目覚め
ヴァリアブルシップ内 メインルーム
ヴァリアブルシップの内部は、生産・浄化設備などの生命維持に必要なスペースを除くと、三角の先端部分に10メートル四方ほどのメインルームとその周囲に居住区画があるだけのシンプルな構造だった。
メインルームの半分ほどのスペースには壁の大型モニターに向かって上面全体がパネル端末となったモニター付きのデスクが3つ置かれ、そのやや後方の大きめのデスクは隊長席となっていた。
残り半分のスペースには、カプセル形の4機のC・コクピット(Conscious cockpit)が横に並んでいた。
その右端のコクピット内で、アイナ・ウメハラは時間の流れを突然感じた。
意識が戻ってくる。
ゆっくりと目蓋を開くと、そこは時間が途切れた場所と同じだった。
あれからどれだけ経ったのだろう。
シート横のタイムカウンターに目をやる。
カウンターの数字は10を少し越したところだった。
『ほんの10分なのか・・・』
ゆっくりとシートバックを起こし、体を動かす。
麻酔の影響で頭痛が残るのではないかと心配したが、麻酔阻害剤の吸引によって体は全く麻酔の痕跡を消していた。
コクピットのハッチを開ける。
そこから見える光景も、時間が途切れる前と全く変わりはなかった。
コクピットから外に出る。
軽い機械音がし、残りのC・コクピットもハッチが開いた。
「無事に着いたのでしょうか?」
2番目のコクピットから姿を現したアス・ミナセが、筋肉のついた肩を回しながら聞いてきた。
「思っていたよりも何もなかったって感じですが、失敗じゃないですよね」
3番目のコクピットからはシロウ・タヌマが出てきた。
そして最後に出てきたのはオペレーターのユーリ・オオクボだった。何が起こったのかわからない様子でキョトンとしている。
「皆、体は問題ないか?」
「問題ありません」
「自分も問題ありません」
「あ、はい。大丈夫です」
皆がいることにユーリも安心した様子だった。
「まず、状況の確認から始めよう」
アイナは首が窮屈に感じるパイロットスーツのファスナーを胸まで開けると、肩の下まで伸びた髪を後ろで束ねた。そして、大型モニター前の隊長席に座った。それに続き、アスとシロウがその前の左右の席に、最後に中央のオペレーター席にユーリが着いた。
西暦2727年5月15日 地球環境管理機構モニタールーム
地球各地の汚染状況を観測しているモニタールームには、少し前からいくつものアラームが鳴り響いていた。
「大気中の炭酸ガス及びメタンガスの吸収率98%まで低下」
「海洋水アルカリ化能力、95%まで低下。全体的に処理能力が落ちています」
「農業プラント、電力55%低下」
「シヴァル計画でのT-デバイス作動による電力不足の影響です。生活システムからの電力を回しますか?」
「いや、その必要はない。農業プラントだけを優先させろ。他の処理能力は落ちてもいい」
浄化管理部部長ジョン・フォスターは、アラームの表示されているモニターを一瞥しただけで軽く答えた。そして、小さく呟いた。
『数時間処理能力が落ちたところで、今更何か変わるものでもない・・・』




