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黄昏に落ちた魔法使い  作者: 花藤かえ


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第十三話 礼拝堂1

 レリアが目を覚ますと、見覚えのある白い天井があった。そしてまた、見覚えのあるクイン・ハロドリーの灰緑色の瞳が見下ろしていた。彼女は何かを諦めたような表情でため息をついた。

 レリアがゆっくりと体を起こすと、クインは無言で薬草水を差し出した。レリアが躊躇していると、


「これは前のものとは違って甘いですよ」


 と言った。半信半疑で口を付けると、たしかに甘い。しかし、舌が痺れそうな甘さだ。それは、脳天まで届き、ぶるりと頭をふると、記憶がはっきりとした。

 レリアは思い出したようにあたりを見回した。


「もう、大丈夫です」


 クインが優しい声で言った。


「私は……リリは……」

「彼女ならレンクス様が保養地へ連れて行ったそうです。外傷はないもののかなり衰弱していると聞きました」

「そうですか」


 レリアは自分の体を見た。


「あなたはひどい火傷をおっていました。ここに運びこまれてから三日間眠り続けていたのです」


 火傷のあとはもうなくなっていたが、あの激しい炎の熱を思いだし、レリアはコップを落としそうになった。


「誰が助けてくれたのですか? 亡霊はどうしたのですか?」


 クインは振り向いた。背後のカーテンごしに視線をやりながら、


「あなたとリリアーナ・ジュレを連れて王宮へ知らせを持ってきたのは、マリン・スロムとリゼル・メミニーだと聞いています。そして、リロウ・クラリウスが最後まで亡霊と戦い、彼もまた重傷を負いました。リロウはまだ目覚めていません」

 レリアは驚いてカーテンの向こうを見つめた。

「大丈夫なのですか?」


 震える声で聞くと、


「肺と、心臓にも少し火傷を負ったようです。しかし、アクアマリンを使ったようで、致命傷にならずにはすみました。目覚めるころには回復しているでしょう」


 とクインは冷静に言った。その言葉を聞き、レリアはほっと胸をなで下ろした。

 そのとき、肩に上ってきたのは、シーだった。ぱたぱたとしっぽを振り、お菓子をねだるように、レリアの頬に体をすりよせた。


「その妖精はリロウ・クラリウスと共にいたそうですが、無償のようです。ずっとあなたのそばで心配そうにしていましたが、食欲は旺盛でした」


 まだリロウには懐いていなかったのに、とレリアは驚いた。

 シーはあいかわらず澄んだ青い瞳でむじゃきにしっぽをふっている。


「レリア・クラリウス」


 クイン・ハロドリーが呼んだ。

 顔をあげると、彼女は不安げに顔を曇らせていた。


「その妖精のことでヴァリム様が話があるとのことです。あなたが目を覚ましたら呼ぶようにと言われています」


 クインの表情は曇っていた。

 レリアも何か不安なものを感じた。カーテンごしにリロウを見たが、寝息すら聞こえず静かだった。


「とにかく、あなたが無事で何よりです」


 それは、自分が偉大なる魔法使いの孫だからだろうか? と思ったけれど、もちろん尋ねることはなかった。

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