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黄昏に落ちた魔法使い  作者: 花藤かえ


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第十一話 亡霊との戦い3

 部屋が燃えているのを見て、リロウは水の魔法を放った。


「まさか、こんなところにまで?」


 その中から一陣の風のように何かが飛び出してきた。

 それは、レリアとリリだった。

 リリは意識を失っており、白い肌は魔力を吸い取られたように青黒くなっていた。

 レリアも似たようなものだった。リロウの顔を認めると、一瞬、緊張がやわらいだように見えたがそのまま意識を失ってしまった。そのレリアの血の気のない頬にシーがよりそっていた。


 リロウは二人の周囲に水の防壁をつくり、さらに頑丈な牢のように氷の柵をめぐらした。そして、青い氷で剣と盾をつくると、門番のように亡霊の前に立ちはだかった。


 炎の亡霊たちは黒い煙のように揺らめいていた。

 リロウを新たな標的と定めると、一つにまとまるように収縮し、巨大なへびのように天井をはって襲いかかってきた。

 リロウは素早く剣で切り裂いた。

 すると、ぱっと散るように広がったが、すぐに霧のように周囲を取り囲む。

 煙の中にいるように息苦しくなり、リロウは風を起こした。

 しかし、それは罠だった。いつの間にか広がっていた炎が激しく燃え上がり、肌を焼くように熱がまとわりついてきた。


 剣と盾の氷が溶けだした。その水で渦を作って身を守ろうとしたが、それは煮え立つ熱湯に変わっており、リロウはうめき声をあげた。

 あえぐように息を吸うと、煙が肺に忍びよってきた。内蔵を焼き尽くそうとしたので、とっさに身体の中に洪水をつくる。

 ところが、炎の亡霊はまるでマグマのように襲いかかってきて、心の中にある水までをも沸騰させたので、リロウは悲鳴をあげてうずくまった。


 ――やはり、シーがいないと容赦ないな。


 体の外も内もヒリヒリと痛い。冷たい水をイメージすることも困難なほどだった。流れ出る汗も熱湯のようだ。


 ――僕は青の魔法使いだぞ。しっかりしろ、リロウ。


 リロウは気持ちを奮い起こしてやっとの思いで立ち上がった。

 汗をぬぐい、それを使って盾と槍を作りなおしたが、襲いかかってくる亡霊をひと払いしようとすると蒸発して消えていった。

 リロウはがくりと膝をつく。

 背後を振り返ると、レリアたちを閉じこめた氷の檻がまだ無事なのを確認し、これ以上心を乱さないように目を閉じた。


 瞼の裏の闇が揺れ、亡霊の影がこちらをすごんでいることに気がつくと、手足の震えを感じた。イメージが乱される。


「お前たちはどこから来たんだ?」


 リロウは尋ねた。

 炎の亡霊は低い声をだした。しかし、こちらの質問に答えているようではなかった。


「……返せ」


 と聞こえた気がした。


「返せ? ドラゴンの子供のことか?」


 目を開けると、炎の亡霊は満面の笑みを見せるように燃え上がった。


「なぜだ? ドラゴンの子供を返したらどうするつもりだ?」


 亡霊はふっとゆらぎを止めた。まるで細目でリロウを見つめているようだ。鋭い静寂が訪れた。


「お前を殺す。……王の息子」


 地底にまで響くような恐ろしい声で言った。

 リロウは動けなくなった。

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