Act-2 未知との遭遇
ひとまずHRを終えて、一時間目が始まるまでの間机に突っ伏す。
「初日からヒドイ目にあった……」
「自業自得じゃないかな?」
冗談なのに……っていうか普通は真に受けないだろ!?
おかげで転校生だっていうのにクラスメイトは遠巻きに観察するだけで近寄ってこない。
「どうしてこんなことに……」
「うちには彼女がいるからねぇ」
「彼女?」
梓ちゃんの視線の先には未知の物体Xがいた。
見れば見るほど異質な存在だ。
クラスからは完全に浮いているのに、誰も彼女を気にかけていない。
「あの人はなんなの?」
「女神」
「……は?」
「の、生まれ変わり」
「はぁ?」
「らしいよ?」
女神の生まれ変わり?
っていうかそもそも何の女神?勝利?
「ごめん、ちょっとよく分からない」
「だよね」
改めて眼帯少女を凝視する。
すると彼女は不意に立ち上がってこちらに歩み寄ってきた。
なんだなんだ、俺の視線が気に障ったか!?
眼帯少女は無言で俺の前に立ちはだかる。
さっきまで各々談笑していたクラスメイトまで静まり返った。
教室内の空気がピンと張り詰める。
「いやぁ、悪い悪い。すごい格好してるもんだからついまじまじ見ちゃって……」
愛想笑いを浮かべながらそんな言葉を口にする。
「それは仕方のないことだわ」
「え?あ、そう?」
まともな反応が返ってきたきたことに一安心。
「貴方は絶望の片翼。女神が背負う希望の羽と対を成す存在である貴方が私に惹かれるのは当然よ。星が眠りにつくほどの時を越えて相見えた二つの運命だもの」
全然まともじゃなかった。
「巡り廻り再び一つとなった希望と絶望の象徴に穢れなき神の祝福があらんことを」
開いた口が塞がらない俺の前で眼帯少女は十字を切る。
「アーメン」
「……ああ、キリスト教徒だったのか」
「キリスト教徒が聞いたら暴動起こしちゃいそうなセリフだね?」
敬虔な教徒相手なら大丈夫だろ、たぶん。
こちらの困惑なんぞお構いなしに言いたいことを言い終えたらしい眼帯クリスチャンは自分の席へ帰っていった。
「いきなり全開だなー森嶋さん」
「電波が?」
「それはどっちかというと受信してる方かも?」
「梓ちゃんも言うねぇ」
否定をする気は微塵も起きないけど。
「あはは。とにかく良くも悪くもこのクラスは森嶋さんに慣れちゃってるから冗談でも疑わない人が多いんだよ。転校してきたばかりで赤城くんの人柄が分からないうちは特に」
「なるほど」
不用意な発言は控えた方が身のためらしい。
とりあえず森嶋に関わるのはやめようと心に固く誓った。
そんな感じで強烈な先制パンチをくらったわけだけど、それは猛烈なラッシュの一発目にすぎなかった。
正直この一発目でKO寸前だったけどな。
まったく、オーバーキルもいいところだ。