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黄昏に落ちた魔法使い  作者: 花藤かえ


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第十一話 亡霊との戦い2

 一章が終わり、二章にはいった。

 はじめはお互いの暮らしぶりが簡単に書かれているが、魔法使いたちの暮らしはきわめて原始的で、太陽人の生活のほうが今の自分たちの暮らしに近かった。


 太陽人は魔法使いにも共に暮らそうと言った。

 ところが、二つの人々は相手の法に従うのを嫌がった。そのためにいさかいが起こり、戦争となったという。

 太陽人は鉄で武器をつくり、魔法使いは精霊と共に火山からドラゴンを生み出した。

 リロウは視線を止めた。


 ――魔法使いは精霊と共にドラゴンを生み出した、だって?


 リロウは疑う気持ちで何度も文を読み返してみたが、やはり、間違ってはいないようだ。

 心臓の脈が高鳴るのを感じながら、続きを読もうとしたが、逸る気持ちで集中できない。


 そのあとは、太陽人と魔法使いたちとの戦争の様子が生々しく描かれているようだったが、焦りが手伝い素早く飛ばしながら頁をめくっていった。

 ドラゴンが太陽人の町をすべて焼き払ってしまうと、太陽神が怒り、魔法使いと精霊たちを樹海の中に閉じこめた。

 ところが、精霊のいなくなった土地では花が咲かなくなってしまったために、精霊だけが許されることとなった。


 しかし、魔法使いたちはそれに反感を覚え、精霊たちに嫌がらせをするようになった。また、町を焼き尽くされた太陽人も精霊たちに冷たく、彼らはどんどん森を伐採し、精霊の居場所をなくしていった。


 ついに我慢のできなくなった精霊たちは精霊の国をつくって引きこもるようになった。

 そのため、樹海の中にはドラゴンの都だけが残った。


 突然あらわれた「ドラゴンの都」の文字に、リロウは心臓が飛び出さんばかりに驚いた。

 震える指で頁を戻って視線を泳がせたが、ドラゴンの都の文字を読み飛ばしたわけではなさそうだ。

 ドラゴンの都がいつ、どこにできたのか。


「なぜ肝心なことをちゃんと書いてくれないんだ!」


 リロウは思わず声を上げた。

 その声がかすれていたために、のどがからからになっていることにはじめて気がついた。

 リロウは息を吐き、椅子にもたれた。呼吸を繰り返しながら、心臓を落ち着かせ、天井を仰いだ。


 ――何が本当だ?


 大昔、精霊たちと交流があったことは知っている。しかし、この本に書かれているような密接な関係だったとは誰にも教えられていない。まして、共に、ドラゴンを生み、太陽人と戦い、さらに、その後の仲違いにより、精霊の国がつくられたなどと。


 ――しかし、筋は通っている。


 リロウは、ぞくぞくするような興奮を覚えていた。

 ミレスアロナで教わったどんな神話よりも、つじつまが合うではないか、と思った。

 今まで教えられた神話は、断片的なものばかりで、繋ぎ合わせようとしてもつじつまの合わないものばかりだった。

 しかし、これは、きちんとつながっている。納得もできる。自分たちが樹海の中に閉じこめられている理由でさえも、歴史書には一言もなかったというのに。


 ――いや、だからこそ、おとぎ話の可能性が高いんじゃないか。


 リロウは気を落ち着かせるために、自分で自分の心に反論した。しかし、わき上がる興味は理性までも飲みこんでしまいそうだった。


 ――自分たちで生み出したドラゴンを守護者として、都を築いていたのか。それなら、精霊だけではなく、魔法使いも共に暮らしていた可能性もある……。


「だから、精霊の都ではなく、ドラゴンの都なのか」


 リロウは声に出して言った。

 ずっと不思議に思っていたことだった。ドラゴンも精霊の国の生き物ならば、精霊の都と呼んでもいいはずだ。そうではなく、ドラゴンの都と呼ばれるのは、ドラゴンが都をつくったためなのかと思っていた。そして、なぜ、精霊の国ではなく、こちらの世界に都をつくったのかということも腑に落ちなかったが、この本の通りならば納得がいく。


 ――そして、それがなぜ滅びたのか?


 本に視線を戻そうかと思ったとき、リロウの目に何かが入り、驚いて目をしばたいた。

 目に痛みを感じながら、確認するように天井を見上げると、石でできた天井から、ぱらぱらと砂塵が落ちていた。


 ――揺れている?


 リロウは息を止めて神経をとがらせた。

 テーブルに置いたランプの炎は静かに点っている。すでに揺れは感じていなかったが、リロウはまた急激にのどの渇きを覚えて立ち上がった。

 そして、何か嫌な予感を覚えて、地下室から飛び出した。

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