。
ドアが開き、彼女はいつもより早く帰宅した。
「ショコラ! ただいま!」
只今のキスはいつもよりそっけない。俺はとっておきのクマのぬいぐるみを彼女に渡した。
「ん? どうしたの? もう飽きちゃった?」
そうじゃない! ほら、こうやって遊ぶの、好きだったろう?
俺はぬいぐるみを振り回す。彼女も理解した様子で俺からぬいぐるみをむしりとり、振り回したらスッポ抜けた。
仕方なく俺は急いでぬいぐるみを取ってくる。
その間にも化粧をしなおした彼女は少し気合の入った服に着替えると、部屋を出て行った。キスもなしで。
こんなことは今まで一度もなかった。俺は何が悪かったのか? 彼女はどこへいったのか、深く悩み続けた。
顔を上げるともう朝日が登り始めている10時間以上もこうやって立ち尽くしていたのか……。
とぼとぼとベッドに入ろうとした俺の背中に彼女の足音。
玄関に飛び込んできた彼女は俺を抱きしめるとオイオイと泣いた。
何があったのは聞かない。
俺が全て忘れさせてやる。
大事なクマのぬいぐるみを彼女の前に置くと、目で「どうぞ」と促した。
「ショコラ! これ一番大事にしてたやつでしょう?! くれるの? ……慰めて……くれる……の……」
彼女の言葉は終わりの方はもう途切れ途切れで聞こえなかったが、抱きしめた体の感触は暖かかった。
きっと彼女の心も温まっていることだろう。
その時、玄関のチャイムが鳴る。こんな時間に何者だ?
俺は玄関まで走り、威嚇するようにうなり声を上げた。
「だめよ、ショコラ」
彼女は俺の体を簡単に持ち上げると玄関を開けた。
「ごめん、さっきのこと謝りたくて……遊園地の券2枚あるんだ、今から行かないか?」
見たことのない男が俺の彼女に馴れ馴れしく話しかける。彼女は涙を浮かべ、俺は牙をむいて唸り声を上げた。
「ううん、分かってくれればいいの……」
「うん、メリークリスマス。大好きだよ」
二人の距離が近づき、俺は彼女の手から取り落とされた。
「ショコラ、ハウス」
彼女の命令だ、聴かない訳にはいかない。俺はしぶしぶケージに入った。
それを見届けた彼女と変な男はしばらく話をした後、唐突に寝室へと入っていった。
やっぱり犬では彼氏にはなれないのか……
俺は悔しくて、わざとトイレシートじゃない所におしっこをした。