愛されながら
ガンの宣告を受けて一週間、自分は病院へ行くのをやめてしまった、病院へは次の来院予定だった日に、体調が思わしくなく熱が下がれば来院すると連絡を入れた
どうしても生きる為の治療など、受けたくなかった、我が子を殺したおかげで発覚した病気、それをいいことに生きようとあがく事が見苦しく感じた
恋人との初めての、過ごした夜を思い出す
恋人はキスが大好きだ、恋人は自分の体中、もうどこにも知らない所なんてないくらいにキスをして、また唇に戻ってくる
自分はその心地良さにどんどん引き込まれて、すっかりほぐされきった体を任せる
自分の名前を呼びながら、指を絡めて手を繋ぎ、ゆっくり自分の中を動く恋人の顔を見つめる、きれいな顔立ちに見とれていたらまたキスされて、殆ど夢見心地になる、恋人のぬくもりも、そろそろ終わりを告げる声も、もう全てが欲しくなって愛しくて、抱きしめる
「子供ができたらどうするの?」
と聞いた事もある、恋人は迷う事もなく、「育てるよ」と答えた、何も迷わず
自分を抱きしめて動かなくなった恋人、恋人も動かないから自分も動かない、そのまま体中繋がりあったまま、また自分達はキスしたり髪を撫でたり、しばらく戯れる
恋人は何も変わらない、あの頃から今日まで、一貫して何をしている時も自分に優しい、あの子はそうやって、恋人に愛されながら出来た子供だった、「愛の結晶」とは、まさしくあの子の事だ
また涙がとまらない、自分は本当に、何ていう事をしでかしたのだろう、どうして産まなかったのだろう、後悔だけが胸を占め、あの子と恋人への罪悪感で狂いそうになる
恋人はまだ、自分の病気の事は知らない




