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かけがえない物  作者: ひだまり
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死刑

日本には死刑制度がある、罪の償い方は人それぞれ、考え方は違う



「あれほど残虐な事をしでかしたのだから、死刑にすべき、日本の法律は甘い」という声もあれば、「現実であれ仮定であれ、自分の家族や親しい人が被害にあった場合、すぐに死刑にしてラクにさせたくない、一生を懸けて罪を償わせたい」という考え方だってある



容易く死を選ぶ事は、命をかけて償った事だとしても、安易な道なのだろうか



一生を罪悪感を背負って生きる、法律で許されている自分の罪を罰せられる者はいない、強いて言えば、術中術後の痛み程度だろう、もしくはその手術に於いて、二度と妊娠が望めなくなっただとかであればまた話も違う、だけど自分は、そうにもならなかった



どこかで罪を償う生活をするでもなく、一生償うなんて事はどう生きれば成り立つのか



人は弱い、辛ければ辛い程、優しさや居心地の良さに流される、現に自分は今、優しい恋人に毎晩包まれて眠り、共に暮らす事で常に安心感を得ながら過ごしている



窓を開けて外を眺める、気持ちのいい暖かい夜風が顔に触れる、恋人と過ごしてきた街並みはどこを見ても思い出しても、幸せな気持ちしか残っていない



まだ電車が走っている時間で、線路を電車が横切る、タタンタタンと走る電車を見送る、自分達が出掛ける時、いつも乗っている路線



電車は一瞬で通りすぎる、今日までの自分を振り返ってみても、ここに来るまで本当にあっという間だった



悲しい事ももちろん、楽しい事もたくさんあった、ここで今の恋人と暮らしてからは、幸せしか感じていなかった、あの子の事を除いては



ラクには死なない、ガンの苦しみは相当な物だと、中絶で泣き叫んだ痛みとはまた、心の痛みを除けば比べ物にならないだろう



それを治療は受けず病院の助けを受けず死を迎える、痛みもそのままに



つまりは病気に手を借りた自殺だ、あの子が受けた死の痛み、自分も抵抗する事なく受け入れよう、その数倍の月日にかけての痛みを



恋人と離れる事を考える、あの優しい恋人が傷付かない様に、また幸せに向けて歩ける様な別れ方は何だろう



嫌われるのがいいのかも知れない、嫌われる様な行動を取るという事は、すなわち傷付ける事かも知れないが



また悲しくなったが恋人の事では泣かない、これは罰だ、自分の幸せを惜しんで泣くなど、許されない








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