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第九話 亡霊、再び1

 話を聞き終えると、マリンは大きな瞳を空になったカップの中にじっとむけていた。ミオンは珍しく不安げな様子で姉の顔を見つめ、リリは顔をふせ、長いまつげで影をつくっていた。

 通り雨はいつの間にか止んでおり、青空がまたのぞきはじめていた。雲間から差しこむ光が、草露を水晶の粒のようにきらめかせていた。


「ちょっと、整理するわ」


 とマリンは顔を上げた。


「まず、おじい様がなくなり、レリアが卵の妖精を相続した」


 マリンはビスケットが入っていたかごの中で寝ているシーに視線を向けた。


「この、レリアがシーと名づけた妖精は、正体が分からない」


 シーは全員に見つめられているとも知らずにすやすやと寝ている。その様子は白い綿毛のようだ。


「で、リロウは古魔法で精霊を呼び出そうとして失敗し、炎に襲われた。それで、罰を受けて最下層の書庫に閉じこめられた。それが三ヶ月ほど前のことね?」


 リロウはだまってうなずいた。


「二ヶ月前の金の黄昏日にレリアが襲われて、リロウのいた書庫に転がりこんだ。古魔法で脱出しようとして、どこかの遺跡へ迷いこみ、また亡霊に襲われた。それで停学処分になって、ここにやってきたわけね」


 マリンは一息に言うと、リロウとレリアの顔を交互に見た。


「そして、先月ごろから王都では小火騒ぎが起こっていて、その亡霊はあんたたちを襲った炎の亡霊と同じものらしいということ。それを、ヴァリム伯父様はリロウが古魔法で黄昏の狭間から呼び寄せたものだと推測しているのね。でも、あんたたちは、その亡霊はドラゴンの遺跡から呼び寄せたものだと思っている。シーがドラゴンの遺跡で拾われたドラゴンの子供で、それを狙って亡霊がレリアを襲っていると思っているのね」


 レリアとリロウは同時にうなずいた。


「で、その亡霊はいったい何なの? 何が目的なの?」

「それはまだ分からない。捕まえて話を聞くわけにもいかなそうだしね」

「でも、リロウはそれを自分で呼び寄せたと思っているんでしょ? それなら、リロウの古魔法でドラゴンの遺跡のある場所とつながったってことになるわよね?」


 マリンがそう言うと、リロウはうなずいた。


「あんたの推測によれば、レリアとドラゴンの遺跡に迷いこんだのは、ドラゴンの子供であるシーを使ったからってことよね? それなら、三ヶ月前のリロウの古魔法がなんでドラゴンの遺跡とつながったのかしら? だいたい、ドラゴンの遺跡が本当に精霊の国のどこかにあるのかも分からないでしょ?」

「それはそうだけど、精霊の国じゃなければどこにあるのかって話になるだろう? おそらく、ドラゴンの都が滅びたあと、精霊たちが自分たちの国に隠したんだよ」

「それは、なぜなの?」


 リロウは一瞬間をあけたあと、


「ドラゴンは精霊たちの王だからだよ。ドラゴンの遺跡は、ドラゴンの王の墓なんだ、きっと」


 と自分の話に興奮するように言った。

 マリンは大きなため息をついた。


「物語としては筋が通るけど……結局、確かなことは何も分からないってことね」

「とにかく、僕の古魔法は偶然、ドラゴンの遺跡とつながってしまったんだ。もしも、ドラゴンの子供がいなければ行くことができないとしたら、おじい様はどうやってドラゴンの遺跡に行き、卵を持ち帰ってきたのか分からなくなる。だから、ドラゴンの遺跡に行くには、必ずしもドラゴンの子供がいなければいけないというわけではないんだと思う」

「精霊の国は、どこにあるの?」


 ぼんやりやりとりをながめていたミオンが口をはさんだ。

 マリンとリロウは言葉を失ってミオンを見た。


「それは、よく分からない」


 リロウはうなだれるように言った。

 マリンはふうっと肩の力を抜くように息を吐いて、首をまわした。三重のネックレスがきらびやかな音を立てる。


「そもそも、ドラゴンの都があったかどうかも分かっていないのに、話が飛躍しすぎだわ」

「僕が今解読している本にも、場所らしき記述は見あたらないんだ。でも、たしかにあったことは間違いないと思う。その書を記したアルミニス家は、どうやらドラゴンと交流を持っていたことがうかがえるんだ。アルミニス家の生き残りでもいれば詳しいことが分かるんだけどな」

「でも、リロウ、アルミニス家は貴重は資料をたくさん残している一方で、おとぎ話もたくさん書いていることを忘れないでよ。それが真実だとは限らないでしょ」

「それはそうだけど、アルミニス家のおとぎ話には、完全な嘘の物語はないと言われているんだ。必ず事実にそった部分があるんだよ」

「だからこそ、それを判断するのが難しいのよ」


 マリンはあきれたように言った。リロウは図星をつかれてうなだれた。


「でも、僕はあの本は事実だと思う」


 とリロウは言った。


「根拠はないけど、そんな気がする」


 とつぶやくようにつけ加えた。

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