診断されて
「20番の方、中でお待ち下さい」
待合室でアナウンスが流れる、個人情報を配慮してなのか、病院まで番号で呼ばれる時代となっている
中で待っていると、今度は名前で呼ばれる、入ってみると、先日自分に手術を施した先生が座っていた
今日は手術後の経過診療だ、前回までの来院には手術当日はもちろん、初診の日も恋人が付き添ってくれたが今日は一人だ
診察を終えて経過は順調、入浴も可と告げた後、先生が一息置く
帰っていいのかと思ったが、「先日のポリープですが」と続いた
「悪性でした、子宮ガンです、まだ治療すれば充分に間に合い、今後も妊娠は望めます 」
目の前が暗くなるとはこういう事だろうか、実際には暗くはないが、目に写っている物の情報が、一切遮断されて判断ができない感覚だった
その後、治療方針や方法の説明を受けて病室を出る、だが内容については一切思い出せない
お金を払って病院を出る、病院を出てすぐ、ここでしばらく立ち止まる
手術の日、恋人は最後まで産んでくれと言った、この場所で
自分が頑張るからと、必ず何とかなるからと
自分は受け入れなかった、勿論産みたかった、愛する大切な恋人との間に授かった子供、妊娠がわかった時は戸惑いはあったものの心から嬉しかったし、二人で名前も決めていた
だがどうしようもない事情もあった、本当に自分ではどうしようもなかった、そして今日までの恋人を見てきて、頼りなく感じた一面を拭い切る事ができず、自分もまた、自分一人ででも産み育てるという強い気持ちが、持てなかった
あの子を殺したのは自分だと、再確認する
恋人は産んでくれと言った、自分が受け入れなかったのだ、最後まで
家路までをぼんやりと考える、自分は子供を殺した、何の罪もない、無抵抗な我が子を
そんな自分が、自分は生きる為に治療を?
誰の為に?何の為に?
そもそも生きる資格があるのか?
恋人は結果を聞いてくるだろう、自分はどう答えよう
春めいた花屋さんが彩る道を、自分はそれらを漠然と眺め、自転車を押しながら、歩いて帰った




