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かけがえない物  作者: ひだまり
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懺悔の日

「昨夜から今日にかけて、何も食べていませんね?コーヒー、紅茶、水なども飲んでいませんね?では下着も全部脱いで、こちらに着替えてお待ち下さい、何か聞きたい事は?」



足早に説明を受け、それがあまりにも冷たく感じて聞きたい事なら山程あるが聞けず、「ありません」とだけ力なく答える



冷たくされても仕方ない、自分は今から、我が子を殺すのだ、殺して下さいと、お金を払ってまで病院にお願いしたのだから



恐怖に震えながら言われた通りに着替えて待つ



昨夜は眠れず、中絶手術とはどんな物なのかネットで調べた



想像以上の残酷さに目を背けてしまう様な事柄も書かれており、自分の身勝手さを身に沁みさせた



自分の痛みなどどうでもいい、お腹にいる我が子は、無抵抗にも残酷に愚かな母親のせいで殺されてしまうのだ、自分の体の心配をするなど、おこがましいにも程がある



程なくして施術室に連れて行かれる、子宮を開く処置をされるのだが両足を診察椅子に縛り付けられ、恐怖が襲う



人によっては酷く痛み、そうでもない人もいると昨夜のネットには書かれてあった、ともすると、痛む人によっては足をくくりつけなければならない程の激痛という事か



こちらの恐怖など顧みられる事はない、施術は否応なしに進められ、痛みと恐怖で泣き叫ぶ



看護士さんに手を握られ励まされ、何か声をかけてくれる、その中で先生の声が聞こえる



「ポリープ」



「ポリープ!!」



誰も返事をしなかったからだろう、大きな声でもう一度、それに反応した看護士の声の後、さらに激痛が走る



「痛い!!!」



更に叫ぶ私に、先生が告げる



「ポリープがあったからね、切ったよ、ガンだったら困るから、検査に回すよ」



程なくして切られた事以外の痛みはなくなり、施術台から降ろされて、元の病室へ帰る



それからは手術までの時間を罪悪感と恐怖、何度もお腹の子供に謝りながら過ごして麻酔をかけられ、お腹の激痛で気付けばまた病室のベッドだった



自分が何なのかわからない、どこなのかもわからない、お腹だけが痛烈に痛く、うなされながら少しずつ、現実を思い出す



「私の子供は死んでしまった」



痛むお腹に泣きながら、ごめんねごめんねと叫ぶ、大きな声だったのだろう、看護士さんが様子を見に来る



「麻酔からさめましたね、子宮を小さくするためにお薬を使いましたので後もう少し痛みますが、そろそろ落ち着きますので我慢して下さいね」



確かそんな事を言われたのだと思う、麻酔がまだ体に残っていて正常な状態ではいられなかったが、わかりましたと返事をした



しばらく泣き続け、まだ麻酔でフラフラするが帰りたくなって準備をする、産まれてきて入院中の赤ん坊の泣き声が聞こえてくるのだ、それが自分には、自分の子供が痛くて泣いている様にしか聞こえない



薬を貰ってお金を払い、併設されたカフェで迎えを待つ



体は辛いが2階席にして良かった、人は誰もおらず、自分は四人掛けテーブルに陣取りアイスコーヒーが届くと横になって泣いた



自分はこの日の事を生涯かけて、償う



そう心に誓った








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