第十話 王都到着
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「さあ、もうすぐだぞ。さて、もう一度確認しておきたいのだがロボ君は僕に『勉学』の才能を見込まれて王立工匠の助手として連れてこられた。ここまで大丈夫か?」
三日の船旅もそろそろ終わりを迎えようとしていた。さすが王国御用達の船と道である。さしたる苦労もなく王都へ着きそうだ。
船は川を左右に切り開きながらぐんぐん進んでいく。その先にはそびえたつ城壁に囲まれた王都が遠目にもう見えている。空は晴れ渡り船を力強く引っ張る水龍をの鱗を輝かせている。
「はい、あの実験の事については話してはいけないんですよね。大丈夫ですよ」
「うむ。間違っても魔法使いのいる前で話してはいけないよ。王立工匠の研究員達は
あまり気にしないと思うが助手に誘われた経緯を聞かれたら村で私の助手をして認め
られたといいなさい」
「そうだね、王立工匠の人達はそうゆうのあまり気にしないだろうね。てゆうか、自分
の実験以外の事は気にしないよね」
サラはくすりと笑いながら色々思い出しているようだ。研究員達のそういった行動は日
常茶飯事なのかもしれない。
「彼らにはもっと広い視野を持って研究に打ち込んでほしいと思っているのだが、まあ
彼らのそんな純粋な所も十分に評価に値するのであろうな」
王都は話している内にもどんどん近づいてきている。
ロボは心臓の鼓動が激しくなってきた。これからの王都での新しい生活、挑戦それがあ
と目の先まできているのだ。自分はやっていけるだろうか。いや、もうそんな事悩んで
いる時ではない、やるのだそれしかもう道はない。気合を入れる様に奥歯をぐっと噛みしめる。
そんな様子のロボにサラはにっこりと笑いかける
「そんな力まなくて大丈夫だよ。ちょっと変わった人達だけど、ちょっとね、ほんとちょっと、いい人ばっかりだよ」
全く安心できなかった。
***
「門が見えてきたぞ。まあ、こちらは王国の船だから関所に止められる事もないだろう
がな」
「しかし、いつ見ても無駄にでかい門だよね。こんな所にも王の威光が必要なのかね」
サラは何気に不謹慎なことをいいながら船を進めていく。しかし、二人は何度となくこ
の門を見ているからふつうでいられるのだろうが、初めて見たロボはその何十メートル
もあるであろう門はもはやどうやって作ったかも分からなかった。王都は何もかもが規格外である。
サラが門番の人と色々話している。手続きをしているのだろう。
博士の言った通り手続きは何事もなく終わった。
門が開き(これもどうやって動かしているのやら)中に通される。もうこれで王都にをを踏み入れた事になるのだ。
「さあロボこれからさっそく王立工匠の本部に行く。そこで君の紹介をして誰かの助手につけよう。本当は私の助手につくのが一番いいのだが、私の王都での仕事は雑事が多いのでな君には時間の無駄だろうそれよりも他の研究員の下について技術や知識を吸収しなさい」
「いきなり、王立工匠の助手なんてほんと大変だと思うけど頑張ってね。この国最高峰の頭脳を持つ連中だからきっといい勉強になるよ。いい意味でも悪い意味でもね。じゃあ、私はこれから船と水龍を返してきて、なんでわざわざ船で移動したのかの釈明に行くからここでお別れ」
「ありがとう。最後まで世話をかけるな」
「ありがとうございました。本当に色々お世話になりました」
港に船をつけて博士とロボはサラに別れを告げた。サラは最後まで優しい笑顔で手を振って去っていった。
「船旅で疲れているだろうがもう私はこれでも忙しい身で今すぐにでも帰らなければならない。ついてきてくれ」
博士はかなりの速足で市街を駆け抜けていく。王都の街並みはやはりこの国一番の大きな都市であるため人も建物も溢れていた。トレモンもこんな感じであったが一番の違いは王都は全ての人や物が洗練されていた。
どの人も豪奢な服や綺麗な宝石で着飾っていて。道のタイルは規則正しく配色されていて、街灯までもがお洒落である。
じっくり、見る暇がないが時間さえ許せばいつまでも見ていたいほど絵になる街並みである。
人ごみの中をどんどん進むと、周りの建物の中でもひときわ大きくなんだか歴史を感じさせる建物に辿り着いた。建物といってもそれはいくつもの棟に分かれていてそれがあまり調和をなしているのでまるで一つの大きな城の様に思えたのであった。
「さあ、これが王立工匠の本部であり研究所だ。今日から君はここに住んで研究にうちこんでもらいたい」
「ここが」
おもわず息の飲む。それほどこの建築物は計算された美しさがあった。もはやそれは畏怖に近いものであった。
「さあ、おいでみんなに君を紹介しよう」
博士はどこかうきうきしているようだ。博士も一か月ぶりに帰ってこれて嬉しいのだろう。
ロボは胸の高鳴りに引かれる様に足を踏み出す。これからの生活に緊張と希望とをまぜこぜにしながら。
***
門の正面にあった建物にロボと博士は入った。中もかなり装飾が凝られてていてもはやこの1棟だけでロボの村の領主の豪邸をはるかに超える建築である。
博士は管のつながった先の広がっている金属の筒を口にあてると
「えー、研究員につぐ。オイラー・レオナルドただいま帰還した。連絡があるので事務棟に集まってくれ。以上」
博士がそう筒にむかって言うとなんとその声が建物全体に響いた。どうやらあれはこれほど広い敷地でも連絡を行うための拡声器の様だ。
そして、しばらく待っていると。ぞろぞろと人が集まってきた。スーツを着ている人や白衣を着ている人、はたまた普段着の人まで色々なかっこの人が集まってきた。この人達が王立工匠の研究員なのだろう。
何十人かの人が集まってきたのを確認し博士はよく通る声でみんなに話しかけた。
「みんなただいま帰ってきた。勿論わざわざ挨拶するために君たちを呼び出したわけではない。我々の仲間になる者を紹介したいのだ。この子はロボ。私が研究のため出張した村で助手をやってもらったのだがこれがなかなかに使える子でな。思わず誘ってしまったというわけだ」
みんな静まりかえっている。そりゃそうだろう、ロボもこんな適当な紹介をされるとは思っていなかった。研究者達の鋭い視線が痛い。
「皆さん初めましてロボって言います。これからよろしくお願いします」
全員何も言わない。気まずい沈黙だけが場にあった。博士にはもうちょっと紹介を考えてほしかった。こんな所は以外とおおざっばなのかもしれない。
「うんうん、それでだカルノー実は君にロボの教育係を頼みたい。何せ学校にも通っていなかったのだから助手と言われても右も左も分からんだろうからな。色々教えてやってくれ」
「うえ、僕がですか?」
カルノーと呼ばれた男が明らかに嫌そうな声で答える。
カルノーはびしっと決まったスーツに身を包み見事な金髪の髪を格好良くセットしている。
そんなカルノーの様子もどこ吹く風と博士は笑顔だ。
「うむ。頼んだぞ。さて私はこれから四団長会議があるのでここで失礼する。カルノー実験棟など案内してやってくれ。ではさらばだ」
そういうと博士は風の様に去って行った。いや、嵐の様だ。
研究員もカルノーに同情の笑みを浮かべながらそれぞれ散っていった。
カルノーとロボだけが残される。
カルノーは値踏みするように上から見下ろしてくる。その時、ロボはカルノーが博士と
同じ青い目をしている事に気づいた。
「おい。ロボって言ったか。お前何ができるの?」
「え、、えっと」
「さっさと答えろ。文字は書けるのか?四則計算は?微分積分は?力学は知ってるのか?そもそも、スキルは何をもってるんだ」
カルノーはまくしたててきた。その勢いにつられてロボも答える。
「文字は書けます。計算もできます。微分積分は知りません。力学は博士に少し教わりました。スキルは」
そこで、少し言いよどむ
「スキルは持ってません」
カルノーはそこまで聞いて天を仰いだ。
「はあ、なんだってずぶの素人のお守りをしなきゃなんないんだ。つーか、博士ってのはオイラーさんの事か?」
「えっ、博士っていっぱいいるんですか?」
「そんな事も知らないのか。博士はいっぱいはいねえがさっき集まったてた奴ら、俺も含めてみんな博士号を持ってる」
「カルノーさんも博士なんですか。すごいですね」
ロボは目を輝かせた。さっきいた人達はみなオイラー博士クラスの天才なのだ。
「別にすごくねえよ。大事なのは肩書きじゃなくて実績だ。まあ、とにかくお前には教えなきゃいけねえ事が山ほどあるみたいだな」
カルノーはそこでにやりと笑った。ロボは思わず身を引いた。
「覚悟しとけよ。俺は任された仕事は完璧にやる。お前にはすぐにでもここでいっぱしに働けるようにびしびしいくからな。逃げるんじゃねえぞ」
ロボは少し怖くなりながらも
「逃げませんよ。逃げる所もないんです」
カルノーの目を真っ直ぐ見て答えた。
カルノーはまた笑った。
「そうか、そうか、いい目だ。だけど、いつまで続くか見ものだぜ。ついて来い、まずは俺の研究室にいく」
そう言って、カルノーは大股で歩きだした。その後ろをロボは小走りしながらついて行った。




