表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かけがえない物  作者: ひだまり
2/21

診断されて

「20番の方、中でお待ち下さい」



待合室でアナウンスが流れる、個人情報を配慮してなのか、病院まで番号で呼ばれる時代となっている



中で待っていると、今度は名前で呼ばれる、入ってみると、先日自分に手術を施した先生が座っていた



今日は手術後の経過診療だ、前回までの来院には手術当日はもちろん、初診の日も恋人が付き添ってくれたが今日は一人だ



診察を終えて経過は順調、入浴も可と告げた後、先生が一息置く



帰っていいのかと思ったが、「先日のポリープですが」と続いた



「悪性でした、子宮ガンです、まだ治療すれば充分に間に合い、今後も妊娠は望めます 」



目の前が暗くなるとはこういう事だろうか、実際には暗くはないが、目に写っている物の情報が、一切遮断されて判断ができない感覚だった



その後、治療方針や方法の説明を受けて病室を出る、だが内容については一切思い出せない



お金を払って病院を出る、病院を出てすぐ、ここでしばらく立ち止まる



手術の日、恋人は最後まで産んでくれと言った、この場所で



自分が頑張るからと、必ず何とかなるからと



自分は受け入れなかった、勿論産みたかった、愛する大切な恋人との間に授かった子供、妊娠がわかった時は戸惑いはあったものの心から嬉しかったし、二人で名前も決めていた



だがどうしようもない事情もあった、本当に自分ではどうしようもなかった、そして今日までの恋人を見てきて、頼りなく感じた一面を拭い切る事ができず、自分もまた、自分一人ででも産み育てるという強い気持ちが、持てなかった



あの子を殺したのは自分だと、再確認する



恋人は産んでくれと言った、自分が受け入れなかったのだ、最後まで



家路までをぼんやりと考える、自分は子供を殺した、何の罪もない、無抵抗な我が子を



そんな自分が、自分は生きる為に治療を?

誰の為に?何の為に?

そもそも生きる資格があるのか?



恋人は結果を聞いてくるだろう、自分はどう答えよう



春めいた花屋さんが彩る道を、自分はそれらを漠然と眺め、自転車を押しながら、歩いて帰った







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ