シヴァル計画
西暦2726年5月 地球統合本部中央研究所 メインコントロールルーム
壁に大小いくつものモニターが備え付けられているコントロールルームでは、10名ほどのスタッフがそれぞれテーブルの上のパネル端末に手を置きモニターを見つめていた。手を置いているパネルはモザイク状に激しく色を変え、それに伴ってモニター上の表示が更新されてゆく。かつて端末を指で操作していた入力作業は、パネルに置いた手を介しての神経接続に変わっていた。
その後方の、スタッフ及びモニターを全て把握できる1段高くなった所長席で、ノーリス・ノジマはコウゾウ・オオカワからの通信を受けていた。
「・・・了解しました。直ちに発動します」
ノジマはオオカワの映っていたモニターを消すと立ち上がり、スタッフの注意を向けた。
「たった今、オオカワ本部長より人類投票で計画発動が決まったとの報告を受けた」
ノジマの言葉に、スタッフ全員に緊張が走った。
「タイムウェーブの状態は?」
「カーム。最も良い状態です」
ノジマは壁のモニターの上の時計を見ると、大きく息を吸い力を入れた。そして、長くこの時を待っていたかのように思いを込めて言葉を放った。
「11:10。シヴァル計画発動!」
「シヴァル開始します。パンドラ開封」
スタッフの中央に座るカオリ・マシス主任研究員が言うと、次々と周囲のスタッフが反応し出した。
「パンドラ開封します」
「信号射出」
「・・・開きました」
すると、正面の大型モニターにいくつもの横のラインが表示された。
「ウェッジ、起動」
「チャージ開始」
「臨界点まで、10」
モニターのラインが徐々に歪み始める。
「・・・5、4、3、2、1。射出」
「射出信号確認。ウェッジ射出されました。5本です」
少ししてモニターのライン上に5つのマーカーが表示されると、先ほどまでの歪みが元に戻った。
「ウェッジ刺さりました」
「位置の確認を」
「座標。1914、1939、1999、2082、及び2654」
「2654は近すぎる。強制終了」
「2654強制終了」
オペレーターが手を置くパネルが反応し、モニターの1本の線上にあった2654を示すマーカーが消えた。
「1939、1999、2082、エンブリヨプログラム起動確認」
「1914、プログラム起動しません」
「起動信号再送信」
「だめです。起動しません」
「強制終了して」
「1914、強制終了」
1914のマーカーもモニターから消えた。
しばらくして残りのマーカーがゆっくりと点滅を始めた。
「3カ所ともLUCA確認。始まりました」
ノーリス・ノジマはスタッフのやりとりを聞きながら、モニターで点滅する光を祈るようにじっと見つめていた。
これが、絶望した人類の希望を取り戻すための全ての始まりだった。




